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Kazubara
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自動車メーカーの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計の技術を伝授します。仕事などのご依頼は下のお問い合わせボタンからご連絡下さい。

初心者でもわかる材料力学23 クリープ破壊、脆性破壊ってなんだ?(クリープ、クリープ歪み、低温脆性)

さて前回で疲労破壊を紹介して破壊のほとんどは説明してきた。

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ただ残念ながらもう一つだけ今までとは異なる原因で破壊が起きてしまう。

それがクリープ破壊、脆性破壊だ。

また初心者でもわかる材料力学を順に学びたい人はこちらの索引からどうぞ

内容はこれから詳しく紹介するが割と身近な機械、構造物でこのクリープが発生している。

常温で常識的な荷重の範囲であればクリープ現象を気にする必要はないのだが見落としがちなことでクリープ現象が発生し破壊が起きる。

そのような破壊が起きたときにクリープ現象を意識することがあまりないのでどうやって破壊したのかわからなく迷宮入りして時間を食ってしまうことがある。

なので超詳しく知る必要はないのだが現実に起きることがあるのでよく理解しておこう。

目次

クリープってなんだ?

まずクリープ破壊を知る前に当たり前だがクリープ現象を知らないと理解できない。

では、クリープ現象とは、部材に応力を一定のままかけ続けると時間が経過するにつれて歪みが増大する現象のことだ。

また歪みを一定に保って時間が経過すると部材内部で発生している応力が減少することを応力弛緩(しかん)という。

クリープ現象をわかりやすくするのは難しいのだが、例えば鉢植えの鉢を永い間、使ったまま放っておくと何もしてないのに割れていたりする(材料の腐食や昼夜での温度差による繰り返し熱応力など様々な原因がある。)。

応力弛緩の身近な例としては鍋の蓋の取手をつけているボルトが緩んでたとかなどのネジの緩みの原因の一つになる(鍋の蓋も温度差による繰り返し熱応力も原因になる)。

まあ繰り返しになるが応力をかけ続けると歪みが進行するのがクリープ現象で逆に歪みを掛け続けると部材内部の応力が下がるのが応力弛緩になる。

一般的な金属材料、アルミなどではクリープは小さいが確実に発生していることを理解しよう。

ではクリープ現象を数字で表すのには次のようなグラフを利用する。

ある炭素鋼(炭素が入っている鉄、一般的な鋼)に一定温度400℃の環境下で一定応力260Mpa、240MPa、228MPa、210MPaをかけ続けると歪みがどうなるかを表す。横軸が時間、縦軸が歪みのグラフ。

このようなグラフをクリープ曲線と呼ぶ。

では次にクリープの特徴を説明する。

まずクリープはグラフを見てわかるように部材にかかる応力が大きいほどクリープによる歪みが大きくなる。つかり高荷重に晒され続ける構造物はクリープによって勝手に歪みが増大するのだ。

次にクリープは時間と共に増加する歪み量は一定ではなく大きく3つに分かれる。

[st-mybox title=”クリープ領域の区分け” fontawesome=”” color=”#ff0000″ bordercolor=”#f3f3f3″ bgcolor=”#fffabe” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]

・グラフのⅠの領域では応力が発生してすぐなので歪みは一気に増大する。これを遷移クリープと呼ぶ。

・次にグラフのⅡの領域では較的に安定し時間と歪みの増加量が比例関係を保つ。これを定常クリープと呼ぶ。

・最後にグラフのⅢの領域では、一気に歪みが増大していく。これを加速クリープと呼ぶ。

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このような時間によって歪みの増大量が変化するのは多くの金属材料は、応力によって発生した歪みに対して内部の結晶が歪みに対抗して硬くなる。

その結晶が硬くなる速度はある時間までは一定なのだが硬度が高まるとさらにその硬度に対抗して結晶が急激に高くなるのでこのような現象が起きる。

詳細は金属材料編で紹介する。

また温度別のグラフは紹介しないが一般的に同じ応力でも高温度化にさらされ続けるとクリープによる歪みは、増大する。

つまりクリープ現象は、掛かっている応力が高いほど、環境の温度が高いほど歪み量は増大する。

機械設計では主に第2領域の定常クリープを取り扱いクリープによる歪みの増大する割合をクリープ速度(クリープ曲線の傾き)と呼ぶ。

ここまでがクリープ現象の説明になる。

クリープ破壊

クリープ現象で歪みが増大すればご存知の通り応力は、弾性係数×歪みで定義されるので時間が経てば経つほど勝手に応力が増大していく。

応力が増大すればいずれ部材は、その材料の強度を超えて破壊する。これをクリープ破壊と呼ぶ。

また部材に掛かっている応力がめちゃくちゃ小さいときにクリープ現象が発生しクリープの歪みによる応力が材料の強度より低いところで一手になる。これをクリープ限度と呼ぶ。

このクリープ破壊は常に一定の大きな荷重がかかる建築物や設備機械、土木などでは耐用年数などに大きく関わるので注意したい。

また発電所の発電機なんかは高荷重、高温化で長い連続運転をするのでかなり気を使うのだろう。

ただ筆者が経験した自動車業界では、さほど気にしないことが多い(知らない人すらも居るかも)。

筆者が経験したクリープ破壊は、次の図のような円筒に軸を圧入したもので発生した。

材料は軸も円筒も超硬いクロモリの鋼に嵌め合量が大きい(締め代が大きい)圧入をした。

その部品は後でテストすることになっていたので保管庫に3日くらい置いておいた。

いざ使おうとしたら円筒が割れていたのである。もちろん大騒ぎになって大変だった。

もちろん筆者はクリープ現象をそのとき知っていたが保管庫は気温20℃くらいで保たれているので誰も気にしなかった。

割れている円筒を調べた結果、クリープ破壊だった。

この時のクリープ破壊の要因は、温度ではなく圧入代が大きく円筒部に大きな引張り応力がかかり続けていたのでクリープによる歪みが大きくなって材料強度を超える応力が発生し壊れた。

円筒応力の詳細は、こちら 円環応力

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このときの圧入による円環応力はおおよそで650MPaくらいだった(細かい数字や限界応力も知っているが機密契約上書けない。知りたければ個別に連絡してくれ。)。当然、計算でこの応力が材料の降伏点以下で設計している。

この事件が起きるまでは圧入でクリープ破壊が発生することを会社は知らなかったので超詳細に実験などをしてまとめさせられた。そのまとめから今まで量産してきた全圧入部品をチェックさせられて死ぬかと思うくらい大変だった。

このような小さなノウハウの多さが企業の強さになる(経営状態や事業内容からは知ることができない企業の真の実力だ)。

650MPaって大気圧にすると大気圧が大体100kPaなので6500気圧よかなりヤバい応力だった。

このように高温化ではなくても高応力が発生していれば十分にクリープ破壊が発生する可能性があるので注意しておこう。

じゃあここまででクリープ現象による応力は高荷重、高温化で大きくなるので低い温度ならば大丈夫だろうと思うがそう上手くいかないのがこの世の悲しい摂理である。

では、低温下において金属材料に何が起きるのか説明していく。

低温脆性と脆性破壊

では金属材料を低温(基本的に0℃以下)にすると何が起きるのか説明しよう。

実は金属材料の中で鋼(鉄の合金)は温度が低いと内部の結晶の結束力が高まって勝手に硬くなるのだ。

そう低温にさらされ続けるとどんどん硬くなり弾性係数は大きなるが塑性域が短くなって脆くなるのだ。

この現象を低温脆性と呼ばれる。

この低温で金属が硬くなるのは古くから利用され熱処理で冷やすと金属の内部結晶が変態して硬くなり強くなるのは知られていたが低温下にずっとさらされているとどんどん硬くなるのは、知られていなかった。(焼き戻し)

この低温脆性が発見されたのは実は、最近のことで第2次世界大戦の時にアメリカで超大量に作られた輸送船(リバティ船)が北極海付近でボコボコと謎の沈没が多発した。

これを米海軍は重く受け止めて解析した結果、金属材料が低温(0℃以下)にさらされると硬くなり脆くなるのが原因とし、そこから世界で初めて金属の低温での脆性の研究が始まった。

まあ本当の破壊の切っ掛けは世界初の溶接による船体構造で溶接欠陥の所為だとか暖かいカリフォルニアから北極海を行き来していたので温度差による変動応力で疲労破壊したとか説は、いくつもあるがアメリカの国家機密なので未だに謎なのが興味深い。

詳細は後で機械の世界3大失敗で紹介しよう(3件のうち2件は材料力学)。

またこの低温脆性破壊の教訓を生かして開発された材料が板金でよく使われるSP材、SPCC材、JSC材などがありとても耐低温脆性が高い。

このような機械でよく使う材料は後でまとめて紹介する。

ちなみに筆者は、低温脆性破壊を経験しことはない。

しかしながら万が一でも、このサイトで冷凍庫や低温ガス、液体(液体窒素、液体酸素など)の容器を設計する人がいるかもしれないので紹介した。

また本記事作成時点では、コロナウイルスのワクチンを保管するのに噂によるとー70〜ー80℃じゃないとダメらしくて、その保管容器なんかは、この低温脆性破壊を考慮したものでないと保管時に容器が割れてワクチンがダメになると思う。たぶんひどい設計をしたら2〜3日くらいで割れると思う(大丈夫かな?)。

このように意外に身近なのが材料力学なのだ。

またこの低温脆性の度合いを示す値はシャルピー衝撃試験で求められるがシャルピーを紹介していないので金属材料編で詳しく紹介する。

まとめ

ではクリープ破壊と脆性破壊をまとめよう。

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・材料にある一定の応力をかけ続けると時間と共に歪みは増大する、これをクリープ現象と呼ぶ。

・材料はある一定の歪みをかけ続けると時間と共に発生応力は現象する、これを応力弛緩と呼ぶ。

・クリープ現象は、高荷重、高温下になるほど大きくなる。

・クリープ現象はどんな材料、応力でも発生している。

・クリープ量はクリープ曲線で表され3つの歪み増大領域を持ちそれぞれ遷移クリープ、定常クリープ、加速クリープと呼ぶ

・機械設計では定常クリープを主に取り扱い、その歪みの増大する割合をクリープ速度と呼ぶ。

・クリープによる発生応力の最大値をクリープ限度と呼ぶ。

・クリープ破壊はクリープ現象による歪みの増大で発生応力が大きくなり部材の強度を超え破壊されること。

・常温でもクリープは発生し高応力下に置いては部材が破壊されるクリープ破壊が発生する。

・金属材料は低温下(0℃以下)にさらされ続けると硬化し脆くなる、これを低温脆性と呼ぶ。

・低温脆性によって脆くなった部材が破壊することを低温脆性破壊と呼ぶ。

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ちょっと長くなってしまったが以上がまとめになる。

応力弛緩によるボスとの緩みは機械要素設計のネジで詳しく説明することにする。

また脆性破壊は、低温脆性破壊以外にも腐食による水素脆性などがあり評価に使うシャルピー試験など説明したいことが多いのでのちに詳細に説明する。

ここでは脆性破壊を知ってもらうために1番の代表格の低温脆性破壊を説明した。

これで材料力学における主な破壊は、コンプリートだ。

結構、破壊シリーズは長くなってしまったが機械に携わる、ものづくりをする人には必須の内容なので是非理解して欲しい。

次回は破壊の総まとめと実際の業務ではどのような流れで検討するのかを紹介する。

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基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。

もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。

はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。

またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。

多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。

さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。

しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。

特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。

また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。

やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。

私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。

折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。

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自動車メーカーの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計の技術を伝授します。

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