さて前回までで基本的な物体の変形はほぼ説明した。
今までは一様な(同じ形状)断面での応力や変形を説明してきたが今回は断面の形状が急激に変化する場合の応力の発生を説明する。
この辺は厳密に言えば理論があるのだろうがほとんど実験で求めた式を扱う。なので式の証明とか意味とかの説明はほぼない。式を紹介するだけだ。
ここで重要なのがどのような形状変化をさせるとどのくらい応力が増加するのか感覚を養うことが重要である。
なので形状と応力の関係を掴んでおいて欲しい。
材料力学的な説明を始める前に“応力集中ってなんとなくどんなことなのか?“という概念的な説明は次にのリンクで説明しているので良かったら覗いて見てほしい。
では材料力学の応力集中を説明する。
応力集中
今まではただの丸棒や断面が四角で続くはりなどを考えてきたが今回は、途中で断面形状が変化する場合を考えてみる。
例えば次のような棒や板などが代表的だ。棒はo-リングなどを入れるために溝があったり、板は軽量化のためやネジの締め付けのための穴や長穴が空いていたりする。
このような断面形状変化を持つ場合にどのように応力が変化するのか考えていく。
応力集中
ではいつも通り例題を考えていく。
なかなか想像しづらいのだが幅、長さが無限の板が存在しており、中央に半径aの穴が空いている。
座標は図の縦がy軸で横軸がxで中央を0とする。その板に縦方向に一様な応力σ0が発生している。
このような穴が空いているとy軸が0での断面での応力は次の式で表される。(ほぼ実験式)
$ σy=σ0(1+\frac{a^2}{2x^2}+\frac{3a^4}{2x^4}) $
ここでσyが最大になる時は式よりx=aの時でその値は
$ σy=3σ0 $
となる。そう、円の縁の応力が一番高くなり円から離れていくほど応力はσ0に近づく。
このように形状によって応力が高くなる現象を応力集中と呼ぶ。
ここで応力集中の度合いを示すために基準応力σn(断面形状変化がない応力)とし最大応力をσmaxとおいて次に式で表す。
$ α=\frac{σmax}{σn} $
とし、このαを応力集中係数、形状係数と呼ぶ。
この基準応力σnの取り方は実際には難しいのだがこの例ではσ0を基準とすると
$ α=\frac{3σ0}{σ0}=3 $
となる。
ここで応力集中係数3は他の断面変化による応力集中の目安となる数字になるので覚えておいてほしい。
たまたまなのか形状係数が3になることが多いように感じる。
よって雑な検討の時は3倍で考えることがある。
肉抜き穴が楕円の場合
次に先程の例題から円の穴を楕円にした場合を考えてみる。
楕円の設定は、横の長さを2a、縦の長さを2bとし曲率半径をρ(円の曲がり具合、$ ρ=\frac{b^2}{a} $)とする。
この場合の座標y=0の断面の応力は次の式で表される。
$ σmax=(1+2\sqrt{\frac{a}{ρ} })σ0 $
ここでσ0を基準の応力にすれば形状係数αは
$ α=1+2\sqrt{\frac{a}{ρ} } $
ここで大切なのは曲率半径ρが小さい、曲がり具合が急だと応力はどんどん高くなる。
逆に曲がり具合が緩やかだと応力は下がる。曲率半径がaだと円と同じ3になる。
これは重要なことで形状変化が急になればなるほど応力は集中するのだ。
なのでなだらかに形状を変化させる設計をすることが望ましい。
また耐久テストなどでテスト品が破損した場合に破壊の起点はこのような急激な断面変化をしている箇所が多いので破片を探すときによく注意して見つけよう。
次に実際の設計でよく出くわす断面形状の変化と形状係数の関係をいくつか紹介する。
代表的な断面変化と応力集中係数
板の中央に穴が空いている場合
幅が2b、厚さtの板、板の長さは穴より十分に大きければ良いに半径aの穴が空いている。その板に引っ張り荷重Pが加わると応力集中係数は次のようになる。
先程と同じで円が小さいと形状係数は大きくなり、逆は小さくなる。
ここで注意なのだがどんなに円が大きくても形状係数は2より大きいことである。
つまり、どれだけなだらかな形状にしても断面が変化するのであれば応力集中は避けられない。
しかし機械設計では様々な形状の断面が必要なので如何に形状係数を下げるのかが勝負になる。
ちなみにこのような穴が空いている形状は機械設計ではボルト穴やピンの穴などいくらでもあるので注意しよう。
板に切り欠きがある場合
次は先程と同じ板(幅が2b)の両端に半円と長穴のの切り欠きがある場合をそれぞれ考えてみる。
図の左側は、半円切り欠きで円の半径をaとする。右側は長穴切り欠きで端から円が始まるまでの距離をh、円の半径をr、お互いの切り欠き円の最短距離を2aとする。
ここで左の図の基準応力を$ σ0=\frac{P}{2(b-a)t} $とし右の図では$ σ0=\frac{P}{2at} $とすると形状係数αは次の図のような変化をする。
この切り欠き形状も説明してきた中央に円の穴がある板と似た傾向を持っている。
半円の切り欠き形状では板の幅2bに対し円の半径aが十分に小さければ形状係数は3.07(ほぼ3)になり半径aが大きくなる、つまり形状変化がなだらかになるに従って形状係数も下がる。
長穴切り欠きは切り欠きの深さhが深くなるかつ円の半径が小さいと最高で形状係数は6にもなる。ただし深さhが浅く形状変化量の逆数b/aが大きくなれば急激に形状係数は小さくなる。
つまりいずれにせよなだらかにせよということだ。
板でこのような形状を設計することはあまりないが軸などでは溝として頻繁に使用する形状だ。O-リング、位置決めなどたくさん使うので注意しよう。
軸に溝がある場合
では実際に軸に溝がある場合を考えてみる。
直径Dに軸に任意の位置に半径rの半円溝が一周ぐるっとあって溝の底の直径をdとした場合にトルクTで捻る、曲げモーメントMで曲げる、荷重Pで引っ張っってみよう。
この軸でも板に切り欠きがある場合と形状係数の変化は似ていて捻る場合は最小で形状係数は2で引っ張り、曲げに関しては3になる。
当然、板の切り欠き穴と同じように溝に深さがある場合は深さと円の半径に応じて形状係数もどんどん大きくなる。
機械においては軸にはたくさんの溝が必要になるので注意しよう。基本的には形状係数がねじりで2である最小になるように設計しよう。
もし形状係数が大きくなるようであれば仕組み自体を変える必要がある。
例えば圧力が強くて気密のために大きなOーリングになってしまう場合はオイルシールに変えたり位置決め溝が深くなるようであればつば形状で位置ぎめするなど腕の見せ所でもある。
特殊な応力集中と応力集中を避けるテクニック
ここまでの説明を理解し設計を進めたのに何故か応力集中してしまったということが稀にある。
表面粗さと応力集中
それは何が起きているかというと表面粗さが大きすぎて粗さ形状で応力が集中することがある。灰色の部分が部材でギザギザが表面の形状。
例えば表面粗さが最大高さ(Rz)で100とすると100μの切り欠き、つまり0.1mmの切り欠きがあるのと同じになり表面の粗さの谷の部分から亀裂が進展することがある。
筆者の専門分野であるエンジンだと強大な力を受け止めるピストンのピンやクランクのピンなどで実際に表面の粗さ形状から亀裂が入りテストで壊したことがある。勿論、重さが性能に直結する部分なので強度はギリギリで設計するので少しでも応力集中すると壊れる。
対応は表面をなだらかにするために磨きを入れてピカピカにした。
このように大きな力、例えば衝撃に近い荷重を受ける部品、部位は、形状だけでなく表面粗さにも注意しよう。
逃げ溝
応力集中を回避するテクニックの一つである逃げ溝を紹介する。
いつも通り例題を考える。例えば駆動側が円形の凹形状を持って廻り、被駆動側が凸の形状で力を受け廻される伝達機構や単純に穴の空いた壁にツバのある軸を通す場合を考えてみよう。
この時に被駆動側の凸の根元のR形状(円のカケラ)や軸のツバの根元のR形状はそれぞれ駆動側、壁のR形状より小さくないと干渉して組めない。
でもRがあまりにも小さいと応力集中が発生して破損する。
このような場合は逃げ溝(アンダーカット)を付ける。
この逃げ溝をつければなだらかな形状で駆動側のRや壁のRと干渉せずに組める。さらに軸はどうせ旋盤で加工するのでこの形状だとほとんどコストアップしない。
このようにして応力集中を回避する。
ただしあまりにも大きい逃げ溝を付けると肉厚が薄くなったり軸の径が小さくなるのでほどほどにだ。
上手なRの付け方
今度は単純なI字の形をした構造物を引っ張る場合を考えてみよう。
ある程度の設計者は応力集中を知っているのでなるべく大きなRを付けたがる。またRが大きいと成型性も良くなるのだ。
例えば次の図のような一つRをI字構造に付けたとする。
これが一見、良さそうに見えるのだが強い引っ張り荷重がかかるとR1.5の先端が応力集中して破壊の起点になることがある。
そこでどう対応するのかというと今までの説明とは、逆にRを小さくしてIの中央の柱の部分に短い直線をつくる。
このようにすると形状がなだらかになり応力集中を回避できる。さらには弱冠の軽量化もでき良い形状になる。
またこのような形状を持っている部品は金型で製作することが多いのでコストも変化なしだ。
欠点は図面指示がめんどくさくなるだけだ。
これらの小さな工夫の積み重ねが良い製品に繋がってくる。
まあ3つほどテクニックを紹介したが臨機応変に対応することが大切だ。
まとめ
では応力集中をまとめる。
・部材の断面形状が急激に変化すると応力が高くなりそれを応力集中と呼ぶ
・応力集中の度合いを示す定義に応力集中係数、形状係数αがあり、発生する最大応力から基準応力を割ることで値が算出される。
・応力集中は肉抜き穴や切り欠き部で発生し多くの場合で形状係数3程度のことが多い
・軸の溝の応力集中は最低で形状係数は3程度になる。
・断面形状変化は形状係数がミニマムになるように設計する。
・表面が粗いと応力集中が発生することがあるので注意すること。
・応力集中を避けるために逃げ溝を付けたりやRの付け方を工夫すること。
実際の応力値は説明してきたような形状係数を使って求めることは今ではほとんどない。シミレーション(CAE)で求めてしまうのだ。
ただしこの特性を知らないとレイアウトやスケッチの段階で良い検討ができないので理解してほしい。
まあ、めんどくさいがこのような小さな気遣いと小さな工夫の積み重ねが安くて良い製品に繋がるのだ。
このような基本ができないと流行りのイノベーションとかはまず無理だろう。
決して蔑ろにはしてはいけないことである。
次回からは、実際に破損、強度に理論ついて説明する。
最初は応力ー歪み線図を含めたおさらい+αになるがとても大切なので着いてきて欲しい。
基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。
もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。
はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。
またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。
多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。
さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。
しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。
特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。
また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。
やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。
私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。
折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。
コメント
コメント一覧 (23件)
マテリアルズインフォマティクスの専門家で、ダイセルイノベーションパークの久保田邦親博士(工学)の話によれば世間でいう4層以上の多層ニューラルネットワークだけの説明はディープラーニングの説明は片手落ちで、ドロップアウトという設定確率に沿ってニューロンを切断することで求解速度が高まったという。もともとどんなプログラミングも数学を基礎としているので例えば、人工知能というものの起源をパーセプトロンに求めるが、関数を継ぎ足すという視点(関数接合論)でながめると材料力学の長い亀裂の応力集中係数の求め方にその発祥があるとも。なかなか奥が深いものだ。
DX教育担当様
コメントありがとうございます。(かなり遅くなり申し訳ありません)
ディープランニングに関してはさほど知識がないのですがおしゃっていることの意味はわかります。
材料力学の応力集中に関してはマクロに考える際には記事内の形状係数を使うと思います。
しかしながら昨今の発展したコンピューター、シミレーションソフト(CAE)を使えば形状に対して応力集中に特殊な配慮しなくてもかなり正確な計算ができてしまいます。計算可能な理由としては形状を離散化(点群)させてそれらの点を微分方程式で繋いで全ての関係性を解くので求まります。
おそらく離散化と離散したデータを繋ぐ関数の立て方がおしゃっている人工知能の考え方に似ているのではと思います。
また工学系(特に機械分野)では数学と真面目に向き合う人は少ないのですが、個人的には多くの技術の基礎が数学なので真面目に取り組むとより高みに行ける気がします。
いずれ本ブログでも実践的な数学講座を開きたいと思います。
ダイセルでマテリアルズインフォマティクスを講義なさっている久保田邦親博士(工学)の材料物理数学再武装は結構おもしろい。ニューラルネットワーク(ディーブラーニング)の歴史はパーセプトロン(第2式)が原点とする向きが多いいがその中に出てくる関数接合論第1式をの歴史をたどれば深い切欠きの応力集中計算にたどり着くという。これは破壊力学登場以前からある流れであるとか。
サステナブルフリクション様
コメントありがとうございます。(かなり遅くなり申し訳ありません)
材料物理数学再武装論、読んでみます。
応力集中や様々なコンピューターサイエンスも個人的に数多の学問の大元は数学だと思うので数学の理解が重要だと思います。日本の教育でサイエンスの源である数学にもうちょっと力を入れてほしいなと思います。
SLD-MAGICがトヨタの水素エンジン車の部品に使われているってしってる?あとさあ、冷間ハイテン成形の骨格部品金型、それからえーと、ロボット関係の減速機、半導体の真空装置関係、ギアポンプ、とにかく先端分野で応用範囲のひろい高性能特殊鋼なんだって。
エキソエレクトロン様
コメントありがとうございます。
SLDーMAGICの材料自体の噂は耳にしていましたがトヨタの水素エンジンで使われているのは知りませんでした(情報、ありがとうございます)。
コメントを頂く前まではSLDーMAGICはSKD11(工具鋼)の高級バージョンぐらいの認識でしたが改めて調べるとノーベル賞級の発明だと思いました。
理由としてはこの材料はトライポロジーの新理論CCSC(この理論がノーベル賞級)で開発されているからです。
私のような機械工学、エンジン設計屋だと基本的にトライポロジーで利用する理論はEHL(弾性流体潤滑理論)になります。この理論は材料の化学的性質はほとんど考慮せずに物質の形状、流体の粘土、滑り速度で構成されていて割と簡単かつ簡潔な式になります。
なので数学、化学の専門家でない機械エンジニアはEHL理論に頭が支配されています(なのでDLCやPVDなどの表面処理に走る)。
一方でSLDーMAGICの理論CCSCは化学現象も入れた理論なので従来とはレベルが全く異なる次元だと思います。
博士のその前におられた日立金属、プロテリアルに変わったらしいですね。なるほど数学って大事でボールオンディスクなんかの応力集中はヘルツ応力で算出しますからね。
バイオメカニクス様
コメントありがとうございます。
博士が日立金属からプロテリアルに移ったのは昇進っぽいですね。プロテリアルは日立の100%持ち株会社なので役員待遇での移動だと思います。
数学はおっしゃる通りとても大切だと思います。材力だけでなく物理現象のほとんどが微分方程式で表されるので式を立てる、解く、解のチェックの全てにおいて数学がわかることが前提だと思います。
ボールオンディスクに関しては曲面と平面の接触なので典型的なヘルツ応力(ヘルツ面圧)を適用するパターンですね。さらに耐熱摩耗計算に発展させるとヘルツ応力で算出した面圧P(Pa)と物体同士の滑り速度V(m/s)を掛けたPV値で判断します。
ただし個人的な経験則としてヘルツ応力はマクロに見て計算する場合は使っても良いのですがミクロに物体の変形、接触面を見ると値が異なることが多いので見極めが重要だと思います。
最近では自動車の冷間のハイテン成形プレス技術でGPa越えが相次いで報告されていますね。翻って考えてみるとやはり、プロテリアル(旧日立金属)製のマルテンサイト鋼の頂点に君臨する高性能冷間ダイス鋼SLD-MAGICの登場がその突破口になった感じがしますね。今ではよく聞く人工知能技術(ニューラルネットワーク)を使ったCAE合金設計を行い、熱力学的状態図解析によって自己潤滑性を付与したことが功を奏した話は業界で特に名古屋では有名ですからね。軸受、歯車、圧延ロール、減速機、摺動機械部品の基本的な摩擦係数にかかわるはなしがこうだからCAE技術もさらなる可能性に満ち溢れているということでしょうね。
タコツボ組織横串力様
コメントありがとうございます。
合金自体をCAEで設計したことはないのでその分野は知識があまりありません(合金設計用のCAE自体は存在するのでしょうか?)。
ただ一般的なCAEはマルチフィジックス(複数分野の力学計算を同時に行う)がかなり進んで来ているように感じます。またAIも駆使し最適解が得られるパラメーター設定も進んでいます。
これらに加え過去のCAE計算内容(形状、パラメーター設定、結果)をディープラーニングでAIに覚えさせれば日常的に使用する機械要素の形状選択はCAEを行うまでもなくAIが最適形状を教えてくれる時代が遠くないような気がします。
さらに技術が進めばCAE検討の要否判断から要の場合は勝手にAIが最適な条件でCAEを行い解を提示する未来も見えます。
そんな時代に技術者に必要な能力は細かい仕様検討、技術計算だけではなくどんな機械、どんなコンセプトのモノが市場に受け入れられるかを考える事が重要な気がします(製品設計、検討はAIができる)。
そうですね。そこで着目されるのがCCSCモデルこの摩擦摺動モード毎、あるいは摺動材料の組み合わせでそれぞれ存在するという神話をこの境界潤滑理論は提示している。極圧添加剤までもだ。そうすることによって、部品種、材料種ごとに縦割りだった世界にボールオンディスクで実用性能に対し、横串力を提示している点が、市場に受け入れられているポイントの一つなんじゃないのかなと思います。
博士がSNSでむかしいっていた応力集中から応力拡大係数を極座標変換で導出する過程がのっている固体力学の基礎 国尾武著 を、図書館で見つけました。G.R.Irwinの論文はまだ入手していませんが。
工具鋼開発の最前線、金型用先端材料のマルチスケール合金設計ですね。
品質工学ではいくら考えても答えはでませんね。ボールオンディスクのバラツキを抑える方法。それはパラフィン油の微量精密吸着(貧潤滑)だったとは。
ラマン分光で有機分析をするCCSCモデルの話ですね。
マルテンサイトやトライボロジー最新話はためになります。
トライボフィルムハガレン様
コメントありがとうございます。
マルテンサイト等の鋼の結晶構造はサイトでこれから説明させていただくのでお待ちください。
マルテンサイトってBCT構造でBCCのキュービックが少し伸びた長方形してるんでしょ?そのひずみがラスとかブロックとかパケットというマルテンサイト組織の下部構造を決定しベインの関係とかの方位解析でいろいろ研究されているやつ。あと固溶炭素量が0.6mass%をこえるレンズ状の構造になってもろくなったり残留オーステナイトが増えたりする(本来残留オーステナイトは靭性を向上させるが、それ以上にレンズ状になることによる脆化が上回る)。あとイプシロンマルテンサイトとかバタフライマルテンサイトなんてものもあるらしいけど実用鋼ではあまり使われない。
グローバルジャーナル軸受様
コメントありがとうございます&返信が遅くなり申し訳ありません。
マルテンサイトはおっしゃるとおり針状の長く伸びた結晶構造です。ものすごく硬いのですがその分だけ脆く歪みも多く焼き鈍しをしないとなかなかうまく使えません。
イプシロンマルテンサイトやバタフライマルテンサイトなどの高度な結晶は学会などで見たことはありますが量産で実用と考えるとまだまだ難しい気がします。
博士の材料力学の論文を見つけました。日本刀の応力解析で断面二次モーメントの計算がよくわかるものです。蛇足ながら紹介します。
http://www.nihontomessageboard.com/articles/Study_of_Japanese_sword_from_a_viewpoint_of_steel_strength.pdf
熱処理関係様
コメントありがとうございます。また返信が遅くなり申し訳ありません。
応力解析、断面二次モーメントに限らず金属材料(主に炭素鋼)の結晶構造のも記載されていて素晴らしいと思います。
特にマルテンサイトーマルテンサイト単結晶、パーライトの共晶、フェライトの共晶の写真は素晴らしいと思います。
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズムにんげんの考えることを模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのも多神教的発想なのでは。
日本の独創リベラルアーツ哲学様
コメントありがとうございます&返信が遅くなりもしわけありません。
哲学的なことは分かりませんがこれからは過去の研究者の経験、勘、才能を起点とする理論構築&駆動型ではなく膨大なデータに基づく統計学的処理から関係性を見出し理論硬構築することがメインの時代になっていくことは間違い無いでしょう。