前回でMOSFETの基本的な仕組みを考えたので今回は簡単な実装について考えてみましょう。
まずは前回の仕組みを踏まえた上でMOSFETのスペックの見方を考えていきます。
MOSFETのスペックの見方
まずは基本の項目を挙げてみます。
最大定格(設定温度)
・Vds:ドレインーソース間電圧
・Vgd:ゲート-ドレイン間電圧
・Id:ドレイン電流
・Idm:ドレインパルス電流
・Pd:許容損失
・Vgs:ゲート閾値(しきいち)電圧
MOSFETの図で各パラメーターを表すと次のようになると思います。
まず最大定格のスペックなので各項目の値は絶対に超えてはいけない値になると思います。基本的に通常使う場合はこれに安全率で割ります。
私の専門の機械では用途や部位によって異なるのですが安全率は1.2〜1.5が普通で攻めるときは1.1で行く場合もあります。1.5が無難だと思います。
これらを踏まえて各パラメーターを個別にみていきます。
・Vds:ドレインーソース間電圧
MOSFETが許容できる電圧だと思います。電動ガンで例えるとモーターにかけられる最大電圧です。またはバッテリーの最大電圧だと思います。これを超えると壊れる確率が高い気がします。
・Vgd:ゲートードレイン間電圧
ゲートとドレインの許容できる最大電圧だと思います。“ゲートの電圧は下げたい、ドレインの電圧は上げたい時にその差には限界があるよ“と言うことだと思います。なのでゲート抵抗をうまく選ばないと壊れると思います。
・Id:ドレイン電流
MOSFET内を通せる最大電流量だと思います。これは負荷が増加しモーターの要求電力が増えれば要求電流も増加するはずです。その要求電流がドレイン電流を超えると壊れます。
・Idm:ドレインパルス電流
ドレインに一瞬だけかかる電流の許容量だと思います。一瞬でもこれを超えると壊れると思います。たぶんIdm(パルス電流)>Id(定常電流)だと思います。
・Pd:許容損失
MOSFETで許容できる電力W(ワット)のことです。ワットは電圧×電流です。つまり最大許容電圧と最大許容電流が同時に発揮できる訳ではないと言うことです。これは気をつけないとヤバそうです。
・Vgs:ゲート閾値(しきいち)電圧
これがキモでゲートに与える電圧がこれを超えないとD-Sに電気が流れません。Vgsギリギリにゲート抵抗を設定すると敏感な回路で外乱などでゲートにかかる電圧がちょっとでも変化するとD-S間で電気が流れたり流れなかったり(機械で言うところのチャタリングかな?)して狙い通りにならなさそうです。
これらのパラメーターは安全率1.2倍くらいに設定すれば良いかもしれません。
後は温度ですね。これは重要です。調べると150℃くらいでヤバイみたいです。
半田ごての温度が種類によりますが大体300〜400℃くらいが多いと思うので実装するときは気をつけないとすぐ壊れます。
私は今までで6個中2個ほど壊しました。
これらを踏まえて使う電源、モーター、負荷からFETを選び定格を超えない範囲かつゲート閾値電圧を超える電圧でゲート抵抗、ゲートーソース間抵抗を決めれば使えるはずです。
これらを使用対象の回路の電圧、電流を考えてMOSFETを選んで実装すれば良いはずです。
しかしながら本ブログでは電動ガンが主な対象、つまりDCモーター(直流モーター)回路を利用したアナログ機械がメインになります。
アナログ機械は状況、環境によって負荷が変化します。それに伴ってDCモーターの負荷、消費電力も大きく変化するのでモーターやバッテリーのスペックだけで回路内に発生する電圧、電流は単純に求めるのは難しいと思います。
なのでMOSFETの実装に入る前に簡単なDCモーター(直流モーター)を使用する電気回路の電気特性を考えてみます(電動ガンの電気回路)。
DCモーターを使う電気回路の電気特性
ではDCモーターを作動させる超シンプルな電気回路を書いてみます。
この回路でスイッチを入れるとモーターに電気(電流)が流れてモーターが周ります。
ここでモーターに流れる電気は駆動メカの負荷で変化します(勿論、バッテリーの電力の容量内の範囲)。
なのでメカの負荷が一定と考えた場合の横軸を時間、縦軸を電圧としてグラフにしてみます。
メカの負荷が一定ならモーターの負荷も一定、つまりモーターが発生する電圧も基本的に一定になります(DCモーターの詳細は別で詳しく説明する予定)。
次にメカの負荷が一定でない場合、具体的には電動ガンのメカのようなスプリングを縮ませる、解放させるようなモーターの負荷が一定ではない場合を考えてみます。
メカボの負荷によってモーターの負荷も変化するので電圧は複雑な波になります。
実際にはメカの状態によって負荷は複雑に変化するのに伴い実際の電圧波形もかなり複雑になります。
さらにメカの特徴として始動時(動き始め)は摩擦変化などが激しいので負荷も瞬間的に大きくなるので回路のスイッチをオンにした瞬間の電圧は瞬間的にかなり大きくなります(スパイク電圧と呼ぶらしい、電動ガンクラスのモーターだと電圧100V以上行くかも)。
このような電圧変化がある回路に耐電圧を考慮してMOSFETを組んでも瞬間的に発生する大電圧でダメージを受ける恐れがあります(最悪は1発で壊れる)。
電圧ー時間グラフでのスパイク電圧によるMOSFETへのダメージ
またSBDの回路説明で紹介した回路のスイッチオフ時に慣性で回っているモーターの自己発電(逆起電流、逆起電圧)によってMOSFETに逆方向の過大な電圧が掛かると壊れます。
逆起電圧によるMOSFETへのダメージのイメージ
実際にダメージを受け続けてMOSFETが壊れると次の図のような状態になります。
物理スイッチは全く機能せずに回路内に電気が流れてメカが作動するので電動ガンでは非常に危険な状態になります(電源を取り除くしかない)。
なので安全のためにさらに高い耐電圧の高いMOSFETを求めていくとMOSFETが大きくなる、価格が高くなるなど実用性が低くなります。
なので機械専門(大学でやった制御工学と会社で齧った程度)の私が単純で安い電子部品を使って瞬間的に大きく変動する電圧に対応する回路を考えていきます。
MOSFETを使ったスイッチ保護回路
まずは前回で紹介したDCモーターへMOSFETを利用した回路です。
この回路にDCモーターの特性から瞬間的に発生する大きな電圧(スパイク電圧)からMOSFETを保護する抵抗とコンデンサを付けることをか考えてみます。
これはスナバ回路とも呼ばれるらしくRC回路単体としては次のような時間ー電圧特性を示します。
コンデンサの電気を溜める性質を利用してスイッチオン時の立ち上がりをなだらかにしています。その代わりコンデンサが電荷を溜めているのでスイッチオフ時に溜まった電気が流れ出ます(計算式と計算したグラフを載せても良いのですがまずはイメージ)。
RCの役割を私が得意な機械に例えると急激な振動を吸収するサスペンションに似ている気がします。
この特性を利用してMOSFETに並列に繋いでDーS間に流れる電圧変化をなだらかになると考えてみました。
保護回路を付けたMOSFETにかかる電圧イメージです。
こんな感じで瞬間的な電圧をなだらかにしてMOSFETへのダメージが減るのでは?と考えてみました。電圧特性がなだらかになる代わりに応答性は悪くなると思います。
実際にコンデンサ、抵抗の具体的な値や回路全体の応答性を決めるにはしっかりと計算し実機での実測データを取らないと難しいと思いますがまずはイメージで考えてみました。
DCモーターによる逆起電力対策
次にスイッチオフ時にDCモーターが発生する逆起電力対策を考えてみます。
これは単純に整流ダイオード(SBD)を使って逆方向に流れる電気をバイパスさせてみます。
SBDのような整流ダイオードの原理の記事はこちらです。良かったら覗いて見て下さい。
この状態で逆起電力が流れた場合にMOSFETを迂回してダイオードの方向に電気が流れると思います。またスパイク電圧対策につけたコンデンサが逆起電力の瞬間的に発生させる過大な電圧(サージ電圧?)をなだらかにすることも期待できそうです。
まとめるとこんな感じで次のような回路を考えてみました。
調べてみると次の図のようなスナバ回路を設置することもあるようですが個人的にモーター含めた回路につけているので応答性が悪そうに見えます。また電動ガンだと物理的なレイアウト上の問題で実装が難しそうです。
執筆時点では実験環境がないのでイメージだけですが近いうちにArduino(安い汎用マイコン)と回路ボードと電子部品を買って自分で組んで試してみたいと思います(オシロも買って実測値を測定しみる)。
まとめとおまけ
今回は実際にMOSFETを実装するために考えるべき点を個人的にまとめてみました。
私は機械設計者なので分野外ですが耐久面を重視して考えた回路です(コスト、効率は度外視です)。
本当なら式を立てて計算し具体的な数字を出す、グラフを作る、制御のブロック線図を書いて応答性等の特性を見るなどの検討を実施しないと決められないのでしょうがまずはイメージを掴むのを目的なのでこれで良しとします。
ちなみにMOSFETに限らずスパイク電圧みたいな瞬間的に発生する電力をなだらかにするのにコンデンサを使った保護回路は有効なので自作する場合は設置を考えると良いと思います(応答性、効率は下がります)。
次回は、実際のMOSFETを見ながら電動ガンへの取り付けてみます。
おまけ
SBDでの回路を以前に記事にしました。
よくよく考えるとDCモーターが発生する逆起電力は瞬間的にかなり大きいのでSBD回路にも保護回路(スナバ回路)を付けた方が安全な気がします。
以上、お付き合いありがとうございました。
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