前回は東京マルイ ソーコム MK23 HG エアコッキングハンドガンをレビューしました。

今回は分解しながら部品、組み立て品質を見て行きながらメカニズムを解説していきます。
スライドの分解
まずはフィールドストリッピングをしてスライドとフレームを分割していきましょう。
下の写真のようにスライドを少し引いてスライドの溝とスライドストップレバーの位置を合わせましょう。

この状態をキープしたままスライドストップレバーを抜き取ります。

これでスライドとフレームが分割できます。

ここからはスライドを分解していきます。

スライドの分解は非常に簡単で特に悩むことなく部品が外れます。
外した部品を並べてみます。

部品構成は以前にレビューした東京マルイ コルト M1911 ガバメント HGとほとんど一緒です。基本的にスライドの発射機構の部分は東京マルイさんのエアコッキングガンシリーズで同じようですね。
それぞれの部品の機能は後述しますので先に進めてバレルを分解していきましょう。

アウターバレルの分解は下の写真のようにチャンバー部分を拡げて取り外します。この時に拡げ過ぎるとチャンバーが壊れることがあるので注意しましょう。

これでチャンバーが分解できます。チャンバー内にはショートリコイルを再現するための小さいスプリングが入っているので失くさないように注意して下さい。

次にアウターバレルを分解してインナーバレルを取り出します。
まずアウターバレルは左右分割タイプなので写真の向きにして部品を浮かせて取り外しましょう。

これでインナーバレルが取り出せます。インナーバレルには錘とホップが付いているので外していきます。

ホップパッキンはスリーブの中に残っているので丁寧に取りだしましょう。
これでインナーバレルが分解できました。

ここでいくつか部品を見て行きましょう。
インナーバレルです。

インナーバレルはM1911ではアルミ製だったのですがソーコムでは真鍮製でした。スライドが長いモデルなのでそれに伴ってバレルも115mmと長めになっています。内径は6.08mmでホップ窓はエアコッキングガン独自の形状になっています。
ホップパッキンです。


ホップパッキンは電動ガンやガスブロと異なる独自形状なので互換性はありません。形状から見ると東京マルイさんのエアコッキングのショットガンと同じように見えるので固定ホップで互換性を持たせているのでしょう(弾は0.25g指定)。ただし0.20g指定の固定ホップのコンパクトキャリーガン 固定ガスシリーズとは形状が異なります。
これでバレルの分解は完了です。

これでスライドの分解は完全に完了です。驚いたことにここまで工具は使わずに分解できました。
スライドの作動メカニズム
折角、スライドの部品を完全に分解したのでここでは実際の部品を使ってスライドのメカニズムを解説していきます。以前にも東京マルイさんのM1911で解説しているのですがより工夫した説明にトライしてみます。
まずは組まれている状態を再現した部品の配置を見て行きましょう。

ここでポイントになる部品について解説します。実際にどうのように機能するかは後述しますのでここでは部品が持つ機能と名前を頭に入れておいてください。
1,シリンダ
シリンダは複数の機能を持っていて以下の写真のようにエアを吹き出すノズル部、弾をバレルに押し込むタペット部、空気が圧縮されるシリンダ部、スライドとの位置決め部を持っています。

スライドとの位置決めは以下の写真のように噛み合うのでシリンダは前後に移動することができるようになっています。

2,ピストン
ピストンは空気を圧縮する部分、ハンマーをコックする部分、ハンマーと嚙み合って位置を保持する部分を持っています。

シリンダをコックする部分は以下の写真のようにハンマーを押してコックさせます。

ピストンとハンマーは以下のラッチによって噛み合って位置が固定されます。

3,リコイルスプリングガイド
リコイルスプリングガイドはフレームとバレルを固定する機能を持っています。

これを踏まえて発射手順事に各部品がどのように動いて機能しているかを考えて行きましょう。
初期状態(コッキングしていない状態)。

ここでのポイントはバレル、リコイルスプリングガイド、スプリングガイドはフレーム側に固定されるていることです。
スライドに本格的に荷重が掛かる前の少しだけスライドを引いた状態。

ここでのポイントはフレームに対する位置で考えるとシリンダは動かずにスライドだけが動きます。
理由としてはシリンダはスライドに対して前後に移動できるのでこれによってスライド内の部品は移動せずにスライドだけ動くことができます。そのためメインスプリングは縮まないのでスライドに掛かる荷重はリコイルスプリングが縮む力だけなのでスライドを引く力はさほど必要がない領域になっています。
このちょっとだけスライドが引けることによってフィールドストリップ分解が容易に出来るようになっています。
少しスライドを引いた状態からコッキング完了までの状態

ここではメインスプリングが縮むので相応にスライドを引く力が必要になる領域です。荷重としてはリコイルスプリングの縮む力+メインスプリングの縮む力になるのでそこそこ大きな力が必要になってます。
このまま最後までスライドを引き切るとピストンとハンマーが噛み合ってピストンの位置が固定されます。

これでピストンは後退位置で固定、メインスプリングは縮んだままの状態で保持されます。
スライドを戻している状態

ここでのポイントはシリンダのタペット部がマガジンの弾を押し出します。この動作によって給弾されます。
さらにスライドを戻すと弾はチャンバーのスロープを登ってホップパッキン内に入ります。

発射準備完了状態

ここでトリガーを引いてハンマーが戻るとピストンが解放されてメインスプリングの力で空気を圧縮し弾が押し出されて飛んで行く仕組みになっています。

これでスライドの作動メカニズムのイメージは掴めたでしょうか?
メカニズムとしては流石に長年、東京マルイさんが販売しているメカだけあって熟成されているので必要最低限の部品の構成で設計の上手さを感じます。特に一つの部品に複数の機能を持たせている設計は非常に優れた設計だと思います。
また興味深いのが電動ガンのメカニズムとほとんど同じで東京マルイさんのエアガンのメカニズムの基になっているのがよくわかります(ガスは別系統なので除く)。電動ガンはこの機構に駆動用のモーターとギアを取り付けただけにですね。
発展の順序を考えるとエアコッキングガンから電動ガンに進化したので当たり前ですが改めてみるとかなり似ているのが面白いです。
以上がエアコッキングハンドガンのスライドの作動メカニズム、発射メカニズムでした。
フレームの分解
ここからはフレームを分解していきましょう。

フレームは左右分割タイプなので左右を固定している部分を探して分解していきます。
まずはフロント部分のネジです。ここは直接、左右分割とは関係ありませんがが外しておきましょう。ちなみに本製品の分解で始めて工具を使う分解箇所です。

・ドライバーセット
安いモノでも良いのですが手頃で高品質なものだとハゼット、トネ、KTC、ベッセル辺りが良いと思います。
グリップ根元部分のネジを外します。

最後にマガジンリリースレバーを固定しているピンを外します。

・シグネット ピンポンチセット
高級ブランドではありませんが、自動車業界ではコスパが良い中級ブランドでおススメです。しかも安いです。
・イーグルフォース メンテナンスベンチブロック ハンドガン用
あるとかなり便利です。しかもハンドガン用で長モノにも十分、対応できるので重宝します。むしろ同社のM4用は個人的に必要性を感じませんでした。
・ベッセル プラスチックハンマー
安くて頑丈で長持ちします。サイズはコントロール、パワーのバランスで1ポンドがオススメです。
外したマガジンリリースレバーは裏側にスプリングも一緒に入っているので失くさないように注意しましょう。

これで左右の固定は解除されるので丁寧にフレームを分割していきます。

左右のフレームは複数のピンが圧入されているので少し力を入れるのがコツです。

これでフレームが分解できました。

思ったより部品点数が多いですね。
個人的に興味深いのがソーコムはグリップがフレーム一体でグリップパネルに錘を入れられない代わりに前側のシリアルプレートを厚くして錘にする、グリップのバックパネルの中に錘を仕込んでがんばって重量感を出しています。苦労している様子が伺えます。
実用だけを考えれば軽いほど良いのでしょうが模型的性質を強く持っている製品なのでこのような努力はありがたいです。
ここからはトリガー、ハンマーメカユニットを分解していきます。

トリガー、ハンマーユニットも左右分割タイプなので固定しているネジを外していきます。

これでユニットが分割できます。

この状態から部品を取り外して並べてみました。

ダブルアクションの割には部品点数が少なめになっています。本来はそこそこ複雑なのですがサムセーフティ、デコッキングを省略しているのでシンプルに出来ているのでしょう。
これでフレーム部品は全て分解できました。
ハンマー、トリガーのメカニズム
ここではハンマー、トリガーのメカニズムを実際の部品を使いながら解説して行きます。
全体部品のレイアウトを改めて確認していきましょう。

ここでポイントになる部品のハンマーの動きに着目しながら解説していきます。
まずスライドを引くとピストンが後退、後退したピストンはハンマーを押してハンマーが回転します。

そのままピストンがハンマーを押すと下の写真のようなメカニズムでピストンがロックされます。

この時にハンマーはシアーによって固定されます。

このメカニズムによってハンマーが固定、ピストンが固定されることによってメインのスプリングは縮んだ状態を保持できるようになっています。
この状態でトリガーを引くとトリガーバーが前進してシアーを倒します。

シアーが倒れるとハンマーが解放されてピストンのロックが解除されることによってメインスプリングが解放されます。
ダブルアクションの場合はハンマーとトリガーバーが凹凸で繋がって連動することによってハンマーが動きます(エアコッキングの場合は作動と関係なくただのギミック)。

かなりシンプルなメカニズムになっています。 ダブルアクションにもかかわらず以前に紹介したM1911よりシンプルかも知れません。
ただしM1911は実物に近い構造だったのに対しソーコムではエアコッキングガン用にかなりデフォルメされたメカニズムになっています。
最後にセーフティのメカニズムです。
セーフティはスライドリリースレバーの裏側の凸部を利用しています。

スライドリリースレバーがトリガー、ハンマーメカユニットに組まれると下の写真の位置に凸部が出てきます。

スライドリリースレバーを持ち上げると下の写真のようになりトリガーバーの前進を防ぐことによってセーフティになっています。

なかなかシンプルで賢いセーフティのメカニズムです。
説明書には”注意書きにセーフティ状態で強くトリガー引かないで下さい”と書いあるのは、この構造を見てわかる通りトリガーバーの小さな凸部だけでブロックしているので強く引く凸がもげてしまうからですね。
この部分が壊れると部品の取り寄せとここまでの分解が必要になり面倒なので注意しましょう。
まとめ

分解した全体の印象としては長年販売しているエアコッキングハンドガンだけあって熟成されたメカニズム、高い部品精度、組み立て品質で非常に優れた製品でした。
発売が2002年と古く何度も作っているはずですが金型などのメンテナンスはかなりしっかりやっているようで部品の成型はどれも非常に綺麗です。
組み立て品質もとても良く可動部にはしっかりとグリスが塗られていて抜かりない感じでした(適当に塗っている感じではない)。
個人的に凄いと思ったポイントは分解、組み立てに必要なネジが6本、ピンが一本と異常なくらい少ないことです(ネジやピンの数が少ないと組立コストにかなり効く)。これは相当、設計者は頭を捻ったのではないでしょうか。
この工夫のおかげで非常に分解、組み立てが楽で時間にしてみると分解に20分、組み立て30分で1時間以内で可能なレベルだと思います。スライド部に至っては工具なしで完全に分解できます。
この工夫に加えシンプルなメカニズムなので初めての分解、組み立て、カスタムに最適なモデルの一つなのでもし良かったらこの記事を参考に挑戦してみて下さい。分解しながらメカニズムを理解したり、カスタムの計画を練ると楽しいと思います。
以上、東京マルイ ソーコム MK23 HG エアコッキングガンの分解とメカニズム解説編でした。
・東京マルイ ソーコム MK23 HG エアコッキングハンドガン
コッキングのしやすさ、性能の高さ、最新モデルなことから同シリーズでのNo.1のおススメです。
・東京マルイ ソーコム MK23 HG スペアマガジン
26発も入るのでスペアが必要になることはほとんどないと思いますが有るとマグチェンジが楽しめるので一本くらいはあっても面白いです。
他にもエアコッキングガンのレビュー、分解、カスタムを紹介しているのでもし良かったら覗いて見て下さい。
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