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初心者でもわかる機械材料

初心者でもわかる機械材料7 結晶・結晶格子ってなんだ?2(六方最密格子とまとめ)

前回は物質を構成している原子の並び方である結晶、結晶の最小単位である結晶格子を説明した。

さらには金属結合の代表的な結晶格子3種類の中の2種である体心立方格子(BCC)、面心立方格子(FCC)まで説明した。

初心者でもわかる機械材料6 結晶、結晶格子ってなんだ? (結晶格子、体心立方格子、面心立方格子)

今回は金属結合の代表的な結晶格子3種類の最後である六方最密格子を説明していこう。

六方最密格子(HCP)

まずは六方最密格子について実際にどんな結晶格子の形状なのかを見て行こう。

始めに復習の意味を込めて単純な仮の結晶、結晶格子の図を見ていこう(前回の結晶、結晶格子の説明で使ったモデル)。

基本的に六方最密格子は格子の形状が異なるだけで考え方はこの単純なモデルと同じだ。

六方最密格子も1段、2段、3段目と積み重ねて考えていくと解りやすいので、まずは1段目から考えて二段目、三段目と積み重ねて行こう。

まずは1段目を考えていく。

前回で説明した体心立方格子、面心立方格子の一段目は2行2列で整列した原子配列だったのを思い出して欲しい。

次に少し枠を広げて3行3列の原子配列を考えてみよう。

この3行3列の原子配列でも基本的に問題ないのだが、自然とは偉大で一定の面積内に原子がより多く入ろうとして効率が良くなるような作用が働くのだ。

具体的には3行3列の原子は次の図のような動きをする。

そうすると原子配列は次の図のような密な六角形になる。

つまり六角形の密状態になるのだ。この六角形が1段目になる。

この六角形が六方最密格子の名前の由来だったりする。

次に2段目を考えて行こう。

ここからはBB弾で作った模型を使って説明していく。

まずは一段目の六角形の模型だ。

この模型を基に二段目を考えて行こう。

ここで以前にも述べたように自然は偉大で二段目の原子は一段目の原子配列に密になるように配置される(原子同士は近くて密な状態が楽)。

その法則を基に考えていくと一段目の原子と最も密になる二段目の配置は次のようになる。

この配置を模型で作ると次のようになる。

このように密になるように二段目に原子が3個配置される。

次に三段目を考えていく。

三段目はとても簡単で一段目と全く同じ六角形の配列した原子が蓋のように被せる。

模型で作ると次のようになる。

折角なので模型を反対側から見てみる。

このように3つの原子で構成されている三角形型の配列に対して6つの原子で構成されている六角形の配列を上下で挟み込むカタチになる。

これが六方最密格子になる。

図解すると次のようになる。

筆者個人のイメージだが一段目、三段目を構成している原子配列が六角形最も密になる構造六方最密格子と考えている。

基本的に六法最密格子と呼んでいるが人によっては稠密六方格子(ちょうみつ)、六方最密構造などと呼ぶことが同じモノである。

また学者、先生達に怒られるかもしれないが、筆者のイメージは斜めになった体心立方格子3個が合体したのモノとイメージしている。

これも英名も重要で六方:Heaxagpnal、最密:Close、格子:PackedでHCPと呼ぶ

この六方最密格子:HCPがたくさん集まって構成されているのが次の図のような結晶になる。

これも形状のイメージが重要なので細かい特性については後に解説する。

この結晶格子、結晶構造なる物質の代表的なものはマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、チタン(Ti)が有名だ。

但し各物質とも温度を始めとした状態や処理で結晶格子の形状は変化するので覚える必要はないと思う。

多くの一般的な説明では“六方最密格子が最も密に原子が詰まっている構造“と言われることが多いのだが実はそうでもないのだ。

数字を使った細かい理由は後に詳しく説明するが“なぜ六方最密格子が最も密な構造ではない“ことをイメージで説明していく。

六方最密格子と面心立方格子(実は原子の密の度合いが同じ)

既に題名で言っちゃているのだが、実は原子配列の密の度合いは六方最密格子(HCP)と面心立方格子(FCC)は同じになってしまうのだ。

まず、ここまで説明してきた面心立方格子(FCC)と六方最密格子(HCP)の図解を並べてみる。

図を見る限りだとどう考えても六方最密格子(HCP)の方が密な状態に見えると思う。

実際には密の度合いは同じなのだが何故なのかを模型を使って説明していく。

まず二段目まで積み重ねた六方最密格子(HCP)の図を思い出してみよう。

図で表すと次のようになる。

模型で作ると次のようになる。

六方最密格子(HCP)では二段目の上に一段目と同じ六角形配列の原子で蓋をした。

だが今回はちょっと発想を変えて三段目に密になる別な原子配列を考えてみよう。

では3つで構成されている二段目の原子の上に密になるように原子が配列できる場所は次の図のようになる。

考え方としては2個の連なっている原子の間の上に原子を置いていく。

そうすると二段目は原子は3つから構成されているので3つの原子が置けるのだ。

模型で作ると次のようになる。

これでイメージができたと思う。

勘の良い人は気づいているかも知れないが模型の色の付け方をちょっと変えてみる。

ここで図解した面心立方格子を再度、見てみよう。

そう、ちょっと立方体が斜めになった面心立方格子(FCC)になるのだ。

言葉で説明すると二段目までは六方最密格子(HCP)と同じ摘み方をして三段目の積み方をちょっと変えると面心立方格子(FCC)になるのだ。

なので六方最密格子(HCP)と面心立方格子(FCC)のどちらも密な積み方をしているので格子内の原子の密の度合いは同じなのである。

ちなみにこのような蜜の度合いを材料の世界では充填率と呼び、格子の体積と原子が占める体積の割合を数字で表すことができる。

その詳細は後に説明する。

いずれにせよ、ここでイメージして欲しいのが格子における原子の蜜の度合いは面心立方格子と六方最密格子で同じになるのを頭の片隅に置いておいて欲しい。

まとめ

金属原子、金属結合が持つ基本的な3種類の結晶格子についてまとめていこう。

金属の結晶格子

・同じ物質(金属)でも結晶構造、結晶格子の形状が異なると性質が大きく変わる。

・金属原子、金属結合は主に3種類の結晶格子を持つ。

金属結晶の代表的な一つに体心立方格子(Body Centered Cubic:BCC)がある。

金属結晶の代表的な一つに面心立方格子(Face Centered Cubic:FCC)がある。

・金属結晶の代表的な一つに六方最密格子(Hexagon Close Packed:HCP)がある。

・格子内の原子の蜜の度合いは面心立方格子(FCC)と六方最密格子(HCP)は同じである。

いつも同じ文言で申し訳ないが暗記することよりも理解することが重要だ(試験がある受験生、学生の方は申し訳ないが暗記も必要)。

覚えていなくてもメカニズムがわかっていれば自分で導き出せるし、忘れたら調べれば良いだけだ(良かったらこのサイトをメモ代わりに利用して欲しい)。

今回で金属の基本的な結晶格子はほぼ解説したことになる。

特に面心立方格子と六方最密格子の格子内における原子の密の度合いは同じになる。後に詳しく説明するが密の度合いが同じなので面心立方格子と六方最密格子の性質はかなり似ているのだ。

そんなことで超重要なことなので是非、理解して欲しい。

次回はあまり面白くないが各結晶・結晶格子の特性(格子定数、配位数とか)を解説する。

最後にいつもと異なり変わった物を紹介する。

代表的な結晶格子について説明してきたが、より深く理解したい方は筆者のように模型を作ってみることを勧める(簡単)。今回は少し複雑な六方最密格子なので模型を作ることは理解に非常に有効だ。

また面心立方格子と六方最密格子の関係性は模型を使うと非常に解りやすい。

球と接着剤があればなんでも良いのだが筆者が使った物を紹介する。

・東京マルイ BB弾 0.2g 1600発
メーカー、重さ、精度のどれもなんでも良いが色は白をお勧めする。

・ロックタイト 瞬間接着剤
接着剤もなんでも良いのだがある程度の性能がないと作業しづらいのでブランド物がお勧めだ。

基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。

もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。

はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。

またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。

多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。

さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。

しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。

特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。

また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。

やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。

私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。

折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。

転職活動シリーズ1 私の転職活動概要(機械系エンジニア、30代半ば2010年代の中頃)

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  • この記事を書いた人

kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考察して行きます。

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