ここ3年くらい前から?くらいに電動ガンのライトカスタムの定番でモーターにSBDを付けるのが定番化してきています。
FETを付ける方も多いかと思いますが手軽さやコストの観点からSBDが廃れることは無さそうです。

SBDの役割は説明書を読めば何となくわかるのですがそもそも何者なのか?逆電流を防止するなら定番のダイオードではなぜダメなのか?と疑問に思ったので調べてみました。
私が調べた感じでは一般的な回路用の詳しすぎる説明か電動ガン用の簡単な解説しかなかったのでその中間を埋めてみます。
目指すところは自分で適切なダイオードを選んで自作できるとこまでです。
興味がある方は、是非ともお付き合いください。
まずは半導体のおさらいからです(FETでも説明してますがもう一度します)。
もう知ってるよという人はSBDまでスクロールしてください。
半導体
まずは世間で何かと話題な半導体の基本を考えてみます。
半導体
一言で表すと導体(電気を通す)と絶導体(電気を通さない)の中間の特性を持つ物体です。
その半導体に物質を加えると様々な特性を持つ物体になります。例えば電流と電圧を加えると温度を下げる(ペルチェ素子)や光る(発光ダイオード)などあります。
中でも代表的なp型半導体とn型半導体をおさらいしましょう。
n型半導体は内部に自由な電子を持つ物体です。電子の移動が電流なので電気の素を持っていると言ってもいいのでしょうか。基本的には自由にうようよ動いてるので自由電子とか呼ばれます。

マイナスイオンも似たようなものですがマイナスイオンが人間の体に何の影響があるのかは何十年も疑問です。ほとんど影響はないと思いますが。
次にp型半導体は、電子が自由に移動できる道(正孔)を持っている物体です。イメージとしては穴です。

高校化学でいえば最外電子殻に電子が満杯にいるのではなく電子が不足している状態です。つまり電源に電気がある限り電子を吸い取れるため電気が流れます。
ただし自分自身が電子を持っていないため単独では電気が流れません。何故か一般的に孔(あな)で表されることが多いです。これをキャリアと呼んだりします。
基本的にはこの2種類の半導体を使って電子の動きをコントロールするダイオードができています。
ダイオード
代表的なpn型ダイオードをおさらいしましょう。
p型半導体とn型半導体を図で繋げてみます。

こいつに導線を繋いで電気を流してみます。
p型に+、n型に-を繋げます。繋げると電子は基本的に−なので+に引き付けられ孔に入りながら次々と移動していきます。

これで電気が流れます。n型の無くなった電子は、電源または電池から供給されるので無くなることはありません。
これを順方向バイアスと言います。
次にp型に-、n型に+を繋げると電子は+に引き付けられるのでp型の方に電子は行きません。
またn型の電子が全て−側に引き付けられると何も動くものはありません(電源の−とn型半導体内部の電子が釣り合う)。

これで電気が流れません。これを逆方向バイアスと呼びます。
さらに全く電子が存在しない領域(図の黄色)が新たにできてそこを空乏層と呼びます。この幅を計算できるのですが今回は省きます。
この特性を生かすと電気を流す方向を決めることができます。よって整流子(ダイオード)と呼ばれます。
SBD(ショットキーバリアダイオード)って何じゃい
pーn型ダイオードは一旦、おいといてSBDをみてみます。
SBDは金属(バリアメタルと言うらしい)とn型半導体で構成されています。

各部位の名前はどうやら金属部分をバリアメタル、その電極をアノードAと呼び、逆に半導体側の電極をカソードKと呼ぶらしいです。
ここでSBDに電極を繋いでみます。
金属に+、半導体に−を繋ぐ(順方向バイアス)
金属側に+、半導体側に−の電極を繋ぐと電子は次のような動きをします。

これを順方向バイアスと呼びます。
pーn型と同じように電子は−の電荷なので+の電極に引き寄せられ移動します。金属は基本的に導体なので電子は通れます。
これで電子が移動するので電気が流れる仕組みです(電気の流れる方向と電子の移動する方向は逆)。
当然ながら電子は+の方向にどんどん行ってしまうのですが電源から電子が供給されるので電源の電子が尽きないがぎり電気は流れます。
金属に−、半導体に+を繋ぐ(逆方向バイアス)
次に逆に金属に−、半導体に+の電極を繋げてみます。
これを逆方向バイアスと呼びます。

電子は−の電荷なので+に引き寄せられます。つまりn型半導体の+側の端に電子が全員、引き寄せられ電子の動きがなくなります(+と電子が釣り合う)。結果、電気が流れなくなります。
この時に電子が全くいなくなる領域を空乏層と呼びます。
SBDは金属の厚みや種類によって多少の特性の違いは出るものの、ここまでpーn型半導体とほぼ同じように私には思えます。
次にp-n型ダイオードとSBDを比較してみます。
p-n型ダイオードとSBDの比較:順方向バイアス
まずは順方向に電極を繋いだ場合を見比べてみましょう。
上がp-n型ダイオード、下がSBDです。

ホールの有無が重大な差になります。
SBDのメリット1:スイッチングが速い
p-n型ダイオードには、p型半導体が付いておりn型から電子が電極まで進むのにホールを伝って行きます。これが時間が少しかかるようです。
一方でSBDには金属しかついてないのでホールがありません。金属部分を素通りしていくので電極に行くまで時間がかかりません。
これがSBDの良い特性の一つで反応が速い、つまり電極がつながれば(スイッチオン)即、通電する特性です。調べると差にして数十μ秒もあるようです。
これだけ見ると何だ数十μ秒かと思われますが例えば電動ガンでセミで思いっきり連打すると秒15、6発くらい行くそうです。そうすると1発の発射時間は大体0.075秒くらいなので数十μ秒の違いは使用に影響を与える特性です。
いや、俺はそんなに連打しないよと言う人も人間の感覚はいい加減だけど繊細で0.01秒の差は多くの人が感じるレベルです。
SBDのメリット2:通電時の損失が少ない、発熱が少ない
p-n型半導体は電子がホールを頑張って通って電極に辿り着きます。
p-n型ではこの頑張りが損失になるのである程度、電圧をかけないと通電しません。これを電圧降下と呼びVFで表すようです。この時に流れる電流をIFとすると損失はVF×IF[W]で表ます。
一方でSBDはホールがなくn型半導体を遮るのは金属だけです。この金属は導体なので電子は素通りです。電子ががんばらなくても通電するので電圧降下VFが低い特性を持ちます。同様に損失VF×IF[W]も小さくなります。
この損失のエネルギーは基本的に熱に変換され大気に放出します。なので通電時はSBDのがp-n型ダイオードに比較し発熱が少ないと言えます。
p-n型ダイオードとSBDの比較:逆方向バイアス
今度は逆に電極を繋いで逆方向バイアスの特性を比較しましょう。上がp-n型ダイオードで下がSBDです。

SBDのデメリット1 :漏れる電流が比較的多い
逆に電極を繋いだ場合(逆電圧を与える)にp-n型ダイオードはまずp型半導体のホールという障壁があってされに空乏層を乗り越えないと電子は+電極に辿り着けません。それでも移動する根性のある電子がちょびっと居て電気が流れます。
それを漏れ電流IRと呼びます。
p-n型ダイオードは、漏れ電流IRが非常に小さい、つまり整流の優等生です。
一方でSBDの方は、金属(バリアメタル)と空乏層があるだけです。
金属は基本的に導体なのでスルー(メタルの種類によるが)して空乏層を突破するだけなので比較的多くの電子が+電極に辿り着きます。
つまりSBDは漏れ電流IRがp-n型に比べて多い整流素子になります。
これは究極のハイサイクル電動ガン、超流速チューンをする場合は電動ガンの発射時にバッテリーの電流がSBDに流れるのでモーターにいく電流は少し下がるのでモーターのトルクが少しだけ下がるかもしれません。
またスーパー燃費マシンにも相性は、よく無さそうです。
SBDのデメリット2:漏れ電流が多いため損失V×IRも大きい
SBDはモーターと並列に繋ぐことが多いのでモーターと同じ電圧が逆電圧として加わります。
モーターはバッテリーのマックス近くまで電気を吸い取るのでリポ7.4vだと満充電時で8.4Vかかることになります。
つまりSBDは電動ガンが稼働するたびに損失8.4V×IR[W]が発生し、この電力のほとんどは熱に変換されます。
最悪は自分の発した熱で性能が落ち漏れ電流IRが増えさらに熱が発生しての無限コンボで破壊されるようです。

pーn型ダイオードとSBDの特性比較
今度はy軸を順電流、x軸を順方向電圧としたグラフで比較します。p-n型ダイオードが青い線でSBDが赤色の線の特性になります。

SBDは順方向に電流が流れるときに電圧降下VFが小さいので損失が小さく反応が良く(数μ秒だとか)て発熱も少ない素子と言えます。
逆に逆電圧がかかっている場合は漏れ電流IRが大きいので損失も大きく発熱しやすい素子と言えます。
構造上バリアメタルしか持たないので耐逆方向電圧は他のダイオードに劣るようです。バリアメタルの材質、厚みにもよるらしいのですが大体、100V当たりが限界のようです。
SBDの特性
SBDの温度による特性の変化を見ていきます。
順方向に電気が流れる場合は以下のグラフのようになります(赤が高温時)。

限度はあるでしょうが温度が高いほど調子が良くなるという面白い特性です。
次に逆方向に電気が流れる場合です。

逆方向電圧下においては、高温度下になるほど指数関数的に漏れ電流IRが大きくなるようです。
そうすると自分の損失V×IRも増加していき熱による性能劣化の負のスパイラルに入り一気に劣化、破損が発生しそうです。
電動ガンの使用中で言えば電動ガン作動時は常に逆電圧がかかっているので漏れ電流として電気が喰われ効率が少し落ちるのと自分の熱とモーター等の外部の熱が加わって漏れ電流は大きくなり最悪では熱暴走、破損するようです。
つまり長時間でのフルオート射撃はSBDの発熱が増え効率が悪くなり最悪、SBDが熱暴走、破損する可能性が高いです。
なので少しでもグリップが暖かくなってきたら冷ました方がようさそうですね。
逆にモーターの逆起電力が発生した場合は、VFが小さいので素早く電気を通してモーターに再回収させることができます。
しかもモーターなどが超熱くなっている時ほどガンガン電気を回生してくれるようです。
漏れ電流と電圧降下特性
SBDは金属部、バリアメタルの種類によって大まかに3つのタイプに分かれるようです。大まかにタイプ別で分けると電圧降下小の漏れ電流大、標準、電圧降下大の漏れ電流小になります。
この3つを縦軸を漏れ電流IR、横軸を電圧降下VFとすると下のグラフのような関係になるようです。

それぞれの特性は次のようになります。

電動ガンで考えると黄色の高VF低IRが良いと思います。
電動ガンが作動しているときは漏れ電流IRが少ないので効率低下は最小に抑えられ、一方でモーターの逆起電力が発生した場合に反応速度は多少遅いのですが回生はちゃんとしてくれます。
ただし電圧降下VF以下の電圧状態ではスイッチに電気が流れるので多少スパークするかもしれません、VFの値次第ですが。
逆に低VF高IRは電動ガンの作動時の効率は多少、落ちるが(IRの値次第だが)モーターの逆起電力には素早くしっかりと対応して回生してくれるようです。
まとめ
今回、調べてみて分かったのがスイッチング反応速度の良さからSBDが選ばれていることが理解できました。
また本文中に記載しなかったのですがSBDはp-n型ダイオードに比べp型半導体が付いていない分、SBDのがコンパクトです(金属部分も薄い)。
これもスペースに余裕のない電動ガンが多いので良いポイントですね。
逆にデメリットは漏れ電流が多いのが気になります。
効率を追い求めるとネックになりそうなのと問題になるのは自分の漏れ電流で勝手に熱くなって負のスパイラルに入って暴走、及び破損することです。効率重視だったらFETかもしれません。
電動ガンの場合はSBDが破損しても普通に使えてしまうので破損に気づかず使い続けスイッチが焼けていたなんてことも考えられます。
FETは破損すると通電しっぱなしになって狂戦士バーサーカーのようにフルオートがずっと続くよりはかなりマシです。
また耐電圧が低いのも気になります。モーターの逆起電力はしょぼいモーターでも60Vとか簡単に出るので近頃、増えてきているハイパフォーマンス系モーターの逆起電力はかなりヤバイ領域に突入する気がします(SBDの耐電圧は100V程度)
よってSBD素子のタイプをお持ちの電動ガンのスペック、プレイスタイルに合うものをしっかり選んでくれるとトラブルが減るかと思います。
とにかくなんでもいいから電動ガン用のモノを買っておけば大丈夫と言う代物では無さそうです。
次回はSBDの実装回路を考えてみます。

また他に使える整流素子を探してみます。バリスタなんかいけそうな気がする。
また次のカスタム考察シリーズは電動ガンのモーターを考える(DCモーター編)をやりたいと思います。その先には話題のブラシレスモーターも解説したいです。これがわからないと逆起電力が計算できないので頑張りたいと思います。
個人的なお勧めで私はエアソフト本体やパーツ関連の多くをアマゾンのプライム会員に入って購入しています。
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