前回の機械材料編で化学と機械材料の違い、機械材料の主な分類の前半を紹介した。
今回は、前回の分類で説明が残っていた部分から始める。
その前に軽く前回の復習をすると化学と機械材料の一番の大きな違いは、“材料をどうやって人間が利用できるのかを考える学問“であることだった。
化学の場合だと人間の材料の利用の仕方より物質の科学的な特性や発生する事象をメインに学ぶことに対し機械材料は、より我々に身近なものとして材料を学んでいくことになる。
分類に関する復習としては、化学で学ぶ周期表のような物理的、化学的性質に近い順に習って並べているが機械材料の分類では、人間が材料を利用するために便利なように分類している。
よってまずは、大まかな分類としては金属と非金属に分けられる。
金属の中でも、人間が利用してきた歴史的経緯、ノウハウ量に従って鉄と非鉄系と分けていることを説明した。
ここまでが復習で、ここからが前回からの続きで非金属に分類される主な材料を紹介していく。
機械材料の非金属
では、非金属材料の中の分類を見ていこう。
図のように非金属材料は、大きく2つに分けられ有機材料と無機材料に分けられるのだ。
まあ、いきなり“有機材料、無機材料と言われてもなんのことかよくわからん“と言うところが正直なところだと思うので少し各材料をわかりやすく説明していこう。
有機材料
有機材料の意味は、筆者が知るところでは明確な定義づけは知らないが“材料を構成している物質が主に炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)であるものを有機材料“と呼んでいる。
我々の身近な材料で言えば誰でも知っているプラスチックやゴムが代表的な材料になる。
筆者の感覚で申し訳ないが簡単な大まかな分類の考え方としては、石油からできている材料は、ずべて有機材料と考えてもらって構わないと思う。
そもそも石油自体が、次の図で表す炭化水素の塊なので有機材料の定義である炭素(C)、水素(H)そのものであるのだ。
社会で習うと思うが地球から採掘される石油は、様々な化学結合、不純物などが混ざった状態で採れるので蒸留という処理を得て人間が利用しやすい物質のガソリン、軽油、ナフサなどに変えて使っている。
この中のナフサを原料として様々な樹脂や合成ゴムが作られている。
他の有機材料の例は、筆者はあまり詳しくないが生物の身体なども有機材料(タンパク質とか)に分類される。
ここで多くの人が知っていると思うが筆者が面白いと思った有機材料の学問の夜明けの小話を紹介しよう。
有機材料の夜明け
まず有機材料の概念や定義は大昔からあって西暦1800年頃までは、生命の謎の力によって生成される物質であり人工的に生成することは、不可能だと考えられていた。
もともと人類は、大昔から材料にかなりの興味を持っていたようで古代から錬金術という技術を研究していた(有史以来、ずーっとある)。
錬金術の最終目標は、いくつかあるが代表的なものだとその辺の転がっている石とか土などの平凡な材料を不思議な術で貴重で効果である金に変えることやホムンクルスのような人工生命体を作ることを目標としてきた。
しかしながら古代からおおよそ2000年以上に渡って多くの天才たち(有名な人だとニュートンなど)が取り組んできたにも関わらず、金もホムンクルスも作れる気配が全く無かったので作成不可能であると考えるのが常識となっていた。
20世紀にわかるのだが目標の一つである金(Au)は、原子だったので通常の化学処理では、絶対に作成できないことがわかる(超大型加速器などで陽子とか中性子同士をぶつけてから同位体をベータ崩壊させればできる)。
もう一方の目標であるホムンクルスのような物質に関しては、金とは違い19世紀初頭に世紀の大発見が偶然によってもたらされた。
それが西暦1828年にドイツのフリードヒ・ヴェーラーが偶然にも有機物を人工的に作り出したのだ。
嘘か本当か筆者は、知らないが逸話として次のような話を聞いている。
ヴィーラーが28歳の頃、留学先の大学の実験の課題でシアン酸アンモニウムを取り扱う実験を行っていたがあまりの疲労でシアン酸アンモニウムを入れていたフラスコを暖房の上に置きっぱなしにして寝てしまった。
朝にヴィーラーが起きたら狙いとは別の白くてネバネバした変な物質ができていたのを発見した。
そこでヴィーラーのすごいのがそれを唯の失敗として処理したのではなく、何ができたのか調べてみたら有機物である尿素だったのである。
これが有機化学の夜明けである。
尿素というと多くの人は、おしっこの成分のイメージが強いかもしれないが肌の保湿クリームや有機化学肥料などに使われていて今でも第一線で活躍している立派な有機物質である。
科学、技術はこのようなクリティカルな発見があると指数関数的に発展し有機材料も爆発的に発展し現代では、有機材料を利用しない生活は不可能なレベルまで発展した。
このように失敗は自ら進んで行うものではないが、失敗した時にどのように対応するかでその後が大きく変化する典型例の一つである。
話は、かなり逸れてしまったが歴史と科学、技術を組み合わせて学ぶと面白うのと理解が進むと思うので筆者が知っていることに関しては、今後も小話を挟みながら説明していく。
後に機械でよく使う有機材料のプラスチック、ゴムは詳しく説明する。
次に、無機材料の説明をしよう。
無機材料
無機材料の意味を説明していくがこの定義がわかりづらくてかなりひどい。
化学の定義では、“金属を除く無機非金属物質から構成されている材料“とされ、わかりやすいとされている説明でも“有機材料と金属を除く物質“とある。
筆者もわかりやすい説明ができる自信がないが“生物由来以外のその辺に転がっているあり溢れた物質で構成されている材料“が無機材料である。
例えばその辺に転がっている石、土、砂利などの多くはケイ素(Si)で構成されており立派な無機材料である。
その辺に転がっている土や砂利を水などの物質と混ぜてできた材料は、皆が知っている建築材のセメントやレンガなどになる。
道具として身近なものは、陶器(瀬戸物)に使われているセラミックだろう。これは、古代より器として利用されておりかなり身近な無機材料だ。
他にも高価な装飾品でありダイヤモンド、ルビー、サファイア、ガラス細工なんかも無機材料だ。
これらは、原子である金と異なり無機材料なので割と簡単に人工的に作ることができる。
ダイヤモンドなんかは、唯の炭素(C)の変わった配列をした物質だし、ルビーやサファイアなんかの主な構成物質は、アルミナ若しくは酸化アルミ(Al2O3)で言い方を変えれば錆びたアルミである(ガラスは、主に二酸化ケイ素SiO2)。
これらの高価な装飾品の人工物は、工学上で非常に有用な材料で切削工具には、ダイヤモンド(ダイヤモンドカッター)がよく利用されたりサファイヤ、ルビーはとても硬い物質なのでスマホのレンズ保護やタッチパネル保護によく利用されている(ルビーコート、サファイヤコート)。
ちなみにあまり大きな価値が認めらることは少ないが、材料メーカーから装飾用のダイヤモンド、ルビー、サファイアなどが販売されていて誰でも買えるのである(そこまで安くもないが)。
さらに最先端の無機材料は、ほとんどの皆さんがお持ちのスマホ、パソコンなどの基になる半導体も無機材料である。
有機材料と同様に無機材料も現代の私たちの生活に欠かせない重要な材料なのである。
まあ、この無機材料は長い歴史の中で特に錬金術によって深く研究されてきた分野なので金属の鉄並みに人類は、ノウハウを持っている。
後に機械でよく使う無機材料のセラミックは詳しく説明する。
ここまでが大まかな機械材料の分類になるのだが最近時に急激かつ爆発的に発展している材料の新しい分野(分類)があるので紹介していこう。
複合材料
その爆発的に発展している材料の分類は複合材料というものであり、意味としては“ここまで説明してきた物質を複数を組み合わせてつくった材料“である。
この複合材の優れている点は、これまで説明してきた物質の良いとこ採りをしたことにより、より人間にとって便利な材料になっている。
古くから利用されている複合材料は、泥と藁を混ぜて乾かしてできた藁レンガが複合材料である。
今より少し前によく利用されていた合板なんかもいく種類かの板状の木材を貼り合わせた立派な複合材料である。
現代の身近な例だと鉄の棒を組み合わせてコンクリートで固めた鉄筋コンクリートが複合材料だ。
これらの例のようにレンガであれば藁だけだと建築材にならないが泥と混ぜて使いやすいブロックにしたり鉄筋コンクリートであれば脆くて崩れやすいコンクリートの中に丈夫な鉄を入れることによってお互いの欠点を消してより有用なものにしている。
最近では、かなり一般的になってきたFRP(Fiber Reinforced Plastics)は、繊維状(糸みたいなモノ)にしたカーボン(炭素)やガラス(ケイ素)をプラスチックで固めた複合材料だ。
このFRPは、かなり応用の効く複合材料の生成法でいろんな繊維を使って多くの種類が作られている。
例えばケプラー繊維やアラミド繊維を使ったりと何でもありのやったもん勝ちみたいな状況だ。
身近な使用例だと釣り竿やテニスラケットのスポーツ用品から風呂のタイルから兵器の防弾チョッキなど利用用とは、様々だ。
この中でも特にカーボン(炭素)を使ったFRPはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)と呼び自動車を代表とする多くの産業分野で活躍している。
さらに、そのCFRPを釜で焼いてプラスチックを炭にしたものをC/C材(Carbon-Carbon Composit)で日本語で炭素繊維炭素強化複合材と呼ばれ地味に日本が最先天の技術を持っていたりする。
このC/C材は、有名なところだとF1の車体やロケットの耐熱パネルなどに使われている。
このように超便利な複合材料なのだが大きな欠点があって作るのにかなりの手間が掛かるので価格が超高いのだ。
いわゆる高性能な故に高価格の典型例だ。
その価格の高さ故に高価格、高性能な製品や一品モノ(ロケットなど)に採用されることが多く、まだまだ一般的に普及することが難しい(十分、一般的か?)。
なので古来から複合材料は利用されているもののまだまだ発展途上で今後の進化(設計者視点だとコストが一番)が大きく期待される材料だ。
ちなみにこの複合材料の多くは、JISなどの工業規格に登録されているものが少なく各企業が独自にノウハウを持っていることが多いので一般名がなく商品名が材料名になることが多い。
なので調べるときは、直にメーカーに話を聞くと良いと思う。
また複合材料の大まかな分類としては母材単位で分かれていて、母材が樹脂なら樹脂基複合材料、母材が金属なら金属基複合材料、母材がセラミックならセラミック基複合材料、母材がカーボン(炭素)ならグラファイト基複合材料と呼ばれているがあまり気にする必要はないと思う。
複合材料に関しては、筆者が幾つか利用したことがあるのでその経験を後に紹介する。
まとめ
ここまでで機械材料の大まかな分類の全体の説明が終わったことになるのでまとめていこう。
・機械材料は金属、非金属、複合材料に分かれる。
・非金属材料は、有機材料と無機材料に分かれる。
・有機材料は主に炭素、水素などから構成されており代表的な材料としてプラスチックやゴムがある。
・無機材料は、金属、有機材料以外の物質から構成されており代表的な材料としてセラミックがある。
・複合材料は、異なる複数の物質を組み合わせてできた材料で非常に高性能な分、高価格な材料である。
となる。
全体像を表にすると少し複雑だが次のようになる。
まあ、ここまでで機械材料で扱う材料の概要が理解できれば良いと思う。
各材料の詳細や使い方などは機械材料の基本を理解してもらった後に詳しく説明していく。
次回からは、いよいよ本格的に機械材料の基礎となる理論を説明していく。
まず最初に紹介する理論が原子構造を説明していく。
基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。
もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。
はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。
またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。
多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。
さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。
しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。
特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。
また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。
やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。
私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。
折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。
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