今回はICS スポーツライン M4 CQBのカスタムを紹介していきます。
カスタムの途中で破損していたことが判明し完成しませんでした。
本モデルは樹脂モデルで10年くらい使用しており、どこが壊れてくるのかのノウハウの紹介としてみてください。
それではカスタム開始です。
カスタム
私のカスタムの場合は、特に変わったところは一切なく単純にパーツを変えて丁寧に組むだけです。
今回は、ハイレスポンス、ハイサイクル仕様にしようとして13:1のハイスピードギヤにSHS製のショートストロークスイッチを中心に古くなった部品を取り替えていくだけです。
順番も基本に忠実にメカボ加工と研磨、電装系、部品の組み込みチェック、シム調整、組み立てで進めています。
今回は破損箇所の紹介なのでカスタムは駆け足で紹介します。
メカボの割れ防止加工と摺動部の研磨です。
メカボックスの窓枠の加工
摺動部の研磨
今回の研磨はいつもの紙やすりではなくてリューターでバフがけをしてみました。かなり綺麗に仕上がったのでこれからはバフがけでいきます。
次に電装系を作ります。
イーグルフォースさんの1.25sqのシリコン配線で作成しました。
次に各部品の組み込みチェックをします。
スイッチ周りの確認
メカ系統の確認。
いろんなメーカーさんの部品を使用するので仮組みして問題ないかを調べます。確認しないで組み立ててしまうと後で大問題が発生する可能性があるので必ず実施します。
ロネックスのA4モーターを使用するのでピニオンギヤの出来がイマイチなのでイーグルフォースさんの超硬スチール切削ギヤに交換します。
13:1のギヤにそのままこのモーターを組むと確実にピスクラしますのでセクターギヤのギヤをカットします。
今回はセオリー通りの引き1枚、解放2枚の3枚カットでいきます。
下準備の最後にAOE調整をします。
私のやり方はピストンを重くしたくないので基本的にピストンヘッドの面にハネナイトゴムを貼り付けて調整しています。
調整後。
セクターカットを実施すると確実にAOEがズレてくるので必ずチェックして調整することをお勧めします。
ピストンのラックギヤの2枚目を削るのは当然として、3枚目のギヤの頭にセクターギヤが干渉することがあるので少しだけ削ります。
ここまで来たら後はシム調整になります。
このシム調整の間にモーターの慣らしをやってしまいます。シム調整がおおよそ20分くらい掛かるので時間的に丁度良いです。
ここまで来たらグリスを塗って各部品を組み立てればメカボックスは終了になります。
ロアーメカボックスの組み立て
アッパーメカボックスの組み立て
これで完成です。
後は、ホップアップチャンバー周りの組み立てですがいつもと同じです
記事の題名はGーHOPですがホップパッキンを市販品を使うだけでやり方は一緒です。
これでカスタムの9割は完成なのですがここで問題が起きました。それなりに手が掛かっていてショックでした。
では破損部の紹介をしていきます。
破損部
どこが破損したかというと樹脂フレーム製のM4系の弱点と言われている首周りが壊れていました。
特に致命傷だったのがデルタリングを締めるネジ部が破損していました。
M4の首周りが弱いことは聞いていたのでネジロック剤をつけてガチガチに固定しようとしたらネジロック剤が亀裂に染み込んで発見できました。
ガックリです。
ここでエアガンのフレームによく使われるABS樹脂の解説を簡単にします。
ABS樹脂の基本はアクリルニトリル(アクリル)、ブタジエン(ゴム系)、スチレン(発泡スチロール系)が混ざって出来ています。
整形製、耐久性、入手製がとても良く、多くの製品で利用されていますが弱点がいくつかあります。
・オゾンによる劣化(オゾンクラック)
・紫外線による劣化
・樹脂成分の油分が抜けることによる硬化
になります。
オゾンによるクラック
オゾンクラックはゴムを含めた樹脂全般において発生する事象であり、樹脂系材料の破壊の基本になります。
オゾンは$ O^3 $で表され皆さんがご存知のオゾン層が正にそれなのですが我々が生活する地表付近でも強烈な太陽の光に照らされると化学変化が起きて待機の酸素の極一部がオゾンに変化します。
オゾンには厄介なことに樹脂の化学結合(分子結合)を引き離そうとする作用があります。そのためよく晴れた日に外部に樹脂がある状況だとオゾンによって徐々に劣化します。
防ぐ方法としてはオゾンに触れないようにするのですが具体的には日陰や屋内で保管することです。
一般的に天然ゴムはオゾンに強いのですが工業製品の多くのゴム、樹脂は石油成分を基にしたモノが多いです。
紫外線による劣化
次に紫外線による効果についてですがゴムを含めた樹脂全般が硬化します。
これはジェルネイルや3Dプリンタで利用される特徴ですが、樹脂の耐久性の観点で考えるとかなり厄介な特性です。
紫外線に樹脂を当て続けると少しづつ硬化が進み靭性がなくなります。
この硬化が極端に進むと少しの衝撃や自分自身が硬化し過ぎて亀裂が入ります。
これも防ぐ方法は日焼けと同じように直射日光を避けるしかありません。
内部成分の油分の抜け
最後の樹脂の成分の油分が抜けることによる硬化です。
一般的に樹脂は種類によっては油分を吸ってしまうモノがあり油分厳禁とされているものがありますが、実はゴムを含めたすべての樹脂は内部成分に油が含まれていてその油により適切な靭性が得られています。
この油分が時間が経ったり、強制的に抜いてしまうと樹脂は硬化していきます。
この硬化が極端に進むと自分自身が硬くなり過ぎて勝手にヒビが入ります。
樹脂の基本特性まとめ
このような主に3つの要因でどんな樹脂でも必ず劣化します。
わかりやすい例だと長年、放置した自動車のゴム製品、特にタイヤにヒビが入るのはこの3つの要因が組み合わさって発生しています。
これはゴムだけでなく樹脂なら必ず発生します。
特に私は自動車用のエンジン設計をしてたのでゴムを含めた樹脂材を使うときにはかなり気を使いました。
具体的にはオゾンが発生するような直射日光を避ける場所、紫外線が当たらない場所、適度な油分の補給(エンジンオイルを利用する)の条件は必ず満たすようにしていました。
ただ樹脂でもナイロン系(66ナイロン)などは吸水と吸油性が高いので勝手に膨潤するので、最初から膨潤率を見越して設計します。
エアソフトガンで利用されている材質だとシリコンゴムがシリコングリスを吸うので注意した方が良いです。おそらく多少の膨潤なら大丈夫ですがぶくぶくに太らせてしまうと狙いの寸法が狂って機能しなくなります。
今回は10年の長い時間で、この3つの要因が重なったのが要因で破損してしまいました。
もし樹脂モデルを永く使いたい方は保管時にできるだけ日光が当たらない場所に置いておきましょう。
樹脂のもっと詳しい機械材料の性質は機械設計講座でそのうちに解説します。
接着剤(ネジロックなど)と樹脂
記事の公開後に読んでいただいた方から貴重な教訓を頂けたのでここで追記します。
ネジロック剤などの接着剤には一部の樹脂を攻撃する成分が入っていると教えていただきました。
私の方で調査すると、確かにそのような注意書きがあって特にアクリル、ポリスチレン、ポリカーボーネイトなどを溶かしてしまうようです。
このような現象をケミカルクラックと呼ぶらしいです。
私はエンジン設計者だったので金属系や樹脂でもゴム、ナイロン系の取り扱いはそこそこ経験があるのですがABS樹脂などはあまり使わなかったので恥ずかしながら知りませんでした(ABSなどはもっと頑丈かと思ってた)。
今回の破損にも関係がありそうです。
もしこの記事を見ている方で樹脂に接着剤、ネジロック剤を使うときは、樹脂対応のモノを選んでください。
ただし今回の破損はネジロック剤をつけてネジの締め付けを行ってすぐに発見されたのでオゾン、紫外線などの影響による経年劣化とネジロック剤による攻撃の要因が重なって破損したと思われます。
しかしながら流石にいくらネジロック剤に樹脂への攻撃性があっても、塗布して3分も経たないうちに写真のような破損につながる決定打になるとは考えづらいと思います。
ただし時間が経つごとにじわじわと樹脂を攻撃するのでもし間違えて使用すると気づきにくそうなので取り扱いに十分な注意が必要だと思います。
いずれにせよゴムを含めた樹脂に足して接着剤を含めた化学薬品を利用する時は十分に注意した方が良いです。
ブログ上でのお礼となり申し訳ありませんが情報をいただいた方に大変な感謝をしております。
ありがとうございました。
おまけのトラブル
メカボックスの軸受の面が荒れていてシム調整が全く決まらない事象が発生しました。
原因は軸受の面が平面ではない、固定が甘いことでした。
軸受の固定が甘い
苦労してシム調整をして試運転をしただけでシムに均等に力がかからないので焼けてしまいました。
おそらく長期仕様による劣化が原因だと思います。もし長く使用した電動ガンでノイズなどが気になる人はメカボックスの軸受を疑っても良いかもしれません。軸受を入れ直すときは必ず面が出るように丁寧に組んでください。
以上、皆さんも樹脂モデルを扱う場合は気をつけてください。
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コメント
コメント一覧 (5件)
初めてこちらにコメントさせて頂きます。
バレルロックナット部のクラックですが、自分の私見ですが画像を拝見しますとネジ止め剤をロックタイトの242か243を使用している様に見受けられますが、ロックタイトには樹脂を脆くさせる溶剤が含有されていますので、その事が原因でクラックが生じたのではないでしょうか?
ABS等と樹脂系のネジの固定にはタミヤのネジ止め剤の方が良いですよ(もとよりラジコン用なので樹脂とのネジ止め専用なので)
笹川さん
大変、貴重なコメントをありがとうございます。
まさに言われる通りでロックタイト 243を使用しています。
調査したところロックタイト243には、一部の樹脂への攻撃性がありケミカルクラックが発生することがあるのがわかりました。
よく考えてみると私が仕事で経験したのは、樹脂部品でもめねじ部には必ず金属のインサートを入れており、そこにネジロックを使っていたので問題が出なかっただけでした。
大変、勉強になりました。
ありがとうございます。
カズバラさん
追い討ちをするようなのですが溶剤成分の樹脂へのダメージは、ほぼ瞬殺です。早いものだと1分もせずに破壊しますので、ロックタイト等の金属用液状ケミカルを樹脂パーツの近くに置かない、直ぐに蓋を閉め溶剤成分を揮発させない、蒸気に樹脂を曝露させない様にした方が良いですよ、特に蒸気は見えないので気が付いた時には手遅れです。
また一度ダメージを受けた素材はケトン系の流し込み接着剤でその場では接着剤されたように見えますが格段に強度 靭性がなくなりますので気を付けて下さい。
長文失礼しました。
笹川さん
貴重な情報ありがとうございます。
瞬殺ですか!私の感覚だと流石に浸透するのに少しは、時間がかかると思ったのですが化学薬品は恐ろしい。
ましてや蒸気ですら危ないとは、驚きです。
興味が出てきたので今度、プラ板で実験してみます。
樹脂用のロック剤と242をプラ板に垂らして引っ張って荷重を測ってみます。
その実験面白そうですね😁
楽しみにしています。