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コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓13 コメット墜落事故の一般的な教訓と原因の再考(応力集中、疲労破壊、多視点チェック、相互チェック)

ここまででコメットの墜落事故発生から原因の特定までを紹介してきた。

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓9 コメット墜落事故と原因探し(破壊力学、FTA、FMEA、特性要因図、仮説と実証)
コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓12 開発時の試験の罠と問題対策、その後のコメット(弾性域、応力集中、圧縮残留応力、破壊力学)

今回は一般的によく言われている工学上の得られた知見や教訓をメインにまとめていく。

しかしながら筆者の経験を基にコメット墜落事故を見ると単純な工学上の問題だけ、特に材料力学の知見だけとは考えづらい。

なので前半で一般的な得られた知見を説明して半分から先は、筆者の考えを紹介していく。

まずは、一般的な得られた工学上の知見・教訓から紹介していく。

コメット墜落事故から得られた工学的な知見・教訓(一般的な教訓)

少し口説くなってしまうがコメット墜落事故のポイントの一連の流れをおさらいしよう。

まずは、既存の旅客機に比較してコメットの何が未知の領域だったのかを見ていこう。

コメットの工学上の新規性

まずは、コメットの何が具体的に工学上で世界初だったのかポイントを挙げる。

コメットの世界初

1.ジェットエンジンを動力源に採用した。

2.今までにない巨大な与圧室を採用した。

3.今までの民間営業飛行とは、桁違いの高高度で巡行した。

細かく見ると他にもたくさんの技術の新規性はあるが、もの凄く大雑把に大きくポイントを上げるとこの3つになると思う。

もう少し論理的に正しく説明すると高高度を高速巡航飛行するためにジェットエンジンを採用したために、今までとは比較にならない高度、速度で飛行できるようになった。

高い高度を人間が生命を保って飛行するためには、搭乗員の全員が収まる大きな与圧室が必要になった。

つまりジェットエンジンの採用に付随して出て来た問題に対応しようとしたために2、3の技術が必要になったわけである。

おそらくだが当時は、このジェットエンジンの革新性と難しさばかりに目が行き、その背後に潜む大きな課題を見る目がおざなりになった可能性があるのではないかと筆者は、思う。

航空機用エンジンのちょっとだけ詳しい発展史はこちら

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓1 技術者倫理と1940年代の航空機用レシプロエンジンの進化(機械式過給機、スーパーチャージャー)

ジェットエンジンの誕生

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓3 ジェットエンジンの誕生(遠心式圧縮機、軸流式圧縮機)

与圧室のちょっとだけ詳しい説明はこちら

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓6 高高度飛行の機体技術の要 与圧室(安全、機能安全、フェールセーフ、ISO26262)

与圧室の設計課題

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓7 与圧室の設計の課題(疲労強度、弾性域、公差の積み重ね、技術の伝承)

いずれにせよコメットは、かなりの短期間での開発を経て世界初の栄光を手に入れたが、残念ながら営業飛行開始から間もなく連続墜落事故を起こした。

次に墜落事故の原因のおさらいをしよう。

コメット墜落事故の工学上の原因

コメットの墜落事故の工学上の原因は、次のような論理になる。

1.飛行機なので飛行毎に高度差による気圧変動から与えられる繰り返し荷重(圧力)が与圧室に掛かった。

2.機体の窓の角やアンテナの穴に応力集中(荷重が集中)した。

3.機体の疲労強度が応力集中による繰り返し荷重に耐えられず想定より極短い時間で破壊した。

となる。

おそらくジェットエンジンばかり心配して注目していたためエンジン自体の不具合が直接的かつ致命的な原因ではなく、付随する機体に問題が出てしまった。

単純にまとめると実際の負荷に対し機体(与圧室)の強度が全く足りてなかっただけである。

コメット墜落事故の原因調査の詳細はこちら

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓9 コメット墜落事故と原因探し(破壊力学、FTA、FMEA、特性要因図、仮説と実証)

では、次に開発時にしっかりと試験をしたのになぜ、機体の疲労破壊による墜落事故が発生したのかおさらいしよう。

コメットの機体強度の工学上の見誤りの原因

コメットの墜落事故の原因は開発、製造会社の力では解明できずRAE(王立航空研究所)の再現テストによって判明した。

具体的に開発、製造会社とRAEの再現テストでは何が異なったのかおさらいしよう。

まずは開発製造会社のテストの主なポイントをおさらいしよう。

開発製造会社での試験内容

1.機体(与圧室)を分割して試験を行った。

2.機体の一発で破壊する強度確認のために想定の2倍の荷重を与えた。

3.2で試験した部品をそのまま疲労試験で使った。

4.疲労試験の条件で念のために1000回に1回の割合で想定の2倍の荷重(圧力)を与えた。

この4つが大きなポイントになる。

一方でRAEはどのような試験を行ったのかポイントをおさらいしよう。

RAEでの再現テストの内容

1.機体(与圧室)を分割せずに完成状態で試験をした。

2.実際に掛かる負荷(圧力)を忠実に再現した。

大きなポイントはこの2つだけである。

たったこれだけの差が試験の結果に重大な影響を及ぼし実際に悲劇である事故が起きた。

コメット墜落事故の原因とテストの違いはこちら

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓12 開発時の試験の罠と問題対策、その後のコメット(弾性域、応力集中、圧縮残留応力、破壊力学)

このことから一般的には、次のような教訓と対策がなされている。

コメット墜落事故の工学上の教訓と対策

一般的には、コメット墜落事故の原因は、次のようにまとめられている。

コメット墜落事故の一般的な原因

・金属疲労に対する知見が不足していた。

・応力集中が金属疲労に与える影響の知見が不足していた。

この原因に対する対策としては次のような対策がとられている。

一般的な教訓

・機体の強度の確認は、必ず完成した状態で実施すること。

・応力が集中しそうな角には、なるべく丸みをつけること

・機体の強度テストは一発破壊と疲労試験で必ず別々で実施すること。

・営業飛行している機体は、メンテナンス時に非破壊検査(音波や磁石を使って内部の亀裂の存在を検査する)を行うこと。

となる。

この対策は、当然だが現在でも適用されていて一番わかりやすいのは、現代のジェット旅客機でも客室の窓は、かなり小さくてカタチもほとんど楕円や円のような形状になっていることは見たことがあると思う。

さらに機体(与圧室)の疲労試験は機体(与圧室)を丸ごと使って試験を受けている。

多くの場合でコメット墜落事故で言われている対策と教訓は、ここまでだ。

でもこれは、あくまで一つの見方であり工学上の原因がわかり対策をしただけである。

コメット連続墜落事故から得られる教訓は、これだけでいいのかと非常に大きな疑問が残る。

次からは筆者の経験を踏まえてコメット墜落事故の原因と教訓を見ていこう。

事故の発生要因の再考

ここからは筆者の考え全開で行く。

ここまで述べてきた教訓、対策だけだとジェット旅客機の機体(与圧室)の強度(工学上)の問題だけは解決できる。

単純にチェックリストのようなものをつくって運用すれば良い。

じゃあ再び人類が未知の領域に踏み込む時に人命が多数、犠牲になっても“工学上の知見不足でした“で済むのか?と強く思う。

つまりコメット墜落事故を単に工学上の知見不足で済ませるということは、今後も未知の領域に踏み込んだ時に犠牲者が出ても“工学の発展のために仕方がない犠牲です“と言ってるのと同じである。

確かにコメット墜落事故に関してイギリスの司法は、開発、製造会社を含めた関係者、団体に法的制裁を与えなかった。

理由としては、これまでの旅客機とは全く異なる使用環境であり、航空技術においても未知の領域であり危険の予知は不可能だったとしている。

しかしながら法的制裁を受けていないから工学上の問題以外は、問題がなかったと本当に言えるのだろうか?再び未知の領域に踏み込んだ時に人名が犠牲になっていいのか?という大きな課題が残る。

実際に法的制裁は受けなかったものの連続事故による信頼喪失や長期の運行休止によって開発、製造会社(デ・ハビラント社)が飛んだだけでなくイギリスの航空業界全体の世界的優勢が失われてしまった。

例えば近い未来に世界初の宇宙旅行が実現したとしてすぐに事故を起こして多数の犠牲者を出して原因は、“工学上の知見不足でした“では、済まないはずだ。

こんな事故が起きて記者会見で“未知の領域のため知見不足による事故でした“なんて発表したら犠牲者の関係者の怒り、悲しみなどは収まるどころかむしろもっと深い傷を負うことは、想像に難くない。

そんなことは、絶対に許されない一方で人類が未知の領域に踏み込むことは、絶対に止まらない。

では、コメット墜落事故から学ぶべき教訓は、工学上の知見だけでなくハードとソフトの両面から見ないと本質は、見えてこない。

ここで述べているハードとは、コメットそのものや試験設備、金、時間などの主に数字で表すことができる物事を示し、ソフトは関わった人や組織、組織の運営、開発体制、事故対応などの抽象的なことを示す。

ちなみにこのような企業や組織の活動をチェックする視点としてヒト、モノ、カネやさらに情報を付け加えたりマッキンゼーの7sとかあるが筆者の感じだとどれも物足りない感じがするので大きくハードとソフトの2つに分ける。

当時の墜落事故の全体を俯瞰して見ていかないと犠牲になった方達や関係者に対してかなり申し訳ないことになると思う。

まずは、大まかにであるがコメットの問題とその周囲の関係者(政府や企業など)を見ていこう。

コメットと周囲の関係者(政府、企業、運用会社など)

まず筆者の経験による独断な意見を述べる。

コメットも確かに未知の領域の工学上の知見不足があったことは事実だが、たったそれだけの原因で連続した3件の墜落事故を含む計6件もの事故が発生する確率は、相当に低い、というかあり得ない。

つまり工学上の問題だけでなくそれ以外にも大きな問題を抱えていたと考える。

今回は、まずコメットの周囲の関係団体と事故対応を見るとかなり不自然な対応が散見される。

最も大きな不自然さの一つは、1件目の墜落事故の後に原因が特定されていないのに飛行許可が取り消されなかったことだ。

なぜならば普通だったら多くとも1件で抑える組織体制や運用方法、事故対応をするので仮にどれだけパイロットの操縦ミスやイレギュラーの可能性が大きくても原因の特定と対応が施されない限り飛行許可が出ることはない。

つまり工学上の未知の領域のリスクを開発組織や国家の認証体制、営業飛行の運用会社の仕組みで極限まで減らすのだ。

まず工学上の問題だけでなく周囲の関係団体の動きやチェック体制に大きな問題があったとしか考えられないのだ。

本来ならば機体(コメット)であるモノだけでなく全ての周囲の関係者がそれぞれの視点でコメットをチェックし、さらにお互いの団体が正常に働いているのかをチェックし合うことによって漏れなく異常、不具合を早く発見するのだ(多視点でのチェックと相互チェック)。

このようにして未知の領域の工学上のリスクを組織を上手く利用して最小限に抑えるのだ。

また異常、不具合が発生した場合にたくさんの視点でチェックすることにより事故になる前に発見し対応するのだ。

よって連続墜落事故の真の原因は、単純な機体構造の欠陥だけでなく他の要因もかなり大きかったと考えられる。

例えば最初の墜落事故への対応をパイロットの操縦ミスとせずしっかりと調査すれば残りの2件の事故は発生しなかった確率が非常に高い。

さらに言えば最初の墜落事故が発生する前に大きな事故が2件も発生している。

この時にパイロットだけの責任にせずにしっかりとチェックをしておけば機体の亀裂を発見できたかもしれない。

そもそも事故とは、ハインリヒの法則と呼ばれる法則があって“1件の重大事故には、29件の軽微な事故が存在しており、さらに300件のヒヤリハットが存在している“と述べられている。

筆者の経験と感覚では、この数字に関しては疑問があるが大きな事故の発生の前に、いくつかの複数の軽微な事故の発生、多くの小さな不具合が存在していることは真実だと思う。

つまりコメットにおいても周囲のチェック体制が正常に働いていれば不具合の発見、軽微な事故の発生の段階で抜本的な対応ができたと考える。

実際にコメットの一件目の墜落事故が発生する前に事故や不具合が発生していたことは事実からわかっており、十分に事故につながるヒントはたくさんあったのだ。

多視点チェック、相互チェック不足によって発生した身近な大事故

最近時の我々、日本人に大変な影響を与えた同じようなメカニズムで発生した取り返しのつかない大事故に福島第1原発事故がある。

確かに史上、稀に見る大きな地震によって発生した大きな津波が襲ってきた大変な事態に遭遇したことは事実だ(未知の領域)。

しかしながら福島第1原発に設置されていた複数系統の安全装置や補助電源装置が全く機能しなかった(工学上の問題)。

その結果、メルトダウンが発生し取り返しがつかない状態が今でも続いている。

詳細は書かないがこの事故の発生原因に大きな影響を与えたのは工学だけの問題に留まらないのは、皆さんもご存知の通りだ。

有名なところだと“以前から多重防御、補助電源装置の問題点の指摘の無視“、“事故発生時のマニュアルの不徹底、訓練不足“などがあり企業、政府、原子力委員、マスコミの相互チェックが全く正常に機能していないし事故後の対応もかなりまずかったことは記憶に新しいと思う。

福島第1原発は、流石にあの巨大な津波に襲われても何ともないことはないだろうが周囲の関係者のチェック、相互チェックと事故後の対応が正常に働いていればかなり異なった結果になっていたことは想像に難くない。

この構図はコメット連続墜落事故とほとんど同じ周囲の関係者のチェックの不具合が発生している。

残念ながら技術者である我々は、コメットから真の教訓を活かせてないだけでなく、さらに大規模な事故を起こしてしまった。

真の教訓を歴史から学んで実行するのは難しいのである。

このように機械設計講座であるが敢えて機体(ハード)だけでなく他(ソフト)の側面でもコメット墜落事故を見ていこう。

何故ならばソフトの側面にも技術者倫理が大きく関わってくるのと仕組みによって未知の領域でも事故を防げることが多いのだ。

さらに今後、間違いなくより増加し複雑化していく電子制御装置などの不具合検知や安全設計の考え方にも大きく関わってくる。

まず、問題点を考えるための前提知識として未知の領域に足を踏み込む場合の今も昔も変わらない考え方をおおまかに説明する。

未知の領域への対応の仕方

機械製品だけに関わらずなんでもやったことがない(未知の領域)に挑戦することは、素晴らしいことである。

ただし大きな注意点があって一番、最悪なのが未知の領域に足を踏み込んでいるにも関わらず気が付かなかったという事態がまあまあある。

この気付かない事態に対しても思うことがたくさんあるが今回は、この気付かない事態の発生メカニズムなどは省く。

ただし未知の領域だからといって完全に手探りで恐る恐る少しづつ試していくのはかなり効率が悪いし、なんにも考えないで試していたらモノによっては相当な危険が伴う。

しかも昔も現代でもこの経済社会の中では過酷な競争にさらされるので未知の領域であろうと効率よく素早く攻略していかないとライバルに置いてかれる。

そこで未知の領域を効率よく攻略するために未知の部分を具体化していくのだ。

次回は、具体的に未知の領域の攻略の方法を紹介していく。

コメット墜落事故から学ぶ技術史と教訓14 未知なる領域(高高度、高速飛行)への挑戦(システムズエンジニアリング、アジャイル、ウォーターフォール、要件定義、RFP)

話は、変わるが筆者も利用していたエンジニア転職サービスを紹介させていただく(筆者は、この会社のおかげでいくつか内定をいただいたことがたくさんある)。

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エンジニアとしてステップアップするなら超おすすめだ。

最後にお勧めなのがアマゾン プライムだ。

機械設計では基本になる本が一般にあまり出回っていない上に高価で廃盤も多い。

また機械設計では規格を日常的に確認するのでタブレットやスマホだと使いにくい面もあって手持ちの本があることが望ましい(筆者がオッサンなだけか?)。

しかもほとんどの企業が気密の観点から個人のスマホ、タブレットの持ち込みは難しく、全員にスマホ、タブレットを配る余裕もないと思うので本で持っているのが唯一の手段だったりする(ノートパソコンやCADマシンはあるけど検索、閲覧には使いづらい)。

元々、本屋から始まっただけあってアマゾンは貴重な本の在庫や廃盤の本の中古が豊富にある。

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kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考えてみる。

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