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ガスブロの作動のメカニズム

ガスブローバック式エアソフトガンの作動の仕組み スライド、ボルト編

今回のカスタム考察紹介は思い切ってガスブローバック式のエアソフトの作動原理を紹介したいと思います。

ちなみにガスブローバック方式なら外部タンク、CO2などのなんらかのガスを使うのはほぼ全部同じです(固定ガスは別)。

執筆時点ではこれからガスブロの夏本番前に皆さんのガスブロの購入、メンテナンス、カスタムの参考になればと思い紹介することにしました。

また、たまたま作動原理が説明しやすくて分解しやすいガスブロハンドガンが手に入ったのも紹介しようと思ったきっかけです。

まずは、ガスブロのスライド側の作動メカニズムから紹介していきます。

ちなみに長モノのガスブロでも作動原理はほぼ同じでハンドガンのスライド部分の役割がボルトになっているだけです。

ガスブロの基本動作

まずは、皆さんがよく知っているガスブロの動きを細かく見ていきましょう。

その前にガスブロのスライドの各部品の名称を紹介しておきます。

簡略図で下手くそですがイメージだけで結構ですので見ておいてください(作動に関係のない部品は省略しています)。

これを踏まえて動作を見ていきます。

step
1
発射準備完了状態

廃莢ポートを見たいので上の図と向きが逆ですが同じ状態です。

step
2
ブローバック初期、弾の発射状態

トリガーを引くと弾が発射されブローバックが開始されます。

ここでのポイントは、まだブローバックの後退量が少なくノズルがチャンバーに残った状態になります。

step
3
ブローバック後退完了状態

次にブローバックが最後まで後退した状態になります。

ここでのポイントは、ステップ2で残っていたノズルも後退していることです。

step
4
スライドがリコイルスプリングで前進する途中

ここでのポイントはスライドと共に前進するノズルの下に付いている棒の部分がマガジンの弾を押してチャンバーに弾を装填します。

図のような感じで弾はノズルの一部に押されチャンバーのスロープを登っていきホップパッキンに抑えられます。

 

step
5
発射準備完了状態

この一連の動きでステップ1と同じ状態に戻ります。

これがガスブロの基本的な一連の動作(発射ーブローバック後退ーブローバック前進ー給弾ーブローバック前進完了)になります。

次にガスの流れ動きに注目して動作を見ていきましょう。

ガスの流れと動作

まず発射準備完了状態でトリガーを引くとハンマーが起きてバルブノッカーがマガジンのバルブを押します(このメカニズムは次回で紹介)。

マガジンのバルブが押されマガジンのガスがスライドに入っていきます。

ここから少し詳しく説明します。

紹介するメカは、謂わゆる負圧式と呼ばれているモノで、現在のガスブロのほとんどのものがこの負圧式を採用しています(実際には、負圧というよりも差圧で動いている、某WA社の機械式は少し違う)。

弾が発射される工程

まずスライドに入ったガスは、注入口からノズルを通って次の図の位置にガスが流れます。

ちなみにガスの入り口にある黄色のフローバルブとは次のような形状になっておりガスの流れの向きを変えています。

実際のフローバルブ

実際のエアソフトガンでのガスの流れは次の写真のようになります。

この状態では、弾に掛かるガスの圧力はパスカルの原理(閉じた空間内の圧力は一定になる)によりマガジン内の圧力と同じになり、その圧力がホップに咥えられている弾に掛かります。

バレル内は、基本的に大気圧なのでガス圧>大気圧より弾にガス圧×弾の表面積分だけの力が作用します。

その力によって弾は発射されます。

この時は、まだマガジンからガスが供給されている状態が続くので、弾がバレルから飛び出る前の圧力状態は次のようになります。

ただしこの状態では、まだブローバック動作はしません。

理由は、ノズル内のフローバルブによって弾への流路以外は、全て塞がれていてガスが流れないからです。

この蓋が閉まっている状態が基本的には、弾がバレルから完全に飛び出すとガスブロのキモになるメカニズムが働いてブローバックが始まります

本当は、もっと複雑な圧力分布になっていて弾がバレル内に残っている途中からブローバックが始まります。

発射側からブローバック側へのガスルート切り替え

まず弾がバレルから完全に出た状態の圧力分布を紹介します。

弾は、バレルから完全に出て行ってしまったのでマガジンから供給されるガスを塞ぐ蓋(弾)がなくなったことによって解放されるので圧力が急激に下がります。

当然ながらガス流路より外のが超広いので、外の気圧、つまり大気圧レベルまで下がります。

これが信じられないかもしれませんが、いくらマガジン内の圧力が高くても大気の量と比べると極々少量なのでガスを噴射しても一瞬で圧力は下がります。

ただしマガジンからのガス供給はまだ止まっていないのでガスは出続けます。

この状態での圧力、分布とガスの流れを図にすると次のようになります。

ここで流体の面白い特性が利用されていて、それがベルヌーイの法則によって圧力分布に変化が発生します。

ベルヌーイの定理は、超簡単に言えばある流れにおいて圧力と流速の二乗の半分を足し合わせた値は、常に一定になります。

$ P+\frac{V^2}{2}=一定       (Pは圧力)$

つまりバレル内にガスが流れ続けているとそのガスの流速が大気の空気速度より速いのでガスの流路の圧力が下がります。

そうすると緑色の部品のピストンカップ側の圧力は大気圧とほぼ同じなので低圧になったフローバルブが圧力差によって動き始めます(本当は、ピストンカップにガスが漏れて大気圧より圧力が高い)。

この動き始めのタイミングを決めているのがフローバルブの形状とフローバルブスプリングの役割になります。

ここでもしフローバルブスプリングが強すぎるとフローバルブが動かなくてブローバックしません。

この時の状態を図にすると次の状態になります。

動き始めたフローバルブが最後まで動くと、今まではブローバック側へのガスの蓋の役割をしてたのが解除され逆にバレル側へのガスの流れを止める蓋の役目に変わります。

実際にノズル内に組まれたフローバルブを後ろ側から見てみましょう。フローバルブを棒で押すと動きます。

この時の状態を図にすると次のようになります。

図のようにフローバルブが最後まで動くとブローバルブ、ピストンカップによって閉じた区間ができるのでパスカルの原理が作用し赤色部分は、マガジン内のガスと同じ圧力になります。

今度は、この圧力がピストンカップに掛かり、圧力によって発生した力がピストンカップを始めとしたスライド一式を動かし始めます。

この時にスライドを発生する力は、力=ガス圧P×ピストンカップ面積になりブローバックを強烈にするため各社が鎬を削ってピストンカップの大径化を目指しています。

東京マルイさんの最近のものやKSCさんのシステム7は直径15mmの円形ですが海外製ですと異形ピストンカップなどを使い少しでも面積を増加させる努力が伺えます。

これでわかるようにブローバックを強烈かつ安定化させるには、ガス圧を上げるか、ピストンカップを大きくする以外に今のところ方法は、ありません。

また日本ですと使えるガスがほとんど決まっているので基本的にピストンカップを大きする方向に進化しています(CO2は、ガス圧が上がる)。

実際の海外製のブローバック関連部品

もし皆さんがブローバックが鋭いものがお好みでしたらこのピストンカップが大きいものを選びましょう。

実際には、ほとんどのエアガンがピストンカップ径を記載していませんがスライド後部のカタチを見て大きそうなモノを探してみるのも楽しいかもしれません(一般的にスライドの幅と高さが小さいと不利でCZ75みたいなのが典型的な難しいモノだけどKSCさんは頑張って入れている。)

ブローバックの後退の作動

話を戻してピストンカップに力が作用することによってスライドが次のように動きます。

ここでガス圧によってフローバルブは蓋の役割をしたままピストンカップが圧力によって発生する力によって移動することによりピストンカップに付随するすべての部品、つまりスライド一式が移動します。

この時にノズルはフローバルブが受ける圧力によってピストンカップとは反対方向に力が働くのでノズルは移動しません(ノズルリターンスプリングが伸びる)。

アウターバレルもカム機構によって多少動きます(ショートリコイル)が基本的にシャーシと繋がっているの大きく移動しません。

それに伴ってスライドとアウターバレルの間にあるリコイルスプリングが縮みます。

次が最後の工程になります。

ブローバックの前進の作動

このままピストンカップごとスライドが移動していくとピストンカップの位置がノズルの後端からはみ出ます。

またシャーシ側の機構によりここでマガジンからのガスの供給がストップします(メカニズムは次回に説明します)。

この時の状態を図にしてみます。

ここでスライド内のガス圧は、すべて抜けて大気圧状態になります。

実際のモノだとこの状態です。

よってガス圧によって縮んだり伸びたりしたバネが元に戻ろうとします。

フローバルブは、フローバルブスプリングが伸びて元の位置に戻る。

ノズルは、ノズルリターンスプリングが縮むことによって元の位置に戻る。

スライドは、リコイルスプリングが伸びることによって前進し元の位置に戻る。

これでブローバックが完了して一連の動作が終わり最初の状態になります。

これがガスブロのスライドの動作の仕組みです。長モノも全く同じ原理でスライドではなくてボルトの部分にこの機構が入っていて作動しています。

まとめ

ここまででブロバック式エアソフトガンの作動の基本を説明しました。

メカニズムの作動の順番をまとめると

step
1
ノズル内にマガジンからガスが供給される。

step
2
圧力を持ったガスが弾を押し出す。

step
3
弾がバレルから完全に出ると流路が開放されて発射側の流路の圧力が急減する。

step
4
供給されるガスの流れによって流速が速いので発射側の流路の圧力がさらに下がる。

step
5
発射側の流路の圧力が下がったことによりピストンカップとの圧力差によってフローバルブが動く。

step
6
フローバルブの移動によって発射側の流路が閉じてピストンカップへガスが流れる。

step
7
ピストンカップが受ける圧力によって発生する力でスライドが後退する。

step
8
ピストンカップが最後まで移動するとガスが抜ける、マガジンからのガス供給がストップする。

step
9
縮んだり伸びたりしたバネが元に戻ることによってスライド一式が初期状態に戻る。

になります。

実際には、各ステップが明確に分かれて作動しているのではなくて一部の作動がダブリながら同時に作動しています。

しかも部品同士の隙間から弾が発射中にも関わらずフローバルブからガスが漏れてピストンカップ側に流れていき少し圧力が上がります。

そうすると弾がバレル内を通過中にも関わらず、バレル内の圧力分布によってフローバルブが動き始めてピストンカップと圧力差が発生してバルブが切り替わってブローバックが弾がバレルから出る前に始まってしまうこともあります。

よって弾がバレル内にまだ存在しているのにも関わらずフローバルブが差圧によって動き始めます。

フローバルブが動いて穴がガス注入口を跨ぐとピストンカップへもガスが流れ圧力差がさらに大きくなりフローバルブが一気に動いて切り替わります。

これが弾が発射される前にブローバックが始まるメカニズムになります。

こういう時は、少しフローバルブスプリングを強くすると切り替えタイミングをコントロールして弾がバレルから出るまでガスを発射側に供給し続けると初速が上がります(必ず法律を守こと)。

逆に初速が高くて燃費が悪い場合は、フローバルブスプリングを弱くすると発射側へのガス供給量が減って初速が下がり少しだけ燃費が上がります。

ちなみにフローバルブによって発射側のガスとブローバック側のガスルートがきっちり切り替わるのでフローバルブスプリングの強弱はブローバックに影響を与えません。

変化するのは初速と燃費になります。

またそれぞれ蓋の役割をする部品たちは、スムーズな作動のために敢えてきっちりと気密が取っていないので(可動部品なので隙間が必要)ガスブローバックエンジン内の圧力分布はもっと複雑になります。

この辺の可動部品をきっちりと気密を取ると性能が上がるのですが、あまりにもタイトにすると逆に動きが渋くなることがあるので注意です。

機密の取り方としては、少し大きめのサードパーティのピストンカップを使ってみるとかになります。

あと調整するとしたら各スプリング(フローバルブSPG以外)ですが、基本はそのままで触るとすればリコイルスプリングくらいですが強くすれば抵抗が増えてスライドの後退スピードが遅くなったり燃費が悪くなる代わりにスライドの戻りは速くなります。

逆の場合は、当然逆になりますが作動性重視でリコイルスプリングを弱くしすぎるとスライドの戻りスピードがあまりにも遅くなり、下手したら途中で止まりますのでバランスに注意してください。

こんなところでスライド編を終わりにします。

次回は、フレーム、シャーシ側のメカニズムを紹介します。

ガスブローバック方式エアソフトガンの作動の仕組み マガジン、トリガー、ハンマー編

もし良ければガスブローバック式のエアガンをいくつか紹介しているので覗いてみてください。

原理が理解できてみると少し面白いかもしれません。

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  • この記事を書いた人

kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考察して行きます。

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