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Kazubara
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自動車メーカーの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計の技術を伝授します。仕事などのご依頼は下のお問い合わせボタンからご連絡下さい。

初心者でもわかる機械材料6 結晶、結晶格子ってなんだ? (結晶格子、体心立方格子、面心立方格子)

前回の説明で金属結合のメカニズム、特徴を掘り下げた(超重要)。

金属は原子が持つ電子($$  e^- $$)を複数の原子で共有しクーロン力で結合していることを説明した。

では結合した原子は“適当にランダムな形状で結合しているのか?“というとそうでもなく、ある程度の規則性を持った形状で結合している。

今回はその規則性を持った結合の形状について考えていく。

内容としては高校化学の基本だが超重要かつ機械エンジニアでも忘れている人がいると思うので理解して頂きたい。

目次

結晶、結晶格子(格子)

前回のおさらいになるがまずは結晶格子を考える前に金属結合を思い出そう(何故、金属結合を例にしているかは後で説明する)。

金属結合は物質全体で自由電子を共有しているので、次の図のような結合をする(例として鉄原子の金属結合)。

お互いの金属原子が電子を出し合って、その電子を共有(電子殻を物質全体で共有)して結合している。

上の図の電子殻を円ではなく、線で繋いでみると金属結合は下の図のように表せる。

図を見て理解していただけると思うが、規則正しく並んでいることがわかると思う。

図では3行4列できっちりと整列しているが、実際はもうちょっと複雑な並び方をする。

しかしながら理解しやすくするため、今のところはシンプルなきっちりと整列していると考えて行こう。

ここまでは全て平面だけで考えてきたが、実際の物質は面のみで構成されているわけではなく基本的には立体で存在している。

では立体的にどのように金属が結合しているのかを考えてみよう。

まずは例として2行4列で整列して結合している金属結合の面を想像してみよう。

同じ結合面が3面あると考えて、その3枚の面を重ねてみると次の図のようになる。

これで3次元の立体になる。

面を重ねて立体化した図を見ていると規則的な立体が集合していることに気付くと思う。

理解しやすいように原子を表している円を取り除いて線だけを図に残す。

図で理解いただけると思うが同じ箱(立方体)を規則正しく8個積み上げたカタチに見えると思う。

このような同じ形状が規則正しく配列されているカタチの塊を結晶と呼び、結晶の基になる箱のことを結晶格子または空間格子と呼ぶ。

ここまでの図では理解しやすさのために簡単な箱(立方体)をベースにして積み木をしたみたいな簡単な形状で説明したが、実際の物質ではもっと複雑な形状が多い(構成している結晶格子の種類も数も多い)。

例えば多くの人が知っているだろう氷の結晶なんかはベースになる形状は複雑な多角形を複雑に積み上げた形状になる(ランダムではなくて規則性はしっかりとある)。

他にも水晶(クリスタル)の結晶なども同じだ。

但し、どんなに複雑な形状であれ結晶構造であればベースになる形状(結晶格子)が規則正しく並んでいる。

なのでこの概念は非常に大切なので良く理解して欲しい。

ここで大きな注意点を述べておくと全ての原子、結合方法で結晶構造になるわけではない。原子、結合方法によっては結晶化することがあるということを頭に入れて置いて欲しい。

ちなみに結晶、結晶格子を説明するにあたって金属結合を例に挙げて理由は多くの金属原子、金属結合は結晶になることが多いからだ。

しかも全ての金属原子、金属結合の70%以上は3種類の単純な結晶格子を持つのだ。

特に人類の文明でよく使われる金属材料の鉄、アルミ、チタン、マグネシウムは単純な結晶構造、結晶格子を持つ代表格である。

なので次に金属結合に多く見られる3種類の結晶格子を紹介して行こう。

金属の代表的な結晶格子

具体的な金属の結晶格子を説明する前に結晶格子、結晶が異なると何が変わるのかを軽く説明しよう。

説明になってないかもしれないが、結晶格子、結晶が異なると物質の性質がまるで異なってくるのだ。

例えば同じ物質の鉄でも結晶格子、結晶が異なれば単純な引張強度を始めとし硬度、耐摩耗性、耐衝撃性、対疲労性、熱伝導性などが変わる。

鉄を含めた金属の結晶格子、結晶構造の違いで何故、特性が変化するのかはこれからしっかり説明していく。

さらには機械的性質だけではなく導電性、電磁気特性なども変わってしまうのだ(筆者は電気系の物性は詳しくない、ごめんなさい)。

なので結晶構造の物質の特性を知るためには原子、結合方法、分子構造の特定だけでは不十分で、しっかり結晶格子、結晶構造を知ることが超重要になってくる。

まずは一番、簡単で単純な結晶格子からして行こう。

体心立方格子(Body Centered Cubic:BCC)

いきなり体心立方格子と名前が出てきたが、まずは実際にどんな結晶格子の形状なのかを見ていこう。

結晶格子、結晶の説明では全く同一の整列した結合面を重ねていた。

体心立方格子では2段目の原子の配列が図と異なってくる。

家にあったBB弾を原子を見立てて説明していく(弾が汚くて申し訳ありません)。

まずは一段目の2行2列の金属結合のイメージを模型で考えて行こう。

次に二段目を考えて行こう。

ここで二段目を考えるに当たって自然界の重要な法則である“自然はより楽な方向に作用する“のだが、原子の結合において楽なこととは原子同士はなるだけ近くに居てコンパクトになろうとするのだ。

なので2行2列の整列した4個の原子の二段目の原子は一段目の原子に近い位置である4つの原子の中央の窪みの上に配置されるのだ。

三段目は一段目と同じ配列で配列する(蓋をするみたいなイメージ)。

二段目はわかりやすいように赤く塗ってみた。

これが体心立方格子である。

図解すると次の様になる。

図にも書いたが筆者個人のイメージは箱(立方体)の中心に原子が一個入っているので体の心で体心立方格子と考えている。

英明も重要で体:Body、心:Centered、立方:Cubicを略してBCCと呼ぶ。

この体心立方格子:FCCがたくさん集まって構成されているのが次の図のような結晶になる。

まずは形状のイメージが重要なので、細かい格子の特性は後で説明する。

この結晶格子、結晶構造になる物質としては常温の鉄( Fe)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)などがある(超重要な物質ばかり)。

但し各物質とも温度を始めとした状態や処理で結晶格子の形状は変化するので覚える必要はないと思う。

面心立方格子(Faced Centered Cubic:FCC)

体心立方格子と同じように面心立方格子もイメージから考えていこう。

まずはイメージの事前準備で結晶格子の説明で紹介した図を載せる。

面心立方格子も原子の配列は図に対して2段目のみ異なる。

まずBB弾で一段目の原子配列をイメージしよう(体心立方格子と同様に2行2列で整列)。

二段目の置き方がちょっと難しいので詳しく説明する。

原子は原子間の結合距離を近くしたがるので体心立方格子では一段目の中央に原子を1個だけ置いた。

面心立方格子では異なったアプローチで原子同士の距離を縮めようとする。

その異なったアプローチ方法は繋がっている2つの原子の上に原子が配置される。一段目の原子は4個あるので窪みも4箇所あるので4個の原子が二段目に配置される。

実際に二段目を配置してみる。

他の考え方としては一段目の原子配列と同じ配列で角度45度ズラして配置したと考えても大丈夫だ。

三段目は一段目と全く同じ配列、方向で配置される(蓋をするみたいな感じ)。

一方向だけでは見えない原子があるので向きを変えてみる。

これが面心立方格子である。

図解すると次の様になる。

図にも書いたが筆者個人のイメージは箱(立方体)の各面の中心に原子が一個づつ入っているので面の心で面心立方格子と考えている。

英明も重要で面:Face、心:Centered、立方:Cubicを略してFCCと呼ぶ。

この面心立方格子:FCCがたくさん集まって構成されているのが次の図のような結晶になる。

まずは形状のイメージが重要なので、細かい格子の特性は後で説明する。

この結晶格子、結晶構造になる物質としては高温の鉄( Fe)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、プラチナ(Pt)、アルミ(Al)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)などがある(超重要な物質ばかり)。

但し各物質とも温度を始めとした状態や処理で結晶格子の形状は変化するので覚える必要はないと思う。

これで3種のうち2種類の結晶格子を説明して残り一個となったが、残り一個の形状が弱冠、複雑なのとページが長くなってきたので次回、説明する。

まとめ

いつも通りまとめていこう。

まずは結晶、結晶格子について

結晶、結晶格子

・原子、結合方法によっては原子配列が規則正しい同じ形状が複数、配列される。

・規則正しい形状の1ユニットを結晶格子と呼び、同じ結晶格子の塊を結晶と呼ぶ。

・全ての原子、結合方法が結晶構造、結晶格子を持つわけではない。

・金属原子、金属結合の多く(70%以上)が結晶構造、結晶格子を持つ。

・金属の結晶格子は大きく3種類に分かれる。

次に金属の結晶格子のまとめだ。

金属の結晶格子

・同じ物質(金属)でも結晶構造、結晶格子の形状が異なると性質が大きく変わる。

・金属結晶の代表的な一つに体心立方格子(Body Centered Cubic:BCC)がある。

・金属結晶の代表的な一つに面心立方格子(Face Centered Cubic:FCC)がある。

いつも同じ文言で申し訳ないが暗記することよりも理解することが重要だ(試験がある受験生、学生の方は申し訳ないが暗記も必要)。

覚えていなくてもメカニズムがわかっていれば自分で導き出せるし、忘れたら調べれば良いだけだ。

今回の内容は高校化学で多くの人が最初の方に習うが実際にどのように利用されているか知らない人が多いと思う。

筆者の機械設計では超重要かつ身近な問題で同じ材料でも結晶構造、結晶格子が変わると材料の強度などの機械的な特性が大きく変わるので使用する材料の結晶構造、結晶格子はおおよそ把握している。

特に重要なのは結晶構造、結晶格子で大きく変わる材料の硬度(後でしっかりと説明します)だ。全ての機械図面で硬度が私祭されていない図面はないと言っても間違いないと思う。

さらに同じ材質でも結晶構造、結晶格子の形状によって処理できる熱処理、表面処理(浸炭、浸炭窒化、浸硫処理やメッキなど、たくさん)などが変わってくるので分かってないとかなり辛い。

そんなことで超重要なことなので是非、理解して欲しい。

次回は金属結合の代表的な3種の最後、六方最密格子について説明する。

最後にいつもと異なり変わった物を紹介する。

代表的な結晶格子について説明してきたがより深く理解したい方は筆者のように模型を作ってみることを勧める(簡単)。やはり人間は頭に知識を入れる最適な方法の一つとして考えながら手を動かすことが重要だと思う。

今回はあまり複雑な格子ではないので作らなくても理解しやすいが六法最密格子や連なる格子(結晶)を考えるときに模型があると便利だ。

球と接着剤があればなんでも良いのだが筆者が使った物を紹介する。

・東京マルイ BB弾 0.2g 1600発
メーカー、重さ、精度のどれもなんでも良いが色は白をお勧めする。

・ロックタイト 瞬間接着剤
接着剤もなんでも良いのだがある程度の性能がないと作業しづらいのでブランド物がお勧めだ。

基本的に本内容の教科書は存在せず筆者オリジナルだが筆者が学生から使っている教科書を紹介する。

もう一点、機械設計で必須の本があるので紹介しよう。

はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。

またよく使う規格が載っているので重宝する。JISで定められて機械材料の特性が載っている。

多くの人が持っていると思うが持っていない人はちょっとお高いが是非、手に入れて欲しい。但し新品は高いので中古で購入を考えている方は表面荒さの項目が新JIS対応になっているのを確認することを強くオススメする。

さらにオススメしたいのがアマゾン キンドル アンリミテッドだ。アンリミテッドだと数多の本が月会費だけで読める(漫画〜専門書まで幅が広い)。

しかも流石、本屋が原点であるAmazonだけあって機械工学の専門書がそこそこ揃っていてかなり使えるサービスだ。

特に機械工学の専門書は高額になることが多いので少しだけ読みたい分野の本を眺めるのに非常に役に立つので是非、オススメしたい。

また本ブログをキッカケとしてエンジニアとしてステップアップして大きな仕事を掴む手段の一つとして転職するのも一つの手だ。

やはり予算の大きい機械設計、規模が大きい機械設計、大きな仕事をする場合は日本においては大手に入って仕事をする方がチャンスの機会が多いと思う。

私も最終的に転職はしていないが自分の将来を模索していた時期に転職活動をしていくつか内定を頂いたことがある。

折角なのでその経験(機械設計者の転職活動)を共有できるように記事に起こしたので参考にして頂ければ幸いだ。

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