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初心者でもわかる材料力学

初心者でもわかる材料力学17 応力集中って何だ? (応力集中、形状係数、応力集中係数)

さて前回までで基本的な物体の変形はほぼ説明した。

また初心者でもわかる材料力学を順に学びたい人はこちらの索引からどうぞ

今までは一様な(同じ形状)断面での応力や変形を説明してきたが今回は、断面の形状が急激に変化する場合の応力の発生を説明する。

この辺は、厳密に言えば理論があるのだろうがほとんど実験で求めた式を扱う。

なので式の証明とか意味とかの説明は、ほぼない。

式を紹介するだけだ。

ここで重要なのがどのような形状変化をさせるとどのくらい応力が増加するのか感覚を養うことが重要である。

なので形状と応力の関係を掴んでおいて欲しい。

では説明を始める。

応力集中

今まではただの丸棒や断面が四角で続くはりなどを考えてきたが今回は、途中で断面形状が変化する場合を考えてみる。

例えば次のような棒や板などが代表的だ。棒はo-リングなどを入れるために溝があったり、板は軽量化のためやネジの締め付けのための穴や長穴が空いていたりする。

このような断面形状変化を持つ場合にどのように応力が変化するのか考えていく。

応力集中

ではいつも通り例題を考えていく。

なかなか想像しづらいのだが幅、長さが無限の板が存在しており、中央に半径aの穴が空いている。

座標は図の縦がy軸で横軸がxで中央を0とする。

その板に縦方向に一様な応力σ0が発生している。

このような穴が空いているとy軸が0での断面での応力は次の式で表される。(ほぼ実験式)

$ σy=σ0(1+\frac{a^2}{2x^2}+\frac{3a^4}{2x^4}) $

ここでσyが最大になる時は式よりx=aの時でその値は

$ σy=3σ0 $

となる。そう、円の縁の応力が一番高くなり円から離れていくほど応力はσ0に近づく。

このように形状によって応力が高くなる現象を応力集中と呼ぶ。

ここで応力集中の度合いを示すために基準応力σn(断面形状変化がない応力)とし最大応力をσmaxとおいて次に式で表す。

$ α=\frac{σmax}{σn} $

とし、このαを応力集中係数、形状係数と呼ぶ。

この基準応力σnの取り方は、実際には難しいのだがこの例ではσ0を基準とすると

$ α=\frac{3σ0}{σ0}=3 $

となる。

ここで応力集中係数3は、他の断面変化による応力集中の目安となる数字になるので覚えておいてほしい。

たまたまなのか形状係数が3になることが多いように感じる。

よって雑な検討の時は3倍で考えることがある。

肉抜き穴が楕円の場合

次に先程の例題から円の穴を楕円にした場合を考えてみる。

楕円の設定は、横の長さを2a、縦の長さを2bとし曲率半径をρ(円の曲がり具合、$ ρ=\frac{b^2}{a} $)とする。

この場合の座標y=0の断面の応力は次の式で表される。

$ σmax=(1+2\sqrt{\frac{a}{ρ} })σ0 $

ここでσ0を基準の応力にすれば形状係数αは

$ α=1+2\sqrt{\frac{a}{ρ} } $

ここで大切なのは曲率半径ρが小さい、曲がり具合が急だと応力はどんどん高くなる。

逆に曲がり具合が緩やかだと応力は下がる。曲率半径がaだと円と同じ3になる。

これは重要なことで形状変化が急になればなるほど応力は集中するのだ。

なのでなだらかに形状を変化させる設計をすることが望ましい。

また耐久テストなどでテスト品が破損した場合に破壊の起点はこのような急激な断面変化をしている箇所が多いので破片を探すときによく注意して見つけよう。

次に実際の設計でよく出くわす断面形状の変化と形状係数の関係をいくつか紹介する。

代表的な断面変化と応力集中係数

板の中央に穴が空いている場合

では幅が2b、厚さtの板(長さは穴より十分に大きければ良い)に半径aの穴が空いている。その板に引っ張り荷重Pが加わると応力集中係数は次のようになる。

先程と同じで円が小さいと形状係数は大きくなり、逆は小さくなる。

ここで注意なのだがんなに円が大きくても形状係数は2より大きいことである。

つまり、どれだけなだらかな形状にしても断面が変化するのであれば応力集中は避けられない。

しかし機械設計では様々な形状の断面が必要なので如何に形状係数を下げるのかが勝負になる。

ちなみにこのような穴が空いている形状は、機械設計ではボルト穴やピンの穴などいくらでもある。

板に切り欠きがある場合

次は先程と同じ板(幅が2b)の両端に半円と長穴のの切り欠きがある場合をそれぞれ考えてみる。

図の左側は、半円切り欠きで円の半径をaとする。右側は長穴切り欠きで端から円が始まるまでの距離をh、円の半径をr、お互いの切り欠き円の最短距離を2aとする。

ここで左の図の基準応力を$ σ0=\frac{P}{2(b-a)t} $とし右の図では$ σ0=\frac{P}{2at} $とすると形状係数αは次の図のような変化をする。

この切り欠き形状も説明してきた中央に円の穴がある板と似た傾向を持っている。

半円の切り欠き形状では板の幅2bに対し円の半径aが十分に小さければ形状係数は3.07(ほぼ3)になり半径aが大きくなる、つまり形状変化がなだらかになるに従って形状係数も下がる。

長穴切り欠きは切り欠きの深さhが深くなるかつ円の半径が小さいと最高で形状係数は6にもなる。ただし深さhが浅く形状変化量の逆数b/aが大きくなれば急激に形状係数は小さくなる。

つまりいずれにせよなだらかにせよということだ。

板でこのような形状を設計することはあまりないが軸などでは溝として頻繁に使用する形状だ。O-リング、位置決めなどたくさん使うので注意しよう。

軸に溝がある場合

では実際に軸に溝がある場合を考えてみる。

直径Dに軸に任意の位置に半径rの半円溝が一周ぐるっとあって溝の底の直径をdとした場合にトルクTで捻る、曲げモーメントMで曲げる、荷重Pで引っ張っってみよう。

この軸でも板に切り欠きがある場合と形状係数の変化は似ていて捻る場合は最小で形状係数は2で引っ張り、曲げに関しては3になる。

当然、板の切り欠き穴と同じように溝に深さがある場合は、深さと円の半径に応じて形状係数もどんどん大きくなる。

機械においては、軸にはたくさんの溝が必要になるので注意しよう。基本的には形状係数がねじりで2である最小になるように設計しよう。

もし形状係数が大きくなるようであれば仕組み自体を変える必要がある。

例えば圧力が強くて気密のために大きなOーリングになってしまう場合は、オイルシールに変えたり位置決め溝が深くなるようであればつば形状で位置ぎめするなど腕の見せ所でもある。

特殊な応力集中と応力集中を避けるテクニック

ここまでの説明を理解し設計を進めたのに何故か応力集中してしまったということが稀にある。

表面粗さと応力集中

それは何が起きているかというと表面粗さが大きすぎて粗さ形状で応力が集中することがある。灰色の部分が部材でギザギザが表面の形状。

例えば表面粗さが最大高さ(Rz)で100とすると100μの切り欠き、つまり0.1mmの切り欠きがあるのと同じになり表面の粗さの谷の部分から亀裂が進展することがある。

筆者の専門分野であるエンジンだと強大な力を受け止めるピストンのピンやクランクのピンなどで実際に表面の粗さ形状から亀裂が入りテストで壊したことがある。勿論、重さが性能に直結する部分なので強度はギリギリで設計するので少しでも応力集中すると壊れる。

対応は、表面をなだらかにするために磨きを入れてピカピカにした。

このように大きな力、例えば衝撃に近い荷重を受ける部品、部位は、形状だけでなく表面粗さにも注意しよう。

逃げ溝

応力集中を回避するテクニックの一つである逃げ溝を紹介する。

いつも通り例題を考える。例えば駆動側が円形の凹形状を持って廻り、被駆動側が凸の形状で力を受け廻される伝達機構や単純に穴の空いた壁にツバのある軸を通す場合を考えてみよう。

この時に被駆動側の凸の根元のR形状(円のカケラ)や軸のツバの根元のR形状はそれぞれ駆動側、壁のR形状より小さくないと干渉して組めない。

でもRがあまりにも小さいと応力集中が発生して破損する。

このような場合は逃げ溝(アンダーカット)を付ける。

この逃げ溝をつければなだらかな形状で駆動側のRや壁のRと干渉せずに組める。

さらに軸はどうせ旋盤で加工するのでこの形状だとほとんどコストアップしない。

このようにして応力集中を回避する。

ただしあまりにも大きい逃げ溝を付けると肉厚が薄くなったり軸の径が小さくなるのでほどほどにだ。

上手なRの付け方

今度は単純なI字の形をした構造物を引っ張る場合を考えてみよう。

ある程度の設計者は応力集中を知っているのでなるべく大きなRを付けたがる。またRが大きいと成型性も良くなるのだ。

例えば次の図のような一つRをI字構造に付けたとする。

これが一見、良さそうに見えるのだが強い引っ張り荷重がかかるとR1.5の先端が応力集中して破壊の起点になることがある。

そこでどう対応するのかというと今までの説明とは、逆にRを小さくしてIの中央の柱の部分に短い直線をつくる。

このようにすると形状がなだらかになり応力集中を回避できる。さらには弱冠の軽量化もでき良い形状になる。

またこのような形状を持っている部品は金型で製作することが多いのでコストも変化なしだ。

欠点は図面指示がめんどくさくなるだけだ。

これらの小さな工夫の積み重ねが良い製品に繋がってくる。

まあ3つほどテクニックを紹介したが臨機応変に対応することが大切だ。

まとめ

では応力集中をまとめる。

応力集中のまとめ

・部材の断面形状が急激に変化すると応力が高くなりそれを応力集中と呼ぶ

・応力集中の度合いを示す定義に応力集中係数、形状係数αがあり、発生する最大応力から基準応力を割ることで値が算出される。

・応力集中は肉抜き穴や切り欠き部で発生し多くの場合で形状係数3程度のことが多い

・軸の溝の応力集中は最低で形状係数は3程度になる。

・断面形状変化は形状係数がミニマムになるように設計する。

・表面が粗いと応力集中が発生することがあるので注意すること。

・応力集中を避けるために逃げ溝を付けたりやRの付け方を工夫すること。

になる。

実際の応力値は説明してきたような形状係数を使って求めることは今では、ほとんどない。シミレーション(CAE)で求めてしまうのだ。

ただしこの特性を知らないとレイアウトやスケッチの段階で良い検討ができないので理解してほしい。

まあ、めんどくさいがこのような小さな気遣いと小さな工夫の積み重ねが安くて良い製品に繋がるのだ。

このような基本ができないと流行りのイノベーションとかはまず無理だろう。

決して蔑ろにはしては、いけないことである。

次回からは、実際に破損、強度に理論ついて説明する。

初心者でもわかる材料力学18 破壊って何だ?(破壊理論、主応力、ひずみ、歪みエネルギー、フォンミーゼス応力、転位)

最初は応力ー歪み線図を含めたおさらい+αになるがとても大切なので着いてきて欲しい。

初心者でもわかる材料力学2 弾性ってなんだ?塑性ってなんだ?(弾性係数、応力歪み線図、材料特性)

基本的に参考書などはないが一応、筆者が使っている教科書を紹介する。これに沿って解説しているので一緒に読めば理解が深まるかもしれない。

また、ここで一つ、機械設計で必要な本があるので紹介しよう。

はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。一応、このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。

またよく使う規格が載っているので重宝する。今回、紹介した形状と応力集中係数の関係もたくさん載っている。

多くの人が持っていると思うがない人はちょっとお高いが是非、買ってくれ。またこの本は中古で買うことが多いと思うのだがなるべくなら表面粗さが新JIS対応のものが良い。


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機械設計では基本になる本が一般にあまり出回っていない上に高価で廃盤も多い。

また機械設計では規格を日常的に確認するのでタブレットやスマホだと使いにくい面もあって手持ちの本があることが望ましい(筆者がオッサンなだけか?)。

しかもほとんどの企業が気密の観点から個人のスマホ、タブレットの持ち込みは難しく、全員にスマホ、タブレットを配る余裕もないと思うので本で持っているのが唯一の手段だったりする(ノートパソコンやCADマシンはあるけど検索、閲覧には使いづらい)。

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  • この記事を書いた人

kazubara

輸送機器メーカーでの元エンジン設計者。15年の職務経験から機械設計知識を伝道します。また職歴を活かしてエアソフトガンをエンジニアリング視点で考えてみる。

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