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初心者でもわかる材料力学

初心者でもわかる材料力学11 はりのたわみを簡単に求める。(面積モーメント法、特異関数)

前回で実際に実際に重積分法を使ってはりのたわみを求めてみた。

初心者でもわかる材料力学10 代表的なはりのたわみを求める。(片持ちはり、単純支持はり、たわみ)

基本的に重積分法でほとんどのはりのたわみを求められるが計算が面倒なのでもっと直感的に簡単に求める方法があるので説明する。

また初心者でもわかる材料力学を順に学びたい人はこちらの索引からどうぞ

まあ、今の時代では何度も述べている通りシミレーションが簡単になって身近になっているので今回、紹介する方法を実際に使うことはほぼないだろう。

ただ概念として覚えておくとレイアウト、スケッチの時に構造物の変形の予測に役立つことがしばしばあるので是非、理解して欲しい。

面積モーメント法による解法

新しく紹介する方法は、面積モーメント法というのだがまあ、名前だけではなんのこっちゃとなるので順に説明していく。

いつもながらの例題を設定していく。長さlの方持ちはりの先端に荷重Pが掛かっている。座標は左端を原点とする。

これのたわみを求めていく。

重積分法だと外力の釣り合い、モーメントの釣り合いから任意の点での曲げモーメントと求めていくが今回はちょっと異なる。

面積モーメント法の証明

まず任意の区間A-Bを抜き出す。ここで点Aのたわみ角をθA,たわみをyAとし点Bも同様に設定する。

まずたわみの微分方程式を区間A-Bで積分するとたわみ角θBが求まる

$ θB=θA-\int_{xA}^{xB}\frac{M}{EI}dx $

となる。

もう一回ほど積分するとたわみyB求まる。

$ yB=yA+\int_{xA}^{xB}θdx=yA+θBxB-θAxA $

となりたわみyBの式にθBに最初の式を代入すると

$ yB=yA+θA(xB-xA)-\int_{xA}^{xB}\int_{xA}^{x}\frac{M}{EI}dx’dx $

区間A-Bで$ \frac{M}{EI} $を2回積分を行いたいが積分で$ dx^2 $と一気にできない。

従って一度、異なる座標系x’-y’を置いてdx’でxA-xB分の積分を行ってからもう一度、元の座標x-yで積分すると上式のようになる。

ここで座標系x’-y’でのdx’積分の意味を考えると次のようになる。

$ \int_{xA}^{xB}\frac{M}{EI}dx=A(面積) $

つまり関数$ \frac{M}{EI}$の点Aから点B区間の面積を意味する。

区間xA-xBでの積分は横軸をx、縦軸を$ \frac{M}{EI} $のグラフの区間xA-xBの面積に等しい。

ここで$ \int_{xA}^{x}\frac{M}{EI}dx’ =u(x)$とおくと

$ \int_{xA}^{xB}\int_{xA}^{x}\frac{M}{EI}dx’dx=\int_{xA}^{xB}u(x)dx $

ここで部分積分を使うのだがちょっと複雑で混乱すると思うのでじっくり解説する。

部分積分の定理は関数f(x),g(x)の二つがある場合に次式が成り立つ。

’は、微分を表す。

$ \int f(x)g’(x)dx=f(x)g(x)-\int f’(x)g(x)dx $

これより先程の式のu(x)をf(x)として1をg’(x)、つまりx=g(x)とすると

$ u(x)x-\int u’(x)xdx $

ここでu(x)を微分すると$ \int \frac{M}{EI}dx’ $が$ \frac{M}{EI} $になるので積分部分は$ \int \frac{M}{EI}dx $になり

区間がxA-xBなので代入すると

$ u(xB)xB-u(xA)xA-\int_{xA}^{xB}\frac{M}{EI}xdx $

でu(xA)は$ \int_{xA}^{xA}\frac{M}{EI}dx’ $なので0になる。

よって

$ u(xB)xB-\int_{xA}^{xB}\frac{M}{EI}xdx $

となりu(x)を元に戻すと

$ \int_{xA}^{xB}\frac{M}{EI}(xB-x)dx $

となる。まあ、この辺の数学の考え方は工業数学を紹介するときに説明する。

次に断面一次モーメントの特性を思い出して欲しい。

初心者でもわかる材料力学8 断面二次モーメントを求める。(断面一次モーメント、断面二次モーメント)

確か図心xGは断面一次モーメントを面積で割ると算出できる。言い換えば図心に面積をかければ断面一次モーメントが求まる。また断面一次モーメントは座標を面積で積分したモノである。

これらからさっきの式を(xB-x)を座標x’’-y’’として$ \int_{xA}^{xB}dx $の部分を面積の積分とすると

$ AxG=\int_{xA}^{xB}x’’dA $

となる。

座標xGは座標xBから縦軸を$ \frac{M}{EI} $としたグラフの図心までの距離になる。

ということは一番、最初のたわみ角の関係式に代入すると

$ θB=θA-A $

$ yB=yA+θA(xB-xA)-AxG $

となり横軸をx、縦軸を$ \frac{M}{EI} $の関係の図形の面積と図心がわかれば重積分をしなくても簡単に求まる。

ここまでの関係は数学上で弱冠、複雑になったが結果を利用するとたわみが簡単に求まる。

実際に面積モーメント法を使ってみる

例題の長さlの方持ちはりの先端に荷重Pが掛かっている場合のたわみを求める。


曲げモーメントは単純に$- \frac{P}{EI}(l-x)$になる。

θA、θBをはりの両端のたわみ角とするとθ Aは固定されているから0なので

$ θB=-A=-\frac{Pl^2}{2EI} $

同様にyBも

$ yB=-AxG=\frac{Pl^3}{3EI} $

と簡単に求まる。

これが嘘だと思われる方は、代表的なはりのたわみを求めるで同じ条件のはりのたわみを求めているので比べて見て欲しい。

初心者でもわかる材料力学10 代表的なはりのたわみを求める。(片持ちはり、単純支持はり、たわみ)

このように曲げモーメントの関係図が簡単にわかる場合は、楽にたわみを求めることができる。

代表的な曲線と面積、図心の関係

代表的な曲げモーメントの図形と面積、図心の関係を載せておくので是非、利用して欲しい。

まあ、構造物にかかる外力を見たときに曲げモーメントが簡単に想像できる場合に面積モーメント法を思い出してイメージすると簡単に変形量が想像できると思う。

特異関数を用いたたわみの解法

これまでははりに単位一種類の荷重がかかる場合のたわみを求めてきた。

しかし実際には、はりに複数の種類の荷重が掛かっていることが多い。そのような場合でも重積分法を使って頑張れば解けるのだがかなり面倒なことになる。

そこで特異関数というものを使うと多少、楽に求まるので説明する。

特異関数って何だ

これはそんなに難しくなくただの決まり事なので軽く記憶に留めて欲しい。

次の図に特異関数の性質を載せておく。

すごく簡単で<>の中身が+になるときに関数が有効でそれ以外は0とするだけである。

図にすると$ <x-a>^0 $($ x^0=1 $)は、

まあこの特異関数はどちらかというと制御工学とか論理式でよく使う。もしかしたら制御も解説するかもしれないので詳細はそちらで説明する。

でここから特異関数を用いた場合の曲げモーメントMの表し方を紹介する。曲げモーメントM0、荷重P、等分布荷重qが作用する場合を考える。

この式をはりにかかる力ごとに入れて式を立てれば少し楽に求まる。

等分布荷重に関して一つだけ注意があって任意の点xがbを超える時、曲げモーメントの向きが反転するので点Bを中心として点対称の位置に等分布荷重qを想定すると間違えづらい。

この特異関数を使った解法例は重積分法と大差ないので紹介は省くがもし興味がある人がいればこんな感じのはりのたわみを解くと訓練になる。

いつも通り外力の釣り合い、モーメントの釣り合い、任意の点での曲げモーメントを求めてたわみの微分方程式を解けばできるはずだ。

まとめ

まとめると今回は面責モーメント法、特異関数を用いる方法を紹介した。

ポイントは一つだけで面積モーメント法では曲げモーメントの曲線の面積と図心の位置はたわみ角、たわみ量に関係することだけだ。

後は、こんな解法があったなと記憶に留めておけば問題ない。

特に昨今は、シミレーションなどで簡単に求められるので今回、紹介した内容は使う機会はたぶん少ないが引き出しは多い方が良いのでまあ理解しておけば問題ない。

ただし学生は別でこの辺ができないとたぶん単位取得試験で時間内にはりのたわみを解くのが難しいと思う。

重積分法でゴリゴリやっても良いのだが試験問題は他にもあるはずなのでヤバイことになると思う。

次回ははりの不静定問題の解法のコツとできれば組み合わせはり(異種材料材)まで紹介したい。

初心者でもわかる材料力学12 はりの不静定問題を解いてみる、他 (重ね合わせ法、組み合わせはり)

基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。

もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。

はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。

またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。

多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。

さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。

しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。

特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。

また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。

やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。

私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。

折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。

転職活動シリーズ1 私の転職活動概要(機械系エンジニア、30代半ば2010年代の中頃)

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  • この記事を書いた人

kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考察して行きます。

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