前回のUMAREX/VFC VP9(SFP9)でフレームの分解&カスタムまで紹介しました。
今回はカスタムした実射性能の確認をメインで紹介していきます。
実射性能確認前に海外仕様のマガジンによくあるガス注入バルブの入れづらさ対応でガス注入バルブの交換を紹介していきます。
マガジンのガス注入バルブ交換
まず純正のマガジンのガス注入バルブを見てみましょう。
これがガスが超入れづらいので、国内ガスに対応したバルブに交換していきます。交換する製品は流通量が多くて価格が安めのWE用日本仕様ガス注入バルブです。
マガジン内のガスを全て抜いてからマイナスドライバーで取り外せます。
取り外したバルブを見ていきます。実は国内仕様の注入バルブが手に入らない場合は注入口にあるO-リングを取り除くだけでもかなりガスが入れやすくなります。
取り外し方のコツはまち針などの裁縫用の針で刺して持ち上げると取れます。
購入した国内ガス対応バルブと比較してみましょう。
ネジ部に付いているOーリングの太さが違います。
次に注入口を見ていきましょう。
国内対応バルブはOーリングが付いていません。このO-リングによって高圧ガスのみが入るようになっているのですが代替フロン(HFC-134a)程度の圧力だとそれが災いして入れづらい原因の大きな一つになっています。
これをマガジンに組み付ければ終わりです。
ここで取り付けの注意点ですが、ネジ部にOーリングがあるので締めて行っても締まり切る感触があまりありません。ここで締めすぎるとOーリングが潰れすぎて機能しない、痛むので気をつけましょう。
O-リングの設計の詳細は別で詳しく説明しますが潰れ率30%以下、充填率100%未満にしないと正常に機能しなくなり、締めすぎるとOーリングが入るスペースが狭くなって潰れ率オーバー、充填率オーバーで壊れます。
感触の参考としては元々付いていたバルブの締め具合を覚えておくと良いと思います。
バルブ交換の訂正
後にバルブからのガス漏れが発覚しました(確認不足です、すいません)。原因はバルブの首元のO-リングのサイズが合っていなかったのが原因です。
O-リングのサイズを比較します。
純正のが太い設定なのでWE用日本仕様のO-リングでは気密が取れませんでした。
なのでO-リングを純正に戻して念のため東京マルイ 高粘土グリスを塗ります。
次に組み込みですがO-リングが変形しすぎないように注意深く取付けてください。
感触としてはバルブを締めていって抵抗が変わったところで止めます。2時間ほどガスを入れて放置しましたが今度は大丈夫でした。
自分への戒めとして記事を書き換えないで失敗例も敢えて残す形で追記にしました。
これでカスタムは全て終わりになります。
次に実射性能を確認していきましょう。
実射性能確認
いつも通りでHFC-134aガスをマガジン満タンにしてマガジン表面温度を28℃(人肌程度)にします。気温は約23℃でした。
弾はいつも通りS&Tのバイオ 0.2gでホップは目盛り0で確認していきます。
箱出しの初速が75.8m/sくらいだったので少し落ちました。箱だしでの確認時には気温が25℃程度でマガジン表面温度が29.6℃もあったのであまり変わっていないとも言えます
カスタムでガス流量アップ、インナーバレルの内径絞り、長さ延長を行なったにも関わらず初速が上がらない場合の多くはホップをかけていくと初速が上がる傾向にあります(流速になる)。
私の経験則ですがバレルが極端に短い場合(110mm以下程度)では発射ガスや空気量を増加させても弾の加速区間が足らないため初速が上がらない場合が多いです。
その場合はホップを強めにして弾を咥える力を上げてやると、インナーバレル内の圧力が高くなり初速が上がることが多いです(流速?)。
ホップを目盛り最大にして確認してみます。
やはり初速が上がりました。
ホップの長掛け化によりホップの緊縛力(弾を咥える力)が純正より上がっているにも関わらず、初速が上がっているので目論み通りです。
次に安定性ですが連続で射撃をした11発目の初速です(ホップ0)。
このままマガジン装弾数の全弾22発を発射しても初速は70m/s以上になりました(スライドストップもしっかり掛かる)。
純正ですと22発撃ち切りですと初速が66m/sくらいまで落ちたので安定性は向上したと言えそうです。
初速計のレビューも良かったら覗いて見て下さい。
燃費
次に燃費です。
再度、確認のためマガジンの空の重量を測ります。
ガスを満タンまで入れます。
ガスが21gほど入ったことになります。当たり前ですが箱出しの時とほぼ同じです。
次に1マガジン22発を連続で撃った後の重量です。
消費ガスが6.5gで22発発射したので1発当たり約0.3gとなり箱出しと変わりませんでした。フローバルブスプリング変更による発射ガス量の増加を考えると、燃費が上がったと見れないこともないかもしれません。
次に作動の様子です。動画です
箱出し
ハンマースプリング荷重減らしや擦り合わせの効果でキレが良くなったのがわかると思います。またブログでは表現のしようがないのですが、トリガーフィーリングは段違いに良くなりました。ゴリゴリ感が完全に無くなったのとハンマースプリングによるトリガーの重さが無くなりました。
後は弾道確認ですが次にサバゲーに行った時に確認出来次第、更新します。
ホップを掛けて弾を突いた感触では大丈夫な感じでしたので、変な弾道にはならないと思います。
これでカスタム目標を達成したことにします。
弾道確認
2020年7月末にヤネックスさんで弾道を確認してきました。
条件は気温が32℃くらいでガス満タン、G&Gのバイオ 0.2gで確認しました。暑かったので初速は79m/sも出ました(適正ホップ)。
弾道イメージです。
ちょとした長モノに匹敵するくらい良い弾道で驚きました。
しかも私好みのホップ目盛りちょい掛けで0.2gの適正弾道になったので重量弾にも対応できそうです。
要因としては純正の長掛けパッキンの素性が良いことと、ホップアームの長掛け化改良とインナーバレルのちょい延長が効いていると思います。
私の経験範囲ではガスブロハンドガンの中で一番、弾道が良い感じになった気がします。
最後にカスタム完成品と箱出し状態での外観の比較をしてみます。
もし箱だし状態での実射性能の詳細を知りたい方はこちらをどうぞ
・G&G バイオ弾 0.2g
安くて精度が良いので性能確認からサバゲーまで広く使っています。日本に入ってきた頃から使ってるお気に入りです(2008年くらい)。バイオの割に日持ちします
・G&G バイオ弾 0.25g
0.25gです。基本は0.25gでサバゲーしています。
外観の比較
外観の比較といってもspecialcomboで付いてきたスチール製のサイト、エキストラクター、テイクダウンレバーの違いとグリップのパネルをMサイズからSサイズに変更しただけになります。
エキスラクター
サイト
テイクダウンレバー
次にインナーバレルを長くした影響です。
通常状態ではアウターバレルとインナーバレルの長さがピッタリになっています。
これをスライドを引くとアウターバレルが後退するので少しだけインナーバレルが飛び出ます。
私は取り敢えずこれでも良いことにしましたが、目立つのでインナーバレルを後で黒く塗るかもしれません。
次にグリップです。
Sサイズ
Mサイズ(箱出し状態)
画像での比較が難しいのですが各指に注目するとコンパクトになっているのがわかると思います。
次にSサイズグリップでのマガジンリリースレバーの操作性です。
私の場合ですと指にあまり力がないので親指と人差し指の両方でレバーを押し下げます。Mサイズのグリップではこの方法だと指が届かなく操作できませんでしたがグリップパネルをSにしたらスムーズに操作できました。
以上でカスタムの完成とします。
まとめ
今回の改善内容は、繰り返しになりますが次のようになります。
・燃費アップと作動性向上のためのハンマースプリング荷重ダウン
・トリガーフィーリング向上のための各部品のすり合わせ
・ホップの突起の傾き修正、調整と長掛け化
・全体のすり合わせとグリスアップ
・流速化
・マガジンのガス注入性の改善
使用した部品は、次の2点だけです。
・RA-TECH 6.02mm精密インナーバレル 長さ97mm
・ストライクアームズさんのフローバルブスプリング ミディアム ロング(緑)
後は創意工夫とDIYのプライスレスになります。
ここまで長い文章で説明してきましたが、慣れていれば作業自体は3時間未満で終わる内容になります。コストもほとんど掛からないのでお勧めの内容になります。
特に海外製のガスブロは初速が日本の法規内に調整されているモノの、それ以外の部分に関しては高圧ガス用にセッティングされているので、少し調整するとより快適に作動することが多いです。また国内メーカー品でも研磨等の作業をしてあげると元々の良さに加えさらに良くなると思います。
工業製品である以上、量産においてどうしてもできない部分は必ずあるので、その部分を見つけて手作業で対応していく感じです。
今回のVP9は箱だし状態でかなり良い出来で設計も素晴らしいのですが、ひと手間加えるとより良くなるポテンシャルを秘めている製品だと思います。またHK社の最新設計のポリマーストライカー式オートなだけあって使い勝手はとても良く、自衛隊の正式採用にもなったのでかなり満足度の高い製品でした。
できれば国内メーカーから出て欲しいのですがコロナによる不景気と忙しさからしばらくなさそうなので、VP9を手に入れたいなら選択肢はしばらくこれしかなさそうです。
以上、紹介を終了します。
使用したインナーバレルは大手通販サイトで在庫が見当たらないので私のお勧め品を紹介しておきます。
・PDI 内径6.01mm 長さ97mm
精度がよく信頼のPDIさんなので、今回、採用したものより良いかもしれません。
・メイプルリーフ クレイジージェット 長さ97mm
私がガスブロに良く使うバレルです。ジェット効果は?ですが、普通にバレルとして出来が良いです。
ホップパッキンは、純正品がかなり良いのでそのまま活かすカスタムが良いと思います。
サードパーティから低荷重のハンマースプリングもあるらしいのですが、在庫が見つかりませんでした。
・AMG製 winter ハンマースプリング(純正比-20〜30%)
本体です。
・UMAREX/VFC VP9 special comb DX/JP version
鉄製のエキストラクター、蓄光サイトセット、スライドテイクダウンレバーが付属です。
・UMAREX/VFC VP9 STD JP version
エキストラクター、サイト、レバーは、アルミ製。見た目の違いです。
・スペアマガジン
入荷したみたいで適正な価格になりました。在庫がある時に手に入れることをお勧めします。
・国内ガス用注入バルブ
お勧めです(必ずO-リングは純正品を使ってください)。
個人的なお勧めで私はエアソフト本体やパーツ関連の多くをアマゾンのプライム会員に入って購入しています。
意外と本体、パーツ共にラインナップが充実していて最安値では無いもののそこそこの低価格で安定的に購入できるので重宝しています(小物だと買いに行くのがめんどくさいので重宝)。
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コメント
コメント一覧 (2件)
大変参考になりました。アナログ人間なので画面印刷してファイルにして何度も拝見させてもらっています。ところで、VP9については、国産製品と異なり「ピストンの機密性が悪い」ように思えますが、どうでしょうか?また。東京マルイのG17/GEN4と比べると、連射による冷えがひどいと思いますが、これは何が原因なのでしょうか?
津山様
コメントありがとうございます。記事のファイリングまでして頂いて光栄です。
VP9に関しての私の見解ですが回答させていただきます。
・ピストンの機密性が悪い
この件はピストンの形状の影響が大きいと思います。物理的に円形シーリングの方が性能が高いです。シーリングが円形状だとどの位置でもシーリングのテンションが一定に保てる、どの位置でも圧力が一定、形状の精度が高くできるからです。
VP9のシーリング形状は変わった形状の台形なので円形状のように行かず漏れは大きいと思います。
なのでピストンの機密性が悪いのは事実で原因は形状に依るものだと考えられます。
・連射による冷えに弱い
これも事実だと思います。
東京マルイさんのマガジンは基本的に亜鉛の鋳物ですがVP9のマガジンはおそらく鉄の鋳物製部品の組み立て式だと思われます(もしかしたら鉄と亜鉛部品の組み合わせかも)。
この材質の違い、つまり亜鉛、鉄の比熱、熱伝導率の違いから温度変化特性に差が出ます。
この差がガスガンの連射時の冷え性能に影響が出ています。
もしピストンの機密性、マガジンの冷え特性の詳細なメカニズムに興味がある方が多い場合は記事を書いてみます。