前回のはりの応力の最後に案内した通り断面二次モーメントについて解説していく。
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初心者でもわかる材料力学6 はりの応力ってなんだ?(はり、梁、曲げモーメント)
また初心者でもわかる材料力学を順に学びたい人はこちらの索引からどうぞ
断面二次モーメントは機械設計で構造物を設計するときにとても大切な概念だ。
とても大切な割には理解している人はあまり見ないという珍しいモノだ。
多くの断面での断面二次モーメントは公式化されていて表を見れば値がわかるので理解が浅くてもなんとかなってしまうのだ。
しかしながら新しいモノを設計するときに考え方がわかっていないと過去の流用しかできなくなってしまう。
創造できる設計者を目指して是非、理解して欲しい。
また今回の説明は多くの教科書では断面二次モーメントの定義をしてから梁の曲げ応力を説明することが多いのだが筆者の経験から逆から説明した方が納得できると思う。
よってまず梁の応力から説明していく。
梁の曲げ応力
前回の梁の応力の解説で梁の内部には剪断力と曲げモーメントが発生することが理解できたと思う。
今回は曲げモーメントに着目する。
まず説明のための例題を設定しよう。
単純な両持ち梁の真ん中に荷重Pが掛かったとする。その梁から真ん中の微小区間を取り出すと剪断力Qと曲げモーメントMが発生している。
ここまでは理解できるはずだ。ここで剪断力は一旦、置いといて曲げモーメントだけに着目する。
取り出した微小区間をさらに真ん中で分割すると次の図のようになる。
中央で分割した断面で曲げモーメント(外力)に逆らう力(内力))が発生している。
この逆らう力(応力)によって外部から与えられた曲げモーメントに逆らうモーメントが発生する。
この逆らうモーメントを発生させる力(内力)を曲げ応力と呼ぶ。
この曲げ応力の大切な特性の一つは、曲げモーメントに逆らうためだけに発生している内力なので曲げ応力を全て足し合わせると0になる。
しつこいが曲げモーメントに逆らう専用の応力である。
まあ文だけではなんのこっちゃっとなると思うので詳細に説明していく。
曲げモーメントと曲げ応力の関係式
説明するために例を設定する。先程、設定したのと同じだ。ただし剪断力Qは置いておき曲げモーメントMに着目する。
取り出した微小区間は良く見ると変形している(曲がる)。このときの変形の曲率半径をρ(ロウ)とする(半径と思ってもらって構わない)。
座標は梁の中心を原点とし右方向をx、曲がりに足して径方向をyとする。
曲率半径ρが示す半径は、はりの中央の面までの距離(図中の青い線)で任意の座標yの半径は、ρ+yもしくは、ρ-yになることに注意。
では、まず任意の距離yにある面M-Mのx方向の歪みを考えてみよう。元の長さは図よりdxで伸びた量は(ρ+y)dθになる。
よって歪みεxは、
$ 歪みεx=\frac{(ρ+y)dθ-dx}{dx} $
ここで元の長さdxを考えてみる。
そもそも曲げ応力は曲げモーメントに逆らう応力である。モーメントの性質として回転中心ではモーメントは0になる。
つまり曲げ応力も0になる。応力が0なら当然、変形量も0になる。
つまり梁の真ん中の面N-Nは変形もしないし応力も発生しない。
これを中立面と呼ぶ。
よって元の長さdx=ρdθになる。
中立面によって求められたdxを代入すると
$ εx=\frac{y}{ρ} $
歪みεxから曲げ応力σxを求めると
$ 曲げ応力σx=E(弾性係数)εx=\frac{E}{ρ}y $
になる。
曲げ応力の大切な特性の一つの足し合わせると0になることから次の式が成り立つ。
断面の面積をAとすると
$ \int_{A}σxdA=\frac{E}{ρ}\int_{A}ydA =0 $
となる。
この式の中の$ \int_{A}ydA $を断面一次モーメントと呼ぶ。
つまり断面の任意の位置での曲げ応力を求めるのに断面一次モーメントを使うのだ。また断面の中心、中立面を座標の原点に取ると断面一次モーメントは0となる。逆に中立面から離れた位置に座標原点を取ると断面一次モーメントは大きくなる。
よって断面一次モーメントは中立軸からどれだけ離れているかを表す指標だと思ってもらって構わない。
次に断面での中立軸周りのモーメントは曲げ応力によるモーメントと曲げモーメントMと等しいので
$ \int_{A}σxdA × y=\frac{E}{ρ}\int_{A}y^2dA=M $
ここで式の中の$ \int_{A}y^2dA $を断面二次モーメントという。
つまり断面二次モーメントは曲げモーメントに逆らう曲げ応力によって発生するモーメントを求めるのに使う値である。
ここで図で新たに出た座標軸zを使って断面二次モーメント$ \int{A}y^2dA $=Izとおくと
$ \frac{E}{ρ}Iz=M $
この式からρを式$ 曲げ応力σx=E(弾性係数)εx=\frac{Ey}{ρ} $使って消すと
$ σx=\frac{M}{Iz}y $
となる。
つまり断面二次モーメントが大きい程、曲げ応力は小さくなるのだ。
ここで梁の上面、下面をそれぞれh1、h2とすると図から上面は圧縮、下面は引張りなので発生する応力は
$ σ1=-\frac{M}{Iz}h1 σ2=\frac{M}{Iz}h2 $
ここで
$ Z1=\frac{Iz}{h1}. Z2=\frac{Iz}{h2} $
とすると応力は
$ σ1=-\frac{M}{Z1}. σ2=\frac{M}{Z2} $
と表される。
ここでZ1、Z2を断面係数と呼び断面形状によって決まり、断面係数が高いと曲げ応力は小さくなるのだ。この特性は重要である。
つまり断面二次モーメントは曲げ応力により発生するモーメントに関係する値であり、断面二次モーメントが大きい程、曲げ応力は大きくなり逆に小さければ曲げ応力は小さくなるのだ。
これで断面二次モーメントがわかっていただけたと思う。
まとめ
断面一次モーメントと断面二次モーメントをまとめると
断面一次モーメント、断面二次モーメントのポイント
・$ \int_{A}ydA $を断面一次モーメントと呼ぶ。
・断面一次モーメントは中立軸からどれだけ離れているかを表す指標
・$ \int_{A}y^2dA $を断面二次モーメントという
・断面二次モーメントは曲げモーメントに逆らう曲げ応力によって発生するモーメントを求めるのに使う値
・断面二次モーメントが大きい程、曲げ応力は大きくなり逆に小さければ曲げ応力は小さくなる
になるついでに断面係数Zもかなり便利なので是非、覚えといてくれ。
$ Z1=\frac{Iz}{h1}. Z2=\frac{Iz}{h2} $
筆者が経験した実践的な断面二次モーメントの影響は、構造物に対して少しの荷重しか掛けていないのにリブの表面に亀裂が入ったことがある。
それは断面係数が小さい断面をしたリブで補強の意味が全くなかった。
このように良かれと思ってリブなどの補強をつけても断面係数がしょぼいと意味がないだけでなく、以前より高い曲げ応力が発生し破壊のきっかけになることがある。気をつけよう。
次回は、実際に断面二次モーメントの求め方と数学上の特性を説明する。
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初心者でもわかる材料力学8 断面二次モーメントを求める。(断面一次モーメント、断面二次モーメント)
基本的に参考書などはないが一応、筆者が使っている教科書を紹介する。これに沿って解説しているので一緒に読めば理解が深まるかもしれない。
また、ここで一つ、機械設計で必要な本があるので紹介しよう。
はっきり言って中身は不親切極まりないのだがちょっと忘れた時に辞書みたいに使える。一応、このブログを見てくれれば内容が理解できるようになって使いこなせるはずだ。
またよく使う規格が載っているので重宝する。
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機械設計では基本になる本が一般にあまり出回っていない上に高価で廃盤も多い。
また機械設計では規格を日常的に確認するのでタブレットやスマホだと使いにくい面もあって手持ちの本があることが望ましい(筆者がオッサンなだけか?)。
しかもほとんどの企業が気密の観点から個人のスマホ、タブレットの持ち込みは難しく、全員にスマホ、タブレットを配る余裕もないと思うので本で持っているのが唯一の手段だったりする(ノートパソコンやCADマシンはあるけど検索、閲覧には使いづらい)。
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