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コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓

コメット墜落事故から学ぶ教訓と技術史21 コメット墜落事故の原因再考のまとめと後書き(事故、安全、技術、仕組み)

前回の紹介でコメットの墜落事故の事故対応を紹介した。

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓20 コメット墜落事故の対応(利害関係、事故調査、第3者委員会、安全)

これで長くなってしまったがコメット墜落事故の原因の再考をコメットの企画から事故への対応までを考えてきた。

これまでの振り返りから世間一般で言われている与圧室への応力集中と疲労破壊だけが原因でないことがわかっていただけたと思う。

今回は、工学の問題から敢えて離れてコメット墜落事故から得られる教訓を考えていこう。

コメット墜落事故から得られる教訓

まずは企画時のことを思い出していくと戦後の航空業界の覇権を制覇するためにイギリス政府は民間でのジェット機の運用の構想を考え始めた。

重要なポイントは、民間航空の制覇のためにとにかく早くジェット機の運用を開始したかったことを思い出しながら見ていこう。

企画

その構想で政府としては4種類のジェット機を考えて、そのうちのタイプ4と呼ばれる大西洋横断可能な高速郵便ジェット輸送機を開発製造会社(デ・ハビランド社)に発注した。

しかし開発製造会社(デ・ハビランド社)は、何故か大型四発ジェット旅客機(後のコメット)を提案してイギリス政府は、あっさりと自分たちのプランを引き下げて提案を呑んでしまう。

すでにここでの政府の判断がかなりマズイ。

技術は、どれだけ理論が確立していても実現するためには、一歩ずつ検討し確認していかないと前に進めないのだ。

それはおそらく当時の政府も分かっていたからこそ段階的に技術を蓄積するために、まずは高速郵便輸送機の実現を考えたが開発製造会社の魅力的な提案についつい乗ってしまったと思う。

ここがターニングポイントの一つであり、コメットの悲劇に繋がる第一歩だったと思う。

つまりどんなに甘い誘惑があっても、現実をしっかり見て冷静に判断することが大切だと思う(教訓)。

欲に目が眩んで判断を間違えると後で痛いしっぺ返しを喰らうのだ。

いずれにせよ政府が大型四発ジェット旅客機の発注をしたことで開発が始まる。

筆者の想像だが、この開発の中で一番、キツイ条件がかなり短い納期を政府が提示したと思う。

最初に提案したプラン4、大西洋横断可能な高速郵便ジェット輸送機で考えていた納期をそのままで大型四発ジェット旅客機の発注をした可能性が高い。

つまり納期は、そのままで開発難易度がプラン4に比べ遥かに厳しい内容になった。

そんな内容にも関わらず開発製造会社は、実現できた時の莫大な利益や名声から厳しい納期を呑んだと思う。

ここも、かなりのポイントで開発製造会社も冷静な目を失って実現のために必要になる時間を見誤っている。

政府、開発製造会社の両方で冷静さを欠いており非常な危険な状態で本来ならば政府(発注者)は開発製造会社のチェック機関のはずが、この段階から既に正常な関係は、崩壊していたと思う。

この状態を踏まえコメットの構想を振り返っていこう。

構想

この構想段階では、本来ならば未知の技術領域にある事象の検討や技術課題の解決法の研究に大きく時間を割くのだが民間ジェット機の実現のため時間が相当限られていたので十分な時間がなかったと考える。

特にコメットの重要な要素技術であるジェットエンジン、与圧室は個別で確立されていたので当人たちは、未知の技術領域は少ないと考えていた節さえ感じる(組み合わせ新技術)。

ここも重要なポイントで現代でもよくあるのだが既知の技術でも組み合わせによっては、未知の領域に足を踏み込むことが多いにあり得ることだ(教訓)。

このパターンは現在でもしばしば見られ、隠れていた未知の領域が市場で顔を出してきて不具合、事故が発生しているのを見かける(コメットと同じ)。

技術者は、隠された未知の領域を発見する観察力、着眼点、発想を持つことがとても重要だ。

次に共通の問題を持つ設計から試験飛行までを一気に振り返っていこう。

コメットの開発全体

最初に結論を述べると開発の全てにおいて開発製造会社の開発システム、チェック機能、管理体制などの大切なシステムの全てが崩壊していた。

細かい部分を見ていくと設計時に技術課題の共有化が会社全体でできていたか?試験時に試験内容と結果のデータの共有化が会社全体でできていたのか?などの数多くの疑問点がある。

事故の原因となった応力集中と疲労破壊は、当時の時点である程度知られていたにも関わらずほとんどノーマークだったのは、あまりにも杜撰な開発内容だったと考えざろう得ない。

大戦争を戦い抜いた巨大で名門のである開発製造会社(デ・ハビランド社)に所属している多くの精鋭エンジニアたちの全てがこの問題に気付かないことはあり得ない。

おそらく何人かの技術者たちは、安全性について指摘をした可能性が高いが、結果としてその指摘は開発に反映されていない。

この大きな原因の一つは、開発時間が内容に対してかなり短かったからだと思う。

特に筆者がそのように感じるのは与圧室の生産方法で分割して接着剤でくっ付けて完成させることから感じていて、その方法は完全に機能、性能、耐久性や安全よりも巨大な与圧室を如何に速く生産できるかを追求した方法だからだ。

その分割した方法ならば新しい工場の建設や工法の開発の問題を無くせるのだ。

その生産方法の採用でコメット自体が未知の領域に足を踏み込んでいるのに試験方法も未知の領域に足を踏み込んでしまった(有限要素法)。

さらには一発破壊試験で使った部品をそのまま疲労試験でも使う行為にかなりの時間の無さや開発の焦りを感じる(戦前からそんなことは絶対にやらない)。

試験飛行の不徹底さもそうだ。

この時間の無さと焦りが正常な開発システム、チェック機能、管理体制を破壊してしまった。

また開発製造会社のみならずこの時間の無さが政府の正常な役割も破壊してしまった。

ここから学べる重要な教訓は、どんなに時間が無いなどの過酷な状況でも技術者は、冷静になって正直な目で仕事に取り組むことが重要だ

さらにどんな過酷な状況において今までの蓄積から構築された開発システム、チェック機能、管理体制などは、ある程度のレベルで維持する必要がある。

もし変更する場合は、よく考えてチェック漏れがないようにするなどの工夫をしないとかなりマズイことになる。

またコメットのような未知の領域に足を踏み込む場合は、既存の試験、チェックだけでは見切れない部分がどうしても出てくるのでよく考えて開発を進めないと後でとんでもないことになる。

よって筆者のお勧めは、通常の試験内容やチェック項目に加え足を踏み込む領域で発生する新しい事象、対応技術、確認試験内容を考える時間や専門の組織を設置することを強く勧める(教訓)。

少なくとも当時でも正常な状態で開発に取り組んでいればコメット墜落事故の原因となった応力集中、疲労破壊の開発中での発見は、さほど難しいことではない。

最後に事故対応を振り返っていこう。

事故対応

事故対応に関しては、前回でも述べたように史上最悪クラスのひどい対応だった。

多くに人が既に気づいていると思うが事故の以前からから政府と開発製造会社には、コメットを冷静な目、正直な目で見ることはできなくなっており、実際に事故が発生した後の動きは、完全に硬直化して何もできていない(調査でさえまともにできていない。)。

幸いなことにチャーチル首相という歴史上偉大な人物が当時に大きな決断をして第3者であるRAE、軍によって事故の原因解明ができた。

もう、このような硬直状態に陥った組織、団体には自浄能力も失われていることが多く、残念ながら歴史を鑑みると外部の力に頼るか崩壊していくかのどちらかになることが多い。

これは、ここ20年くらいの日本の大企業でもしばしば見られることで、とある名門自動車会社は、外資に買収されたり、不祥事を起こした食品会社は倒産し、国内最大手の航空会社は産業再生機構の力を借りてなんとか復活?した。

大切なことは、組織が硬直化する前に如何に自分を冷静に見つめ、その時々で変化と進化を続けるしかないのである。

筆者が思う真の教訓

ここまでコメット墜落事故は、工学上の問題である応力集中、疲労破壊だけでなく政府、開発製造会社の冷静さを欠く判断や行動と各組織、開発システム、チェック体制、管理体制、運営などに大きな問題と教訓があることを述べてきた。

おそらく当時の英国政府もしっかり分析して工学上の問題だけでなく組織などの問題点を総点検してノウハウを得て対応しているはずだ。

コメット墜落事故において日本では基本的に応力集中、疲労破壊の問題だけが伝わっているのは、英国政府が真に得た未知への領域の開発方法や組織運営などの超大切な部分は、公表せずに実行しているからだと思う。

少し陰謀論的で好みではないのだが、本当に得られた真のノウハウは、国であれ企業であれ外部に漏らすことは、実際にほとんどないのだ。

完全な筆者の感覚だが意外にもアメリカが緩くて、探してみると大切なノウハウを書いていたり教えてくれたりする。

筆者も一応、会社で未知の領域の開発手法や効率が良い開発手法などの仕組みの研究を3年くらいやって個々の方法である流行りの要件開発、アジャイル、システムズエンジニアリングなどや発想法であるデザイン思考などを研究し実現しようとしていた。

その研究からコメットには、どんな開発システムなどが最適だったのかを述べても良いが、今後に起きると予想される問題や課題に対して時代、組織、背景も当時とかなり異なっており、それほど考察に意味があることと思えないので省かせてもらう。

さらに組織の規模、文化、考え方でや対象製品でも最適な手法は、異なってくるので単一事象で考えてもさほど意味がないと思うので止めておく。

何にせよコメットの問題は、工学以外にもたくさんあったということだ。

以前にも述べたが筆者が思うコメット墜落事故の真の教訓は、事故の原因を考えるときに単一視点である工学の応力集中、疲労破壊だけではなく多くの視点で出来事を考えていくことだと思う。

確かに機械の事故、不具合の原因は、必ず工学上の問題から発生するが大切なのは何故、そのような工学上の問題を発生させてしまったのか?何故、事前のテストで発見できなかった?何故、検討から漏れた?何故、多くのチェックから漏れたのか?などの仕組みの部分を考えることが超重要なのである。

もしコメットの教訓が応力集中、疲労破壊だけだったらチェックリストのようなモノを作れば、同じ事象の発生は避けられるが他の仕組みの部分が変わっていないと新しい壁にぶつかったらまた似たような失敗を必ず繰り返す。

だからこの事故の大切なことは、どんな問題でも多視点で見ること、本来ならば工学系の人、エンジニアだけが見るのではなく多くの分野の人が見て考えることが大切なのである。

このような事故が起きたときに絶対にやってはいけないことは、担当者の能力が低かった、イレギュラーだった、単純に知らなかった、チェックが漏れただけなどの他責かつ短絡的かつ単一の原因だけで片付けることだ。

そのような対応をすると遅かれ早かれコメットのような大事故を起こす要因を残したままにすることと同じことである。

特に現代での科学技術の進歩は日進月歩で人類の道への開拓スピードも加速するのは、間違いない。

そうすれば自ずとコメットの時のような未知の領域に足を踏み込む回数は増加する一方だ。

それに対応するのに失敗や事故への単純な対応や工学だけに頼っていたら、絶対に対応しきれないし、より取り返しのつかない大事故が発生す確率はかなり高い。

だからこそ企業や団体は、運営方法、組織、開発システムの整備と進化に取り組むのは、当然として政府を含めた社会全体の仕組みで対応する方法を皆んなで日々、考え続け進化しなければ大きな進歩は、なかなか難しいと思う。

コメットの失敗や事故から学ぶのは、工学の問題だけでなく企業や政府の運営、組織、開発システムなどの仕組みも含めた社会全体で再発防止を考えることが未来の大きな事故を防ぐ大きな教訓になると思う。

あとがき

このコメット墜落事故から学ぶ教訓は、このブログで説明してきた材料力学の疲労破壊の重要さを説明するためだけに書こうと最初は、思っていた。

コメット墜落事故は、筆者も学生時代に教えられた応力集中、疲労破壊の問題として強くイメージに残っていたので材料力学の最後にちょうど良いと思っていた。

でも会社でエンジン設計や開発手法の研究などを多少、経験した今の筆者の頭で、もう一度コメットの事故を見ると応力集中、疲労破壊は、大切だけれども枝葉の問題にしか見えてこなくてもっと大切な重要な原因があるように見えた。

なので当初の目的を変えて筆者の経験から考えることを書いていったら全部でおおよそ14万字に近い量になってしまった。

調べてみると普通の文庫本より多い量の文章になってしまった。

筆者はただの機械設計者で物書きではないので連載かつこれだけの量の文章を始めて書いたので途中でかなり苦しかったがなんとか最後まで終えた。

何人の人にここまで呼んでもらえるか大変に不安(一人もいないかもしれない)であるが書きたいことは書けたので良いとしよう。

あとがきに書くのもどうかという内容だがこの事故を調べて思ったのが、より多面的に物事を見ないとダメだなと改めて思った。

特に技術者、エンジニア、設計者である筆者なんかは、昔は工学の問題以外にあまり興味が出ない傾向にあって改めて反省している。

おそらくこの文を読んで頂ている人は工学の人が多いと思うができれば全然、関係ない分野の人にも是非、呼んでもらいたい。

また工学系の人にもメッセージとして不具合や事故は、技術だけで防ぐのではなく仕組みでも防ぐような仕掛けを考えなきゃいけないなあと思っていただければ幸いである。

話は、変わるが筆者も利用していたエンジニア転職サービスを紹介させていただく(筆者は、この会社のおかげでいくつか内定をいただいたことがたくさんある)。

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エンジニアとしてステップアップするなら超おすすめだ。

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機械設計では基本になる本が一般にあまり出回っていない上に高価で廃盤も多い。

また機械設計では規格を日常的に確認するのでタブレットやスマホだと使いにくい面もあって手持ちの本があることが望ましい(筆者がオッサンなだけか?)。

しかもほとんどの企業が気密の観点から個人のスマホ、タブレットの持ち込みは難しく、全員にスマホ、タブレットを配る余裕もないと思うので本で持っているのが唯一の手段だったりする(ノートパソコンやCADマシンはあるけど検索、閲覧には使いづらい)。

元々、本屋から始まっただけあってアマゾンは貴重な本の在庫や廃盤の本の中古が豊富にある。

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  • この記事を書いた人

kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考えてみる。

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