前回はKSC Mk23 ソーコムピストル CO2 ABSの初期ロット品の箱出しレビューをしました。
レビューで見た感じメカニズムは懐かしの05HKを搭載されていて現在では珍しい機械式ブローバックユニットを採用しているようです(ほとんどが負圧式で機械式はWAくらい)。
珍しい方式で分解に少し苦戦しましたがスライドの分解が完了したので紹介していきます。分解時の状態は部屋撃ちでおよそ300発ほど撃った状態です。
まずはフィールドストリップから始めていきます。
フィールドストリップ
KSCさんのエアガンはホップ調整でスライドを外す必要がないのであまりフィールドストリップを行う機会は少ないと思いますが簡単なメンテナンスでスライドを外すこともあるかと思うので少し詳しく紹介します。
スライドを少しだけ引いてスライドの溝とスライドストップレバーの位置を合わせます。
この状態でスライドストップレバーを写真の反対側から押して引き抜きます。
この時にスライドストップレバーにクリップが付いているので紛失、破損に注意です。
外れたスライドストップレバーは次のような状態になります。
次にスライドを本体前方に引き抜けばスライドが外れます。
これで完了です。
スライドの裏側
スライドを組む時のポイントはスライドストップレバーのクリップをフレームの十字穴に入れながら装着します。
次にスライドの中の部品を分解していきます。
リコイルスプリング、バレルの分解
まずリコイルスプリングを取り出していきます。
至ってシンプルなリコイルスプリングのようです。
スプリングは先端部のCクリップで組まれています。
スプリングを変更したい方はクリップを外して簡単に交換できそうです。ブローバックスピードアップのためにスプリングの交換がかなり有効だと思いますがスライドの材質がABS樹脂であまり強くないので私はこのままにしておきます。
次にリコイルスプリングの根本部分です。
アウターバレルのショートリコイル用のカムとスライドストップレバーで固定される溝が付いてます。
次にアウターバレルを見ていきます。
アウターバレルはABS樹脂製です。できればメタルにして欲しいところなので今後のカスタムパーツに期待します。
ホップメカ部
ホップダイヤルの溝が樹脂製なのでホップ調整をする時に削らないように注意した方が良いと思います。
アウターバレルを分解していきます。
アウターバレルはイモネジと樹脂のマイナスネジのようなロック機構で固定されています。
まずはイモネジを外します。
このイモネジは日本では珍しくインチ規格でした。
次にマイナスネジが刻まれているロックを解除します。
ロックを解除するとショートリコイル機構の一部分であるプランジャー、スプリングが出てくるので無くさないように注意が必要です。
このパーツから2000年一桁時代の異様に凝ったメカのKSCさんを思い出します。
次にアウターバレルからインナーバレルを取り外します。
インナーバレルとアウターバレルの位置決めをしているクリップを取り外します。
ホップチャンバーの位置決めをしているEクリップを外します。
個人的に握力が弱いのでこのようなクリップ類は苦手で取り外しに苦戦しました。このようなクリップの取り外しはサークリッププライヤーを使うと楽になります。
・スナップリングプライヤー 軸穴兼用
稀にクリップが使われているので一本あると便利です。
クリップを外したらホップチャンバーのドラム部分の位置をズラします。
この作業ではホップパッキンを押すスチールボールを紛失しないように注意です。
ホップ調整の位置決め、クリック感を出すクリップを外します。
あとはホップパッキンを外してバレル周りの分解は終わりになります。
この中で気になった部品を少し見ていきます。
ホップチャンバードラム
ドラムの内側はスチールボールを押すためのカム形状になっています(ボールがパッキンを押してホップが掛かる)。
ホップパッキン口元形状
弾を咥える力が強いリップ形状になっています。詳細な理由は後述しますが本モデルのブローバックメカニズムは機械式のためこのリップが弾を強く保持する機能が重要になります。
ホップの突起形状
ホップの突起形状は長掛けホップとまでは行きませんが長めのコブ形状でした。
次にインナーバレルです。
インナーバレルホップ窓
KSCさんらしく機械加工が丁寧です。
インナーバレル先端部
先端はテーパー加工がされていて位置決め用のOーリングもついています。
バレルの材質は真鍮(銅)で表面は塗装しているようです。バレル内径はおそらく6.04mmです。
最後にバレル廻りの部品一覧です。
一般的なガスブロに比較してかなり複雑な仕組み、部品構成になっています。
理由を想像するにKSCさんの05HK時代のソーコムピストルの販売開始時期は1997年くらいからで当時はホップ機構が確立されておらず各社模索中だったことによると思います(マルイのホップ機構は特許で固められていた、現在では特許有効期限20年が過ぎたのでコピー可能)。
現代では特許の有効切れ等や技術の確立によりほとんどのメーカーで似た構造になりました。ただしKSCさんは未だにドラム式のままです。
そんな背景から本製品では独自のホップ機構のためホップパッキン、インナーバレル等はアフターパーツで使えそうなのが現在(2023年4月上旬)ではほとんどないと思うので今後に期待です。
ただ見た感じではパーツの精度はなかなか良さそうなので丁寧に組めばそれなりの命中精度、飛距離が期待できそうです(インナーバレルの固定が甘いのは不安)。
ブローバックユニットの分解
スライドからブローバックユニットを取り外していきます。
まずはリヤサイトを固定しているネジを外します(ブリーチ固定を兼ねてる)。
ネジを外したらリアサイトを取り外します。
次にエキストラクターを外します。
スライドのレール部分にエキストラクターを固定しているイモネジがあるので外します。
これでエキストラクターが外せます。
この作業ではエキストラクターを稼働させるためのバネが入っているので紛失に注意です。
これでブローバックユニットが取り外せます。
取り外したブローバックユニットです(外したエキストラクターを取り付けた状態)。
横
裏
後
懐かしの05HKのメカそのものです。
この段階で重量を計測します。
重量的には軽い部類に入るような気がします。
ブローバックエンジンを分解していきます。
まずリターンスプリングを外します。
バネを壊さないように丁寧に外します。
次にシリンダーを外します。
シリンダーは前方にスライドすれば抜けます。
次にフィアリングピンを外します。
まずはファイリングピンを固定しているピンを抜きます。
このピンは圧入ではないのでピンポンチで簡単に抜けます。
・シグネット ピンポンチセット
高級ブランドではありませんが、自動車業界ではコスパが良い中級ブランドでおススメです。しかも安いです。
これでファイアリングピンが外れます。
次にピストンを外します。
まずはファイリングピンが入っていた穴の奥にある六角ボルトを外します。
これでピストンユニットが外せます。
ここから更にピストンユニットの分解を試みましたが圧入されて組み立てられているっぽいので諦めました(現設備では無理)。
ここからいくつか気になるパーツを見ていきます。
まずはシリンダーです。
通常のガスブロですとシリンダーとノズルが一体になっているものがほとんどですがこの製品は独特のブローバック方式を採用しているのでノズルはシリンダにありません。
ノズルの機能はピストンユニットが持っているのでピストンがシリンダを貫通するカタチになります。
なのでピストンが貫通する部位はパッキンでシールされています。
シリンダ裏側
上の写真の奥に見えるのがシールです。
シリンダのガスルート部を見ていきます。
高圧の炭酸ガスを使用するのでガスルートの穴は小さめに見えます。
次にピストンユニットを見ていきます。
ほとんど全ての部品が機械加工で作成されており見るからに高そうで高精度な部品です。現代の日本の工業のコスト感覚からすると考えられないつくりです。
この部品を眺めていると1990年代後半のモノづくり大国だった日本を感じます。
余談ですがKSCさんの05HKユニットは私の記憶では昔、3000円くらいで単体で販売されていましたがこの製品のピルトンユニットは取説によると5500円するようです(ほぼ2倍)。
自分の設計者感覚から量産品でのこのコストアップはかなり妥当か安めの設定に感じます。
折角なのでピストンユニットの作動メカニズムを簡単に説明してみます。
まずはブローバック前の弾を発射するメカニズムです。
①弾がホップパッキンに抑えられていること力を利用してピストンユニットの一段目の筒が弾に押されて縮む
②筒が縮むと弾側へのガスルートが開く
③ガスが弾を押す
実際には3工程は同時に進行する。
この筒を押して発射側へのガスルートを開くために弾の保持力が重要なのでホップパッキンのところで述べたようにこの製品のホップパッキンのリップはかなり分厚くなっています。
次にブローバック側へのガスの流れの切り替えです。
①弾が発射されピストンユニットの筒の押さえが開放され筒が伸びる
②筒が伸びたことによって発射側へのガスルートが閉じる
③ブローバック側へガスが流れる
実際には3工程は同時に進行する。
このように一般的な負圧式の差圧によるガスルートの切り替えではなく弾という物体を利用してガスルートに切り替えを行っていることから機械式と呼んだりする方式です。この方式を今でも続けているのはWAさんくらいでしょうか。
利点としては弾の発射とブローバック工程が完全に分かれているので本物のように弾が出てからブローバックが始まるので一般的に精度が良い、燃費が良いと言われています。
しかし私の個人の感覚では負圧式もかなり進化していて性能の差はほぼ無いか負圧式のが少し進歩しているような気がします。
ここまでのメカニズムを頭の片隅に置きながら次のピストンの動きの動画を見ると理解が深まると思います。
KSC Mk23 ソーコムピストル CO2 ピストンの動き動画
ちなみに一般的な負圧式のメカニズムの解説記事があるのでよかったら覗いてみてください。
ここまででブローバックユニットの分解は完了です。
ブローバック部品一覧
ここで折角なのでドンガラになったスライドを見ていきます。
スライド裏側
300発ほど撃った個体ですがスライドへのダメージは特に見当たりませんでした。
明らかに強度が足りなくて破損する場合は50発も撃たないレベルでダメージが出てくるのに対し特にダメージが見当たらないのでそこまでの心配はいらないようです(一発破壊と疲労破壊)。
最もCO2モデルの割にスライドの動きがHFC−134aモデルと同等なので大丈夫だと思います。
次に気になるスライドノッチです。
弱冠の潰れが見えますがKSCさんのABSモデルの割には耐えているように見えます。この部位もダメなモデルは1発でノッチが欠けていくのでまずまずの耐久性がありそうです。
ただし私の使い方は説明書に書かれている通りスライドストップレバーを使ってスライドを戻すことをほとんどやっていないことも要因として大きいかも知れません。
これでスライドの分解が完了です。
まとめ
スライド分解のまとめとして昔のKSCさんを思い出すような複雑な部品構成でした。
分解はそこまで難しくないものの部品は多いです。
メカニズムとしては完全に昔の05HKと同じようでした。
昔はHFC-134aの圧力ではまともに動かなかったメカがCO2の圧力によって復活するのは面白い現象で今後が楽しみです。
良かった点で大きなポイントはおそらく国内の自社工場生産なので加工精度、組み付け精度が素晴らしく高いです。
また300発しか撃っていませんがバラした各部品を見ると極端にダメージを受けている部位が見られないことから耐久性はそこそこありそうな感じです。
逆に気になった点はKSCさんではよくあることですが可動部品のグリスがほとんど塗られていないことです。
自分は機械設計者の観点から基本的にあらゆる稼働する部品はドライはあり得ないと思っているので対策していきます(テフロンコーティンなどの特別な表面処理は除く)。
またシリンダの穴とピストンのガスルートの穴形状が合わないことも気になります。
なので今後の調整ポイントは次のようになります。
・インナーバレルの窓の追加工(いつもやる)
・各摺動部の研磨、グリスアップ
・ピストンユニットの穴加工
以上、お付き合いありがとうございました。
次回は分解のシャーシ編になります。
・KSC Mk23 ソーコムピストル CO2 ABS
ソーコムの唯一のガスブロモデルでオススメです。
・KSC Mk23 ソーコムピストル CO2 27連 スペアマガジン
今までのKSCさんだとスペアマガジンの入手性はかなり悪かったです(過去形)。今後は謎です。
・KSC 純正 CO2 12gカートリッジ 50本セット
拘りが無ければこれでなくても良いと思います(価格はちょい高め)。数量に関して50本は多く感じますがすぐに無くなります。自己責任になりますがもっと安いモノでも良いかもしれません。
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